■46 イベント終わってみて
もう1話出すかも。
評価とかブクマしてくれると嬉しいです。
“遅れてやって来たイースター祭”のイベントが終わった。
終わってみた感想だけど、何だが呆気なかった。
それでもたくさん気づかされることもあったし、かなり充実していて楽しかった。なーんて、つまんない考察は置いといて私達はギルドホームに戻って来ていた。
「ぐへっ、疲れたー」
「お疲れマナ」
「うんそっちもね。ちなっち、スノー」
私は机に突っ伏していた。
〈ツンドューラ〉での死闘?を掻い潜り、私達パーティーは無事に帰還した。それでこうして疲れがどっと見えたのだ。まあ体感的と言いますか、感覚的と言いますか私達はそれを色濃く受けてしまう体質だと言うことがこの間の砂漠での戦いでわかったので、こうしてクールダウンしているわけです。はい……
「そう言えばスノー、結果発表っていつ出るの?」
「半日後だ」
「半日後?でも私達集計なんかしてないけど」
「イベント内で手に入れたエッグの数はシステムが自動的に随時集計してくれていたからな。何も心配することはない」
「そっか、じゃあ安心だね」
私はニカッと笑った。
でも半日後ってなると夜の6時だ。今が現実世界の12時になるので、これから暇になる。
「マナさこれからどうする?」
「うーん、一回ログアウトしようかな。お腹も空いて来たし」
「あー確かに私も。スノーは?」
「私も一度戻る。今晩9時にまた合流でどうだ」
「OK!じゃあそう言うことで」
「うん」
と言うことで一時ログアウトすることにした私だった。
「さてと、冷蔵庫になにか入ってたかな?」
私はお腹が減ったので適当に冷蔵庫の中を物色することにした。
中を見ると昨日作ったカレーがあった。
(カレーかー。でもお米炊いてないしどうしよ)
チラッと炊飯器に目をやる。
ご飯はまだ炊いてないし、パックご飯なんて買い置きしていないので正直困った。
結局悩んだ結果、パスタを作ることにする。
トマト缶が棚の中にあることを思い出したので引っ張り出し、昨日のうちから水につけて置いた刻み玉ねぎとベーコンにパセリをキッチンに並べる。
まあ簡単なパスタなので普通に茹でて混ぜて乗せて完成だ。
「いたたぎまーす」
私は一人トマトパスタを頬張る。
うん。普通だ。ちょっと凝ろうと思ったけど、結局普通が一番だった。
(えっと後は部屋の掃除をして宿題して、夕方になったらスーパーに買い物……うん。いつも通り)
私は指を折って今日の予定を思い出す。結局いつも通りなので特に変なことはない。
まあそんな感じで私は夜まで暇を潰すのだった。
さてと9時になった。
私は早速〈WOL〉にログインすると、ギルドホームの中には既にちなっちとスノーの姿があった。
二人共椅子に座り、スノーは紅茶を飲みながら本を読み、ちなっちはそんなスノーに話しかけている。
「だからスポーツは楽しいんだよ……ってマナじゃんちわっす」
「あっ、うん。ってそれよりなに話してたの?」
「別に。ちなっちから団体競技の楽しさを説かれていただけだ」
「そっか。まあちなっちらしいね」
「あー」
まあそんなちなっちのことは置いておくとして、いやちょっとかわいそうかも。
そんなことを思うのも束の間。先に本題に突っ込んでいくのはちなっちだった。
「それで結果はどうなったんだろね」
「うん。楽しみだね」
「今回のイベントは上位五位までに商品が授与される。すでに集計は終わっているが、私達は一日完全に無駄にしているからな。入賞は難しいだろう」
「そっかー。あーあ折角頑張ったのになー」
「まだ結果聞いてないよ。それに私は楽しかったから満足だし」
「だなー」
「結果を見るぞ」
落胆したちなっちを和ませた私。
その直後には調子を取り戻し、スノーは結果を私達に見えるように展開した。
三行位のメッセージの後、一行改行された先からランキングが張り出されていた。
「ドキドキするね」
「入賞なら一発で分かるからなー。楽しくなってきた」
「結果はもう出ているがな。見るぞ」
