■6 VS熊
もう1話出すかも……出さないかも?
めっちゃ良い剣とすっごい靴を手に入れた私。
早速装備してみることにした。ついでにパラメータを見てみる。
ネーム:マナ
種族:〈ヒューマン〉
レベル:2
HP:42
MP:22
STR:7
VIT:6
AGI:8
DEX:6
INT:7
LUK:7
装備
靴:〈雷光の長靴〉
武器
〈麒麟の星雫〉
装飾品
なし
スキル
【成長補正(平均)】【幸運】
てな感じだ。
良い剣と良いブーツ。Tシャツと半ズボンと言うさっぱりした格好にはかなーりミスマッチだった。
「うーん……まあいっか」
あんまり考えないことにする。
とりあえずここから出て、街まで帰ろう。そろそろ外は夕方だったので、こっちにやって来たのが昼ぐらいだってことを加味するともうそろそろリアルは正午だ。
この世界は現実の一日中で三日経つ仕組みになっている。つまりは8時間に一回、日を跨ぐことになるのだ。
特定のイベントとかでは日の進み方も変わるけど、普段はそうなっている。健康上、一日にログインできるのも8時間ぐらいだったはずだ。
「よいしょっと」
私は木の幹の中から出てきた。
外は夕方のオレンジ色の光がいい感じのムードを奏でている。
私は夜が深まる前には街に戻れるかなと軽い予想図を立て、とりあえずすり鉢状の盆地を駆け上がることにした。
「あっそうだ!折角だし試してみよっ!」
さっき手に入れたばかりのスライムの遺してくれたアイテムを使ってみることにした。
装備した〈雷光の長靴〉を使ってみる。けど如何やったらいいんだろ?とりあえず、わかんないので走ってみることにした。
「せーのっ!えっ!?」
すると私の体が急激に加速した。
まるで雷のように一瞬だけど、地面を強く踏み込んだ途端一瞬ですり鉢状の段差を駆け上がっていた。
目を丸くして口をポカンと開け放つ。
こんなに凄いとは思わなかった。しかもMPも消費していない。ただごくごく短距離を高速で移動するので急カーブとかは体が痛いし、反応出来ない。その上一度使うとしばらく使えなさそうだった。
「でもこれって凄いね。もう少し出力を抑えたら連発できるかも」
少し待ってからもう一度使ってみると、出力を落とすことで曲がれるようになったし連続発動が出来るようになっていた。
これは使える。素人の私でもそれが解った。流石はレジェンドレア。
「よーし!じゃあこのまま一気に街まで……」
私は意気揚々と街まで帰ろうとしていた。
しかしそこでまた変な音が聞こえてきた。
ガサガサゴソゴソと草むらが揺れる。物音と共に先程の光景が思い出さされた。
「まさか、ね」
こう言うのをフラグって言うのかな?それとも因果って言うのかな?
そんな運命ごめんだけど、残念ながら私のいやーな予感は的中した。
「グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」
「や、ヤバい……」
それは先程遭遇した熊だった。
あの時はなんとか必死に逃げてきたけど、流石にもう無理そうです。
いざ逃げるにしても退路は鬱蒼でした森の中。人間が普段活動しないような立地でこの熊さんから逃げる方法を私は思いつかなかった。
〈雷光の長靴〉でも流石にまだ完全に慣れていないので、無理っぽい。じゃあ如何するか、私は〈麒麟の星雫〉を構える。
(戦うしかないんだ。如何しよう、私一人で勝てるかな……)
この熊さん。名前はブラックベアー。レベルは8。
私よりも六つもレベルが高い。こんな相手如何したらいいんだろ。
私はじっと睨みつけ、いざというときに備える。しかしそれよりも早く、ブラックベアーは私の飛びかかった。
「うわぁっ!」
何とかギリギリのところで躱し、数は後退する。
気がつくと体が自然と敵意を感じたのか、〈麒麟の星雫〉を抜刀していた。
西洋風の剣。小説の表紙に書かれているような、例えるならエクスカリバーみたいな立ち位置でいいのだろうか?と想像した。
私は両手で剣を構え身構える。
そんな私に物怖じせず、ブラックベアーは鋭い爪と牙を剥き出しにし、襲いかかって来た。
「こうなったらやるしかないよね!」
私は〈雷光の長靴〉の出力を最大にして使った。
今はほんの一瞬でもいい。逃げる余裕がないなら、ここで仕留める。私はそんな決意を胸に、〈麒麟の星雫〉を横腹に一閃。一太刀を入れた。
「グゥマァァァァァァァァ!!」
ブラックベアーが絶叫する。
見ればHPを示すバーが半分近く減っていた。
この剣凄い。こんな不慣れな私でも扱えて、しかも強度も攻撃力もあるまさにチート。レジェンドレアに相応しい性能を誇っていていた。
しかしその攻撃を受けて怒ったブラックベアーは私に怒りの片鱗を見せた。何かのトリガーが発動したのか、さっきよりも動きが俊敏で地面の抉れ方が怖かった。
「こんなの食らったら死んじゃうよ!」
私は何とかギリギリで躱し続ける。
そのタイミングで【ジャスト回避】を手に入れたのがちょっと腹が立ったけど、そんなこと言ってられなかった。
少しでも気が緩めば持っていかれる。私でも軽く理解出来る。そんな危機的状況で、私は何度も攻撃を躱して体勢を整える。
躱して躱して躱して躱して……何度も躱し続け、やっと疲れが見えて来たのか少しだけ隙が生まれた。
「よーし今だ!」
私は剣を振りかぶった。
しかしブラックベアーの反撃。鋭い銀色の爪が私を襲い、直撃を食らいかけた瞬間眩い閃光が私を包み込んだ。
その光は剣から発せられ、まるで私を守るかのように防御壁を張る。
「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
私は思いっきり、全体重を乗せて斬りかかった。
体重がしっかりと乗った重たい一撃はブラックベアーの体にダメージを与え、断末魔と共にブラックベアーの姿が掻き消えた。
「た、倒せたの?」
突然の出来事。
唐突な終わり。
その全てがたった数分の間で繰り広げられ、頭の中パンクしそうになった。でも一つだけわかるのは私はブラックベアーを倒したこと。それを証明するように、私のレベルは5にまで一気に上がっていた。
ステータスもかなり伸びている。
これはかなりの進展ではないだろうか?
それに加えてもう一つ、大事なことがある。
「ありがとね、私を守ってくれて」
私は愛剣〈麒麟の星雫〉に感謝を述べる。
この子が私を護ってくれた。そうとしか考えられないことだった。
まあ兎にも角にも私は無事にブラックベアーの脅威に打ち勝ち、街まで帰ることが出来たのだった。