■55 波状の白星
今日は予約投稿です。
それから投稿しない日も多分出てきます。
代わりに明日新しく書いた小説を出してみました。興味があったら是非に。
シズさんはもう一本剣を渡してくれた。
それは透明じゃないけど、白っぽい剣だった。しかも形状が今まで私が使っていたそれとは違う。サーベルみたいな形をしていた。
「コレなんですか?サーベル?」
「違う。コレはカットラス」
「か、カット、ラス?」
聞いたことない名前だ。
確かに私のイメージしたものとはちょっと違う気がする。何がって短いなーとは思っていた。
「コレはカットラス。片手で扱える刀身が短い刀。狭くて障害物の多い帆船の上で戦うことを想定した小回りの効く武器」
「えっと……」
「要は短い刀だ。舶刀とも呼ばれるものだが、また珍しいな」
困惑していた私にスノーが間に入って教えてくれた。
なるほど短くて使いやすい刀か。ちょっとわかった気がする。けど、何で刀身が白いんだろ?
「コレは白星晶を使って作った。だから貴女の」
「あっ、だから刀身が白いんだ。えっ、私にくれるんですか!」
「当たり前。コレは単に趣味で作った。お代も要らない」
シズさんはそう言う。
私は今一度カットラスを手に取ってみた。凄く持ちやすい。おまけに軽いし小回りも効く。全部説明通りだ。
私はさらに詳しく見てみることにした。
名前は〈波状の白星〉。短い刀身は白く、逆に握りは金色だ。波打つような紋様が刀身に刻まれていて、柄の後ろ側には緑色の小さな宝石が彩る。カッコいい。ホントに海賊みたいだ。
「その武器には特殊な効果が付いている」
「特殊な効果?」
「〈波状〉。振れば真空波が起きる」
「カッコいい!」
それはわかる。
つまり振れば遠くの敵にもダメージが与えられると言うことだ。漫画とかで剣をブンッ!って振っただけで岩を砕いちゃうシーンのやつだ。
それがこの剣でも出来るとなると、刀身が短くても文句は言えないかも。多分この剣は受けることを目的にしてなくて、いなすことを前提に置いてるんだろうとKatanaやスノーの動きを見ていれば察された。
「あれ?でもなんでそんな効果が付いてるんだろ?」
「シズはね、【鑑定】に【鍛治】【機構】だけじゃなくて、【潜在付与】を持っているのよ」
「【潜在付与】ですか?」
リオナさんが説明してくれた。
「うん。全部ってわけじゃないけど、素材によってはね凄く相性の良いものもあるみたいなの。そんな素材を使うとね、素材一つ一つに特別な能力が現れて、それを武具に染み込ませることができるのよ」
「つまり私が拾った白星晶には〈波状〉って言う能力が宿っていて、それをシズさんが出したってことですか?」
「そうね。シズが引き出したと言っても差し支えないわ」
ポカーンとしていた。
もうついていけない。ゲーム知識の無さが仇となる。
まあ要するに簡潔にまとめると、シズさんのおかげで凄く強くなったと言うわけだ。じゃあシズさんには感謝しないといけない。
「ありがとうございます!でも、ホントにお金いいんですか?」
「構わない。それにお金ならこっちから払うべき」
「ほえ?」
シズさんは何を言ってるんだろ。
私達はちゃんと言われた通りの素材を持って帰って来ただけなのに。
するとシズさんは袋を取り出した。
それは私達がドラグノ石を大量に詰め込んだ袋で、中にはまだたくさんのドラグノ石が入っていた。
「こんなにたくさんあっても使いきれない。だから返す……のも勿体無い。だから買う」
「えっ!?」
シズさんは本気のようだ。
弱ったなー、別に私達そんな気持ちで採って来たわけじゃないんどけど。私はスノーの方を見やる。するとスノーは「何故私なんだ」と言う面倒げな目をした。
しかしジーッと見ていたので堪忍したのか、溜息混じりに対処した。
「それはほとんどマナが採ったものだ。自分で考えろ」
「でもでも、コレって皆んなで採りに行ったんだから皆んなで決めようよ!」
「ギルマスはマナだ。マナが決めるべきだ」
「そんなこと言われたもー!ちなっち、Katanaどうしよう?私一人じゃ決められないよ」
私はちなっちとKatanaを頼った。
すると二人はしばし考えてから、ちなっちは頭の上で腕を組んだ。
「別にマナの好きにすればよくない?スノーの言う通り、それってほとんどマナが採ったんだからさ。私は、もう剣手に入ったし」
「私もお二人の意見に一理あります。どんな結果であろうと、私は皆さんに従います」
「それはそれで自分の意思がないような気がするんだけど」
「では、一つ。こう言うのはどうでしょう?そちらの鉱石を使って打った武具の売上の一部を譲渡していただくと言うのは」
「譲渡?」
「はい。それならお互いの利にもなりますから、名案だとはおもうのですが?いかがでしょうか」
なんかすっごくそれっぽいこと言われてる気がする。
と言うかベストな答えが提示されたみたいだ。そんな反応は空気を伝って私にも伝わって来た。
なんかそれが良さげな雰囲気を漂わせているので、私は「ふむふむ」と一人悩んでから結局Katanaの意見をモロパクリすることにした。
「じゃあそれで行きましょう!」
「いいの?」
「はい。一部の金利がどれくらいかはわかんないですけど……それはお任せします。わかんないので」
「おい、そこはきっちりしろ!」
「だってそんな計算できないよ!」
「はぁー、わかったそっちの管理は私が引き受ける。それでいいな」
「うん!」
と言うことで後のことはスノーに任せることにした。
加えて計算の得意なちなっちも巻き込んで、結局5パーセントと言うことになった。何か多い気がするけど、まあいっか。
まあ何はともあれ、
(早く試したいなー!)
内心やっぱりわくわくが止まらなかった。




