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■56 新たな剣の実力は

今日は出します。

 新しく手に入れた剣を手に、私とちなっちは少し冒険に出ていた。

 スノーとKatanaの姿がないのは、二人とも何やら忙しそうだったからだ。スノーの方はそれにあまり乗り気ではなく、Katanaの方はと言うと学校の委員会が如何たららしい。要は二人とも暇ではないのだ。やって、今日は私とちなっちの日である。


「とりあえずどこ行こっか」

「はいはーい!私、ここ行きたかってんだよねー」


 ちなっちは挙手してマップを開いた。

 そこに指差して赤い丸で円を描く。記されたのはゴツゴツとした岩が並び立つエリアだった。


「〈ガレット岩場〉……ここがいいの?」

「うん。ここなら私達の苦手な硬い敵もいそうだし、新武器を試すなら絶好の場所かなーって」


 ちなっちは熱弁した。

 確かに私もちなっちも防御の高い敵は苦手だ。おまけに硬いとなると斬撃系の武具では歯が立たない。そのことには私も砂漠エリアで歯痒い思いをした。だからこそ思いっきり戦えて、さらには新武器の力を試すには絶好のポイントだと言えた。

 と言うことで私も同意する。


「うん、いいよ!」

「そうと決まればー!」

「早速行ってみようー!」

「おー!」


 ちなっちと私は互いに拳を突き上げた。



 〈ガレット岩場〉は決して遠い場所ではない。

 その特徴は地図から見ても分かる通り大きな岩がゴロゴロ転がっていてとにかく地表がそのまま出ていることだった。

 さらには〈ガレット岩場〉は両端を岩の壁が隔てていて、他とは一線を隠す地形をしている。その理由は明らかで、この場所はすり鉢状をしているからだ。故に上の方には森が見える。


「結構怖いね。落石とかないといいけど……」

「演技でもないこと言わなーい!」


 ちなっちに叱られてしまった。

 まあ確かに私としても不謹慎だった気がする。だからこれ以上は言わないことにした。


「さてと、じゃあ早速試し斬りしようぜ!」

「テンション高いね。まあ私もだけど!」


 ちなっちのテンションがいつもより明らかに高い。かく言う私もそうなのだが、とりあえずそれぞれ新しいもの武器を手に取った。

 私の新武器、〈波状の白星〉は横向きにして背中の腰に刺し、柄の部分は右側にしてある。

 それからちなっちに関しては今までは両方に付けていた鞘を片方に寄せていた。それはワイヤーのせいなのだが、まあちなっちなら問題ないだろう。

 とは言ってもモンスターが出てこないと意味がない。

 そんなことを一人考えていると、何やら岩陰に怪しい気配を感じた。


「なにかいるね」

「うん、いるねー」


 【気配察知】のスキルにより、何かの気配を感じ取った。

 ちなっちは適当に落ちていた石ころを拾い上げて岩陰に投げ込む。するとその音を聞きつけた“何か”が急にゴソゴソと動き出した。

 そうして現れたのは巨大なモンスターの姿。

 ゴーレム系ではなく、何故かは知らないがまたまた巨大な熊だった。


「あれ、また熊?なんだか私達って熊型のモンスターによく出会うよね?」

「うんうん。今回はヒグマかな?」

「感心してる場合じゃなくて、行くよちなっち!」

「OK!じゃあまずは私から行っくよー」


 ヒグマ型のモンスターは私達に睨みを効かせた。

 レベルで言えば私達の方がちょっと高い。

 私達の中で一番レベルが高いのはスノーのレベル35。そして私が32、ちなっちは30。加えてそこにKatanaのレベル31だ。で、このヒグマ型のモンスターのレベルはちょうど30。つまりはちなっちとレベルだけなら同じだ。

