■64 ノースの日常②
凄い短くて個人的にあまり出来の良くない話。
私はネトゲをしながら考えていた。
何を考えるって明日のことだ。
「明日の服装はどうするべきか……」
私らしくもなく悩んでいた。
と言うのも明日は愛佳と千夏とで遊びに行く約束をしていたからだ。まあその運びに至ったのは愛佳の一声なんだが、行くと言ってしまった以上は行かなければならない。
そんな気がしていた。
「さて、どうするか」
ではキーボードとマウスの上。
ゲームパッドは棚の上に並べられ放置されている。結局私はコントローラーの類よりもこっちの方が性に合っていた。
「前方に敵が二人……左右に四人。で、後方右斜め後ろに一人と左は三人か。普通だな」
とりあえず回避行動と攻撃モーション。
数の少ない後方を仕留める。
左旋回をしつつエイムを瞬時に切り替えて、マウスの左をクリック。一人落とせば後は簡単な作業だ。
そのまま後方のプレイヤーを落とすように姿を眩ませ、発砲。後ろを落としきれば、後は周囲の建物の影に隠れながらWキーとShiftキーを押して一気に近づいて、背後に回ってナイフで切る。建物に籠城されたら好都合でGキーでグレネードを放り投げればおしまいだ。
私の場合ゆっくりやらなければキーボードが反応してくれないのでここでムラが出るのが敵わないが、まあいい。とりあえず久々だったが楽しかったな。
「さて、なにをするか……」
暇になった。
いや暇ではない。が、特にやることもないのもまた事実。
学校からの課題は終えているし、教科書の内容も一眼見た時に覚えてしまったのでやることがない。〈WOL〉にログインしてもいいが、今日はもうお開きにしたからな。とりあえず行く必要がない。
前ならずっとログインしていたのに、今はそうしていない。マナ達といるのがよっぽど楽しいのだろうか?と自問自答の連続だ。
「まあいい。とりあえず、明日の服装を……何を見ている!」
「す、、すみませんお嬢様!」
そこにいたのはウチのメイドの一人だった。
名前はララ。
「鍵を掛けておいたはずだが」
「その……お食事の用意ができたのでお呼びに来たのですが……」
「そうか。わかった。すぐ行く」
私はパソコンを落としてから部屋を出た。
それと同時にララに一言。
「ララ。確かお前は服のコーディネートにセンスがあったな」
「えっ!?」
「明日は友人達と出かける約束をしている。服のコーディーネートを頼みたい。もちろんだが、地味目で構わないからな」
そう伝えるや否やララは少し立ち止まった。
私が振り返ると、ララはにんまりとした笑顔だった。怖い。
「どうした」
「お嬢様がこうして頼ってくださるなんて。何と光栄なことでしょうか!わかりました。このララ、メイドとしては未熟ではありますが精一杯頑張らせていただきます」
「いや頑張らなくてもいいんだがな」
私はそう伝える。
しかしララはやたらと張り切っていた。下手なことにならなければいいのだがな。まあ私がそうはさせないのだが。
結局、明日着て行く服に関してはララが暴走して最初はヒラヒラの服ばかり着させられる着せ替え人形にされていたが、おとなしくて地味めな格好になったのは言うまでもない。




