■61 マッシュトロール
どこかのタイミングで後書きに武器説明とか書こうかな。
とりあえずルビーマッシュを探していた。
ルビーみたいにキラキラした宝石らしいので簡単に見つかるっぽい。
というわけでキノコのとりわけ生えていそうなじめーっとした薄暗い森の中を散策していた。
「おそらくこの辺りに生えているはずなんだがな」
「皆で手分けして探してみようよ!」
私はそう提案した。
「そうだな。私はこっちを探してみようか」
「では私は向こうを」
スノーとKatanaはそれぞれ先手となって行動し始めた。
私も負けてはいられない。とりあえず二人の向かわなかった方を探してみよう。
「とはいっても、そんなに都合よくは……あった」
私はぶらつきながら木々の合間を見ては根元を確認する。
するとめぼしいものが見つかった。とてもすんなりとだ。
そこにあったのはキラキラ煌めくキノコ。ピッカピカで瞬いていてすぐにわかった。あれがスノーの言ってたルビーマッシュだ。
「ホントに光ってる。ルビーって実際には見たことないけど、こんな感じなのかな?」
私は手に取ってそう思う。
まあさっきスノーからルビーの真実を聞いて正直夢とか以前に私も石だとは思っていたけど、そんな詳しく教えられると思っていなかったので正直へぇーとしかならなかった。
げんなりとか言っちゃ元も子もないしね。そんなくだらない心情を思いながらも私の手はかなりスムーズにキノコ採集をしていた。
「凄い。なんでこんなに面白いぐらい見つかるんだろ。これもスキルのおかげ?」
まあ多分そうだろう。
おそらくは【幸運】のおかげだ。まさにチート級。ホント、あの時のスライムには感謝しないといけない。
「そうだよね。そのおかげでこの子にも出会えたんだし」
またしても〈麒麟の星雫〉に手を添える。
そんな二ヶ月前の心象に浸っていると、急に変な音が聞こえたきた。
【気配察知】のスキルも合わさり、私の視界に映り込むのは異様な化け物だった。
(な、何アレ……キノコのモンスター?)
そこに現れたのは赤い傘と白い胴体に足は生えていないが腕が生えている。しかも人の手とかではない。キノコの傘を前に押し出したような形をしている。
顔もある。顔と言っても取ってつけたようなものだけど体を捻ったりジャンプしたりしながら動いている全長2メートル弱のモンスター、マッシュトロールがそこにいた。
「これ、逃げないとヤバいやつだ」
レベルはそんなに高くない。
30レベルと言うことはちなっちよりも低い。だから勝てなくはないだろうが、一旦引いたほうがいい。
そう思いながら後退りをしていると、プチっと音が鳴った。如何やら木の枝を踏んづけてしまってらしい。
そしてマズいのはここからだ。何処に耳があるのかは把握出来ないけど、その音を聞きつけたマッシュトロールがこちらを向いた。
(や、ヤバっ!)
私は息を押し殺す。
じーっと茂みに身を隠し、マッシュトロールをやり過ごす。ドスンドスンと言う音がする。マッシュトロールが近づいてきているのだ。まるでさるかに合戦に出てくる臼みたいだ。
(とりあえずこのままやり過ごして……ん?)
このままやり過ごそうとした私。しかしマッシュトロールの挙動は明らかにおかしかった。
両腕のキノコの傘を前に突き出して力を溜めている。何かするのだろうか?このまま突進して突っ切ってくるのだろうかとビクビクしていると、いきなり傘から黄色い粉がもの凄い勢いで噴射した。
「はい!」
その勢いは凄まじく草を一瞬で吹き飛ばした。
いやそれだけではない。あろうことか木々の葉が綺麗な緑から黄色に様変わりする。
「色が変わっちゃった!」
葉っぱの色だけではなかった。
木の幹が少しずつ痩せ細っていく。これはあれだ。植物の成長を止めて、老化させてしまう。つまり言えば植物の天敵。私はそんな奴に出くわしてしまったらしい。
「に、逃げなきゃ!」
その場から一歩動いた瞬間。
マッシュトロールは私の姿に気が付き襲い掛かってきた。重たい胴体を巧みに弾ませながらジャンプし飛び跳ねながら向かってくる。
怖い。腰に携えた〈波状の白星〉を抜き、お得意の〈波状〉を放った。
衝撃波が駆け抜ける。ただひたすらに真っすぐに、草木をかき分け襲いかかる。
ギューン!!
風の刃がマッシュトロールの体をえぐった。
のけ反ったのを確認し追撃を加えるところ、私は隙を見て一目散に逃げだしていた。
(あんなの相手にしてたらきりないよ!)
ということで私は逃げ出した。
しかしマッシュトロールはしつこく追い回してくる。
「し、しつこい!こうなったら」
私は立ち止まり構えた。
構えるのはもちろん〈波状の白星〉だ。
体制を屈め、右手でカットラスを振るった。
ギューーーン!!
すると先ほど同様すさまじい突風が起き、衝撃波に変わる。
だが今回のは先程のとは訳が違う。
私は本気だった。本気で倒す。その思いを貫いた。逃げるための隙を生むための牽制や目くらましではなく本体に直接ダメージを与えることに死力を尽くしていた。
「(あの攻撃が何かはわかんないけど……)とにかくここで倒しちゃうよ!」
放たれた衝撃波はマッシュトロールをズタズタのズタボロにした。
目にもの止まらぬ速さで繰り出されたその一撃は私にも捉えられず、結局そこに残ったのはあおむけで倒れこんだマッシュトロールの残骸だけであった。
そうこのやり取りだけでマッシュトロールは絶命してしまった。
ホントに恐ろしい武器だ。私は内心そう思っていた。
まあこれで楽にキノコ狩りが再開出来る。そう思った私はインベントリを確認してドロップアイテムを覗き見る。するとそこには今倒したマッシュトロールから取れたアイテムが。その中には集めていたルビーマッシュの姿もある。
「嘘……じゃ私、何で探してたんだろ」
ちょっとむなしい気分になるのは皆には内緒にしておく私だった。




