■53 ドラグノ石
ストックがなくなってきたので、どこかで一回投稿を止めるかもです。
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私達一行は装備を整えた上でドラグラ鉱山にやってきていた。
鉱山と言う名前だからどんなところなのかと不思議に思っていたが、現実でいう鉱山と同じで洞窟なのは変わりないとして一つ決定的にリアルのそれとは異なっていた。それはモンスターの影が所々から見え隠れする点だった。
「ここがドラグラ鉱山。なんか広いね」
「当然だ。全く。なんでよりにもよってここなんだ」
そう言うスノーは何故か不満そうだった。
その理由は定かではないが、何故か私とちなっちに視線が行く。思い切って直接聞いてみた。
「なに怒ってるのスノー?」
「はぁー。いいか、ドラグラ鉱山は確かに鉱石が採れると聞く。が、その装備はなんだ?」
「えっ、コレ?コレは初期装備の剣だけど?」
「私は持って来てないよー」
私はシンプルな剣を見せ、ちなっちは武器すら装備していなかった。その光景を見て何となく言いたいことはわかった。要はあれだ。武器もないのになんで来てるんだってことになる。足手纏いってことだよね?そんなのは百も承知だった。
「足手纏いなのはわかるよ?でも効率よくするには……」
「そう言うことじゃない。二人は自分の身をどうやって守るんだ!」
「「えっ!?」」
まあ確かに今の装備は守ることを疎かにしている。
それはわかるけど、まさかスノーがここまで怒るのは予想外だった。まあ私でも怒ると言うか怪訝な顔にはなるだろうけどね。
「大丈夫。その時は全力で逃げるから!」
「ああ!」
私とちなっちはそう宣言。
しかしスノーは顔を顰めた。
「はぁー。マナ、仮にお前が私の立場ならなんて言う?」
「えっ?来ちゃ駄目だとか、全力で守るけど?」
私はそう言った。
するとスノーは余計に顔を歪める。一体何故?
そんな私にKatanaはこっそり耳打ちした。
「きっと心配しているんですよ」
「えっ!?」
スノーは一切そんなことを言わない。
けどKatana曰く、スノーの性格を鑑みれば言えないことぐらいは瞬時に察してもおかしくなかった。
そんなスノーに対して悪いと思いながら、私は頼んでみることにした。
「スノー、Katana。お願いがあるんだけど」
「なんだ」
「はい」
「私とちなっちを守って。その間に採掘進めちゃうから」
自分勝手すぎる。
傍若無人な私の言葉に怒ったり怪訝な顔を向けてくれても構わない。が、何故か二人はそんなこと一切言わずにコクリ首を縦にするだけだった。何だか察してくれたみたいで。って、何を?
「そうと決まれば早くドラグノ石?集めちゃおう!」
「OK!」
「待て」
意気込む私とちなっちをスノーは制した。
立ち止まり振り向く私達にスノーは溜息を吐きながら教えてくれた。
「二人はドラグノ石を知っているのか」
「「知らないよ」」
「だったらまずは話を聞け。手当たり次第に掘り進める気か!」
「う、うん」
私は小言で答えた。
すると先程よりも大きな溜息を上げるスノー。確かに私も馬鹿だなと思った。そんな無知な私とちなっちにスノーは集めておいてくれた情報を提示する。
「いいか。ドラグノ石と言うのは、ここドラグラ鉱山を主な産出源とする鉱石でレア度はエピック。品質も様々だが、その特徴は色合い。表面は深い緑色をしている鉱石で光の加減で光沢を露わにする比較的硬度も高い石だ。また熱を加えることでその色合いは赤黒くなることも有名だな」
「なんか聞いてるだけでわくわくしてくるね!」
「楽しそうだが、品質もある。より良いものを選りすぐるなら品質も高い純物でなければならないな」
「品質?」
この世界のアイテムには品質と呼ばれる数値があるものもある。
ただ私にはわからない。その理由はあまりにも知識がないからで、専門的な知識がなければわからないらしい。
「スノーは解るの?」
「一応な」
「私も多少は心得があります」
スノーとKatanaには解るようだ。
ちなみに【鑑定】と言うスキルらしい。習得条件はよっぽど難しいようだ。
「品質ってどんな感じなの?」
「主に五つに分けられる。最高品質、高品質、標準品質、低品質、最低品質。それぞれ、BQ>HQ>SQ>LQ>WQの順だな。余談だが、BQはBestをWQはWorstを組み合わせた造語だ」
「へぇー(うーん、聞いてもわかんないよ)」
熱心に説明してくれるスノーには悪いが半分聞き流してしまった。聞いてもよくわからないからだ。よって私とちなっちは互いに顔を見合わせると、とりあえずガンガン集めようと言うことを心中で通じ合わせた。
(多分わかっていないな)
そんな感じの目でスノーが見ていたのが、少し痛かった。
「行くぞKatana」
「はい。奇襲を仕掛けます、弐ノ型稲妻!」
Katanaは視界の先で背後を見せている蜥蜴の人型モンスター、リザードマンに斬りかかった。
元々出来るのかわかんないけど、【縮地】?と言うスキルを利用して一気に間合いを詰める。加えて【忍び足】で足音も極限まで消しているので気付いていないのか、リザードマンはあっさりやられてしまった。
彼女の握る日本刀がリザードマンの右肩を捉える。そうして雷マークを描くように素早く日本刀を動かして、倒してしまった。
「よし、次は私が行く」
さらにKatanaの周りに集まって来たリザードマン達はスノーが全員倒してしまった。
洞窟内だと不利だと判断したのか、色んな武器を扱えるスノーだからこその巧みかつ的確な動きで倒してしまう。暗がりに隠れ忍ぶようにしながら投げナイフを首筋に刺し、さらには得意の大鎌の一撃で刈り取ってしまった。手際が良すぎて怖くなる。
「こんなものか」
「ですね」
「二人とも手際良すぎて怖いよ!」
二人とも汗一つかいていない。
まるでなんでもなかったかのように自然な立ち振る舞いだ。それがまた怖い。強者の余裕ということだろうか?
