■65 アミューズメントスポット
かなり初期に書いたやつ。
今回は前編。明日は、後編。
私と千夏ちゃん、それからノースの三人でやって来たのは秋葉原にあるアミューズメントスポット。
つまりは娯楽施設だった。
何でこんなところに来たのかと言うと、話は少し前に遡る。
「ねえちなっち、スノー」
「なーに?」
「今度リアルで遊ぼうよ」
私はそう口にした。
すると好意的な態度で反応をするのはちなっちだった。
「いいね。私は賛成だよ!」
ちなっちはすぐに首を縦に振って合図する。
後はスノーなのだが、彼女は気難しい顔で尋ねた。
「構わないが、何故リアルで?」
「なんとなく」
「なんとなくか」
「マナらしいって言えばマナらしいよね」
「そうかな?」
「「そうだよ」」
二人はハモった。
私は目をパチクリさせて反応する。
けどまあスノーも乗ってくれたのは意外だった。反対されると思っていたので、正直渋い顔をされた後だったので不安だった。
けど肩がピクピク動いていることをちなっちから肘で脇腹をコンコンとされて教えてもらったので、すぐに嬉しいのだと理解出来た。
「Katanaはどう?」
「すみません。その日は用事があり」
「そっか。じゃあ別の日にする?」
「いえお気になさらず。皆さんで楽しんで来てください」
Katanaは気を遣ってくれた。
で、結局三人で相談した結果ちょっと遠いけどこのアミューズメントスポットにやって来たのだった。
「おっきいねー」
「うん。あんまり東京の方には来ないからね」
「電車で1時間もあれば着くがな」
「だね」
私達は千葉に住んでいる。
近いように見えて実は距離がある。
ちょこっと遠いけど、いざ来てみれば楽しそうだ。
「入ろっか」
「うん」
私はそう声をかけた。
すると千夏ちゃんが頷き返してくれる。
ノースもコクッと首を短く縦に振ると私達は揃って入った。
「うわぁー」
「音うるさ」
「こんなものだ。電子音が飛び交うのが当たり前。二人よりも私の方が辛い」
「あはは。ノースって異常ってぐらい耳いいからねー」
「人を腫物みたいに言うな」
「ごめんって。怒らないでよ、ノース」
ちょっと酷いこと言っちゃったかな。
私はノースに平謝り。
ノースは「ふん」と鼻を鳴らしてエスカレーターで昇る。
「ここがボウリング場?」
「そうみたいだねー」
「ボウリングだけじゃないがな」
「と言うと?」
「向こうにはビリヤード。それからあっちはバスケのフリースローがある」
「へぇー。なんでもあるんだね」
「ここはそう言う複合施設だからな」
「そう言えばそうだね」
「そんなことよりもさ、早く行こ」
「うん」
「さあやるぞ」
私達はシューズをレンタルで借りて、ボールを選ぶ。
どれがいいのかはよくわかんないけど、とりあえずいい感じのを選ぶ。
いい感じって何だろ?
「いっくよー!せーのっ!」
千夏ちゃんは腕のスナップとボールの重さを利用して滑らかに腕を下ろした。
力は加えていない。
完全にボールに主導権を握らせて、その力の浮き沈みを利用してボールを投げた。と言うか転がしたのだ。
ボールは真っ直ぐ綺麗に転がると、並んだピンを全て倒した。
ガラガラーン!
ピンが倒れる音が室内に響き渡る。
スコア画面には満点の表記が現れた。
一フレーム目からこの腕前。本人は今日が初めての初心者らしいが、流石は千夏ちゃんだ。
ノースちゃんもそうだけど、二人ともやっぱり人間離れしている。
「イェーイ!どーお?今のよかったでしょ!」
「凄いよ千夏ちゃん。初心者とは思えないよ」
「確かにな。やはり千夏の身体能力は異質だ」
「異質って言うな!まあ褒められてるのは嬉しいけどね」
照れた様子で頭を掻く。
さてと次は私の番だ。
「上手くできるかな?」
「愛佳、気楽にボールに身を任せればいいよ!」
「そう言われても。まあいいや」
私は千夏ちゃんのアドバイスを取り入れてボールを投げた。
ちょっとブレちゃったけど、なかなかいいコースを通りピンはスペアを合わせて七本倒れた。
初心者にしては上出来ぐらいかな?
「どうかな?」
「上手いよ愛佳」
「そうかな?」
「確かにな。愛佳らしい」
「らしいってなに!」
私は反発した。
何となく察しがつく。
要するに“普通”だと言いたいのだろう。
普通の何が悪いのか?別にいいじゃない。普通でも。
「次は私か」
「頑張ってねノース」
「ストライク取ってね!」
「無難でいい」
スカしたような態度。
でもそれがノースらしい。
彼女は計算に身を委ね、ボールを転がす。
プロの使うものではないので、重心が片重心ではないらしくカーブはしないがそれでもスペアを合わせて九本と初心者にしてはかなりのスコアを叩き出した。
「こんなものか」
「凄いよノース!」
「ナイス!」
私と千夏ちゃんは互いに声援を浴びせた。
しかしそれに動じることなく、平常心でいる。
その後も私達は遊びまくった。
それで帰り際、ふと大きな声が聞こえて来た。
明るくてアクティブな子の声が室内に響く。
「あーあ、よっしー早く来ないかなー!」
誰かを待っているのだろうか?
その声を聞いて最初に立ち止まったのは意外にもノースだった。
「なんだアレは」
「誰かを待ってるんじゃないかな?それにしても」
「可愛い顔してるねー」
千夏ちゃんはそう呟く。
するとそれに気がついたのか、彼女は私たちの方に向き直り、何故かこちらに近づいて来た。
私達の視線が相当なものだったのだろうか?
それとも単なる暇つぶしだろうか?
多分後者だけど、アグレッシブに声をかけてくる陽キャだとは思わなかった。
別に私は嫌じゃないけどね。
「こんにちはー。今私の話してたでしょ?」
「えっと」
「していませんよ」
すぐに会話をなったのはノースだった。
何かのセンサーに反応したのだろうか?ノースはいつもよりも断然早く心を閉ざした。
いや関わりを求めようと応じなかった。
「あれれ、どうしたのかな?もしかしてうざかった?」
「そんなことはないですよ」
「あー、絶対そうじゃん。酷いなー!私はただ“可愛い”って聞こえて来たから来ただけなのに!」
「聞こえてたんだ」
「ほらやっぱり言ってる」
「ただの勘!」
千夏ちゃんが盛大なツッコミを入れる。
そうして私達は彼女に出会った。
なんだか強引そうな人だけど、悪い人ではなさそう。
こんなところで立ち話もなんなので、ノースはめんどそうだったけど、私達はとりあえずゆっくり話が出来そうな下の階のカフェに向かうのだった。