スノーはゆっくり煽るようにスクロールする。
一位に躍り出たのは『Flame Tree』と言うギルドで二位とは圧倒的な大差をつけていた。
「凄いね、この一位の人達」
「ああこのギルドは現在最多のギルドメンバーを有する巨大ギルドだからな」
「そうなの?じゃあこの二位の『春風の銀狼』っていうのは?」
「あまり詳しくはないが、確かカリスマ性のあるリーダーがいるそうだ」
「へぇー、色々あるんだね」
「方針も違えば体制も違う。それがグループというやつらしい」
「らしい?」
どうも歯痒い取り回しだ。
「私はグループ活動が苦手だからな。よくわからない」
「そっか。じゃあ私達といてどんな気持ち?」
「どんなと言われてもな。ここで聞くのか?」
「うん」
私は笑顔だった。
「うむ。悪くはない」
「よかったー」
胸を撫で下ろしホッとする。
それにしてもこう見ているといろいろ面白い。
そのうちスクロールしていくと三位、四位と表示された。
「次が五位だね」
「ああ」
「入ってるかなー。早く見ようぜー」
「わかった」
そういってスノーは軽く指を弾かせると、画面がスクロールした。
そこに表示されていたのは見覚えのある名前だった。
「『星の集い』。あれ?この名前って」
「私達のギルド名だな。まさか入っているとは思わなかったが」
目をパチクリさせる私。
隣ではスノーが淡々と状況を口にする。そんな異様な雰囲気の中、私の肩に腕が乗っけられた。
「やったじゃん!私達のギルドが入ってるぜ!」
「う、うん。落ち着いてちなっち」
ちなっちはこんな感じだ。
感情が昂ると喋り方に気合が入る。いつものなーなーがはっきりくっきりするのだ。
正直わかりやすい。
「でもまさか五位入賞なんて……嬉しい!」
「ちなみに賞品は〈水差しの簪〉らしいな。水属性に対しての耐性を付与する能力がある装飾品らしい」
スノーはそう解説する。
早速私は賞品を受け取るとそれを見て思うところがあった。綺麗な簪だ。でも私達は誰も使わないし、一度聞いてみたけど皆んな首を横に振っだ。だよね、正直いらないよね。
でも貰えるだけで嬉しい。
でも私としては記念メダルの方が価値がある気がしていた。頑張った甲斐があったと実感出来るからだ。
「うーん、もったいないなー」
「だよねー。誰か貰ってくれればいいけど」
「うーん……あっ!ねえ、Katanaならどうかな?多分似合うと思うし、貰ってくれそう」
「確かに!じゃあ明日にでも探して渡そうぜ!」
私達の手にあっても仕方のないものだ。
だからこそ必要としてくれそうな人にプレゼントしようと思った。知り合いだしね。
そんな談笑をしていると、突然ギルドホームの扉を叩く音がした。
ドンドン!!
小刻みに軽快なリズムでノックする音。
丁度立っていたちなっちが出る。
「はーい、開いてまーす!」
その声を聞くとガチャと言う音がした。
そこに現れたのは見知って人物。青い髪に金の角。腰には日本刀を帯刀している。
着物みたいな格好に上から改装の鎧を着込むその姿。
それは今し方私達の会話に上がっていた人物、Katanaであった。
「あれ、Katana?」
「はい。お久しぶりです、皆さん」
「久しぶりってまだ二日しか経ってないけど。それでなにか用?わざわざギルドまで来たってことはなにかあるんだよね?」
わざわざギルドホームにまで来たと言うことは当然ギルドの場所を聞いてきたことになる。
そんな手間を取ってまで来てくれたのにはきっと何か理由があると踏んだのだ。
「はい。この間の件ですか」
「この間?」
「はい。勧誘の件です。色々考えたのですが、今後は皆さんの行動に寄り添っていきたいと考えています」
「寄り添う?つまりそれって……」
「勧誘を受けると言うことだな」
「はい」
スノーの言葉に反応したKatana。
その即座の対応に驚きが隠せない。何だが急展開過ぎてちょっと目を回してしまう私だったが、口からは素直にこう言っていた。
「じゃあこれからよろしくねKatana。それと、ようこそ『星の集い』へ!」