「そんなことよりも早く鉱脈を採掘するぞ。いつリザードマンがリスポーンするとも限らないからな」
「そ、そっか!」
スノーに促され、私はつるはしを握った。
カキーンカキーンと洞窟内に金属音が響く。
私達はせっせと鉱脈を掘り起こし、最初に手にしたのはなんた私だった。
「あれ?なんだろ、コレ?」
私が手に取ったのは緑色をした鉱石だった。
とっても綺麗。洞窟内だからか、あんまり光っては見えないけどスノーに見せてみる。
「ねえスノー、もしかしてコレ?」
「ん?ああそれだ。見せてみろ」
「うん」
私はスノーに手渡した。
じっくり鑑定する。【鑑定】のスキルで品質が解るからこそだ。
黙って何度も角度を変えながら見ていく。
「どう?」
「かなりいいな。高品質品だ」
「ホント!でもせっかくなら最高品質目指そ!」
私は再度つるはしを握りガンガン掘っていく。
とりあえず緑色の鉱石群を狙って掘っていこう。
カチーンカチーン!!
鉱石を叩く音。
次第に音は大きくなり、ドラグノ石が採れる度にスノーとKatanaに手渡す。
私の渡すものはどれもこれもが高品質品か標準らしく、売っても高値で買い取ってもらえるらしい。これも【幸運】のおかげか、ちなっちやスノーが掘っても石ころや鉄鉱石しか出てこないのだ。
結果ほとんど私一人でドラグノ石を集めてしまった。
気が付けばインベントリの中はドラグノ石でいっぱいだ。
「こんなものだろ」
「だね。マナ、もうよさそうだよー」
「待って、もう少し掘ってみようよ」
私はもう少し掘ってみようと思った。
せっかくこんなに出るんだ。もうちょっと集めておきたい。どうせなら他にも鉱石は採れないだろうかと欲を出す。
カーンカーンと幾重にも音を奏でながら、そうして十分が経過した。
「こんなものかなー、ん?」
すると私の足元に転がって来た石ころに視線が移る。
とても綺麗な水晶だ。拾い上げた私はそれをスノーに手渡す。
「終わったのか?」
「うん。ねえスノー、コレなにかな?」
私が手渡した透明な石。
否、若干白っぽい。私から受け取ったスノーは再度【鑑定】してみる。すると目を見開いた。
「なんたコレは。また珍しい」
「えっ?」
スノーは私に返す。
受け取った私は不思議に見つめながら、スノーに尋ねた。
「ねえスノー、コレなんだったの?」
「それは白星石だ」
「白星石?」
首を傾げる私。
ちなっちとKatanaも同じだ。
「珍しいの?」
「ああ。この世界のレア度は細かく分けると面倒だが、簡単にノーマル、ハイノーマル、レア、エピック、マスター、レジェンドに分けられる。レジェンドなんて幻と考えて差し支えないが、その中でもコレはマスターレア。しかも最高品質品だ」
「えっ!?じゃあすっごく珍しいじゃん!」
「私も驚いている。この石は星の光を長年あたることにより発光した特別な水晶という設定がある。こんな光なんて届かないところでよくもあったものだ」
「奇跡ってやつだねー」
「そうだな」
ちなっちがそう解釈する。
同意するスノー。私はそんな不思議かつ珍しい鉱石を手にしてしまった。これはシズさんに見せたらきっと喜ぶぞ!私は何だかわくわくしながら手に入れた白星石を見ていた。
「よかったですね、マナさん」
「うん!」
Katanaも褒めてくれてるみたいだ。
なんだかんだありつつも、結果として私達の採掘は上手い具合に行ったらしいのでした。