 でもちょっと違う。何故ならちなっちは……


「遅い遅い!そんな動きじゃ私は捕まえられないよ!」


 ちなっちは岩場を上手く利用して攻撃を避ける。

 【受け身】のスキルで着地時のノックバックを受け流し、最小の動きで敵の攻撃を着実に躱す。それなのに息切れどころか、俄然調子が良くなる一方。やっぱり“最速”は伊達じゃない。


「それじゃあそろそろ行きますか!《ブレイジング・ロード》!」


 ちなっちは剣と剣を重ね合わせた。

 ちなっちの新しい魔法だ。

 双剣の刀身が熱く燃え上がり、ジュウジュウと焼け焦げるような音を奏でている。これが《ブレイジング・ロード》。炎が彩る道だ。


「【加速】!」


 燃え盛る双剣を構えたちなっちはその圧倒的なAGIステータスに加えて【加速】で更にスピードを増す。

 ただでさえ捕まえられないビクマ型モンスターはそんなちなっちの姿を当然捉えられるはずもなく、新魔法と【加速】で組み合わさった一撃を耐えられなかった。

 ちなっちの双剣が瞬く間にモンスターの体を貫く。それと同時にワイヤーを外し、更に内部から痛めつけた。

 その強引な攻撃の前になす術なくモンスターは倒れた。


「ふぅ。調子、よし。バッチリ、OK!」

「お疲れさまちなっち。まさか一人で倒しちゃうなんてね。ちなっちらしいよ」

「あんがと。それよりごめんねー、マナの出番無くなっちゃった」

「いいよ。それよりどんな感じ?調子いいみたいだけだ」

「絶好調!」


 ちなっちはワイヤーを使ってヌンチャクみたいに双剣を操ってみせた。

 めちゃめちゃ調子良いみたいだ。

 ていうか、私が心配する必要なかったんじゃないですかね?うん。まあ心配してないけどね。


(だってちなっちって結局自分で解決するし)


 ちなっちのポジティブ思考故かもしれないけど、そんな人って凄いよね。

 さてと、そんなことよりホントに私の出番なかったんですけど。如何しよ、もう少し進めばもしかしたら他のモンスターの姿があるかな?多分あるよね?うん。今日「うん」多いな私。

 そんな時だった。


「ちなっち、【加速】!」

「えっ!?」

「早く!」


 私は叫んだ。

 ちなっちは瞬時に【加速】を使う。そんなちなっちのさっきまでいた真上の崖、そこから転がり落ちてきたのは巨大な大岩だった。多分さっきのちなっちの戦闘で気づかなかっただけで、振動が起きて落ちてきたんだ。て言うか落ちそうなんですけど。


(そうだ!)


 どうせならここで試そう。

 もう十分距離はとってある。ここならいける。


(頼むよ、〈波状の白星〉!)


 私は腰に納刀した〈波状の白星〉を掴んだ。

 そうして思いっきり振り切る。


 ギュン!!


 強烈な真空波が巻き起こった。

 それは苛烈でギューン!!ではなく、ギュン!!と短くめちゃくちゃだった。

 私の筋力が足りないせいか、少しブレてしまったが、狙い通りの位置に飛んでいった。


「痛っ!」


 腕に激痛が走る。

 いやそうじゃない。降った衝撃に耐えきれなくて痺れたんだ。

 痛い。こうダメージっていう感じじゃなくて、その冬場にセーターで帯電した後に金属製のドアノブに手を添えた時みたいな、強烈な静電気を食らった時のような痛みがジリジリとした。

 辛い。めちゃくちゃ手が震えてる。

 一応剣は離さなかったけど、とんでもない威力だ。そのおかげか落ちてきた大岩は木っ端微塵に吹き飛んでいた。気づかなかったのは、真空波の音と腕の痺れのせいである。


(これは……STR上げないとヤバい)


 涙目になって私は思う。


「大丈夫、マナ?」

「う、うん。それより、どうだった?」

「すっごい威力!これなら実践でも使えるよ!」

「う、うん。まだ無理だけどね、えへへ……」


 結局この日は私のトレーニングで幕を閉じるのだった。

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