■4 街の雰囲気もそうだけど
ここからは不明。
出す日時も不明。
そしてまた一つ歳をとったのでした……
気がつくと街の中だった。
後ろからは水の噴き出す音。そこはちょうど噴水の前でTシャツ半ズボン、腰には剣を携えただけの私は違和感以外のなにものでもなかった。
「ここがゲームの中?」
思っていた以上にリアルだった。
とりあえずその場から動こうと思い歩くと、石畳に躓いて転んでしまう。痛い。擦りむいた傷痕がちょっと出来ちゃった。ここまでリアルなんだ。
「いたた。でもそんなに痛くないや」
痛いは痛い。
けど、そこまで痛くない。そこがリアルと違うところなんだろう。
とりあえず街の様子も見たいけど、まずは街の外に出て色々やってみたい。このゲームは特にやることがないので、自由に探索出来る。だからまずは街の中じゃなくて少しでもレベル上げをするのがいいと思ったのだ。
「あのすみません。街の外には如何行けばいいんですか?」
「街の外かい?それなら、ここから真っ直ぐ行くと外に出られる城壁があるから、そこから出るといいよ」
「ありがとうございます」
今のはNPCだ。
NPCは頭の上にマークが出る仕組みなのでわかりやすい。如何やって出る仕組みなんだろ。
それに加えてこのゲームの奥深いところは、NPCにも決まった台詞はあんまりなくイベントもランダムで、自由に喋っていることだった。決まった行動もしないし、モンスターだっておんなじで完全なランダムエンカウントになっている。
(じゃあまずは外に出てモンスターと戦ってみよう!)
いつになく交戦的な性格になっている。
自分でもわかるほどにはしゃいでいて、まずはやってみることが一番だと思ったからだ。それにあのステータス。意図してかは知らないけど、全部おんなじって何!?口には出さなかったけど、そこまで私平凡なのかな?でも改めて考えてみれば平凡が一番だと悟るのだった。
とりあえず街の外に出てみた。
草原と森が広がる場所で、ここならモンスターとで遭遇出来るかもしれない。
と思っていた矢先、早速出会ってしまった。そこに現れたのは青いプルプルした定番モンスター、スライムとそれを追いかける金色の角を持つ兎だった。名前はアルミラージらしい。
「可哀想」
追いかけられているスライム。
可哀想とも思うけど、可愛くもあった。ってそんなことをしてる場合じゃないや。まずはレベル上げレベル上げ。私は剣を抜刀して、まずはアルミラージを倒すことにした。
「おりゃ!」
後ろからこっそり近づいて斬りかかる。
するとあっさりアルミラージは倒れ、消えてしまった。
「あれ!?消えちゃった」
驚く私。
しかし私の目の前にパネルが現れ、レベル2になったことを教えてくれる。その上に敏捷性を示すAGIのステータスが3伸びていた。他のステータスも全体的に1とか2ずつ伸びている。これが〈ヒューマン〉の倍率補正だろうか。
そう思ったのも矢先、パネルをポンと押すと急に隅カッコで【成長補正(平均)】と出てきた。
「平均って何?」
如何やらこのスキル、取得条件にレベル1の段階でHPとMP以外の全てのステータスが同じ場合にのみゲット出来るレアスキルらしい。
その効果はレベルアップの際に貰えるプラス値が全て平均的に増えると言うものらしい。平均と言うか平凡と言うか毎日コツコツやって来た私にはさっぱり良いとは思えなかった。でもレベルが上がった際に少し上乗せされるのはラッキーだ。
「後はスライムだけど……止めとこ」
私はスライムは放置していくことにした。
アルミラージに追い回されて疲れているところだった。不意打ちをしてもいいけど、もうちょっと違うところも見てみたかったからだ。
そうやって私がその場を後にしようとすると、急にポヨンと背後から何かがぶつかって来た。
するとそこには先程のスライムがいて、攻撃して来ているのかいないのか?私のHPはミリも減っていなかった。
「如何したの?」
モンスターにも意識はある。
それに加えてこのモンスターは言葉がわかるのか。急にプルプルと震え出した。病気かなと思った私。しかし如何やら違うようで、スライムの姿が突然金ピカに発光し始めた。
「えっ、なに!?」
いやいや本当に何。
私にはさっぱりわからないが、発光が終わるや否やスライムの名前がゴールデンスライムへと進化していることだけはわかった。レベルは1のままだけど。
すると今度は私の前にパネルが現れ、そこにはスキル【幸運】が手に入ったことが明らかになる。
「幸運って?この子に出会ったのが?」
首を傾げる私。
しかしスライムは逃げる様子もなく、私に体当たりを続ける。何でだろと思っていると、急にスライムが後ろを振り返りポヨンポヨンと跳ねながら進んでいく。
その様子をじっと眺めていた私。しかし途中でスライムは止まると、私を待っているかのようにじっと見てきた。
「私を待ってるの?」
言葉が通じているのか、スライムはポヨーンと高く跳んだ。
それを確認すると私はスライムの後を付いて行くことにした。かくして私はスライムを追ってみるのだった。