■39 皆んなの心配り
しばらく投稿してなかったけど、そろそろストックも出来てきたから出します。
Katanaと一時行動を共にすることになった私達はとりあえず砂漠エリアを一通り見て回ることした。
砂漠エリアは旨味が少ない分人通りも極端に少ない。それ故にライバルになりそうな他プレイヤーの姿は一切なく、逆に言えば共闘を組むことすら困難なエリアであった。だからあの場でKatanaと出会ったことですら奇跡に程近い。
「そう言えばこの砂漠に来てから蠍とかサボテンのモンスターとしか戦ってないけど、他にもいるのかな?」
「確かにそうだよねー。硬いのばっかって言うか面倒な相手が多い気がするー」
ちなっちが同意した。
それはちなっちの経験が語る。相手の防御略の高さに一番翻弄させられたのは結局ちなっちだった。そしてパーティー内で一番頑張ってくれたものちなっちなので、その相性の悪さは理解しているはずだ。
「特にあの蠍。サンドスコーピオンだっけ?硬すぎて全然刃が通らないんだよねー」
「そのお気持ち察します。私もまるで刀の刃が通らず苦戦を強いられました」
「やっぱり?!前衛職のプレイヤーには厳しいよねー、あの硬度」
「はい」
Katanaはちなっちの意見に同意した。
なんだか二人とも相性が良さそうだ。
それにしても前衛職って大変なんだねー。あれ、じゃあ私って何してるんだろ?ちょっとスノーに聞いてみようと思いスノーの方に寄るが、ふと彼女の顔色を窺うと何か考えているような節があった。
「どうしたのスノー?顔色悪いよ。水飲む?」
「いやいい。別段喉の渇きに飢えているわけではない。私が思うのはKatanaの発言」
「発言?」
「ああ。一体Katanaはどうやってモンスターハウスを抜け出したのか。少し気になっただけだ」
「ふうーん。じゃあ聞いてみればいいよ」
「はあっ?」
間の抜けた声を出したスノーを放っておいて、私はK atanaに聞いてみた。
「ねーKatana。聞きたいことあるんだけどいい?」
「はい構いませんよ」
「さっきたくさんのモンスターに襲われたっていってたけどよく無事だったよね。どうやって助かったの?」
私のそんな率直な質問に対して同意の声を上げるのはちなっちだった。
「ああそれ私も聞きたかったんだー。今度も言うけど、あんな硬いの無理だよー」
「確かに普通には難しいでしょうね。ですが、部位ごとの肉質や強度に着目して的確な位置に攻撃を加えればかなり有効打になります」
「なるほどそう言うことか。確かにその方法ならもっと楽に仕留められるな」
「そんなことできるの、スノー?」
Katanaの投げ返した答えにちんぷんかんぷんと言うか理解が追いついていない節のある私とちなっちとは違い、如何やらスノーはすんなり理解してしまったらしい。
でもそんな凄いこと私にはとてもじゃないけど無理だよ。
「私はできる」
「断言しちゃうんだ。凄い自信だね」
「まあな。ちなっちもできるだろ」
「うん。多分ねー」
「ま、まあちなっちはできそうだよね。はぁー、じゃあ私だけ足手纏いかー」
「そんなことはないぞ。私はマナを……」
「私をどうしたのスノー?」
「なんでもない。知らなくていいことだ」
「へー、教えてよー!」
「教えない」
スノーの表情が険しかった。
何か私変なことでもしちゃったのかな?
よくわかんないけど、ちなっちが分かったような態度を取ったのがまた腹立たしかった。私じゃわかんないことなのかな?
あれから更に歩いた。
途中二度もサンドスコーピオンに遭遇したけれどKatanaのおかげも相まってかなりスムーズに片付いた。
と言うのもKatanaのアドバイスを受けて私以外の三人の動きが格段に良くなったのだ。
襲ってくるサンドスコーピオンの攻撃を尻尾の付け根を的確に狙って削ぎ落とすスノー。更には機動力を削ぐために足の付け根の関節部を的確に斬り落としたちなっち。流石というかKatanaの素早い抜刀術。それらが組み合わさり、私を置いてけぼりにして三人だけで倒し切ってしまったのだ。
「これって私要らないよね?」
そう思ってしまうぐらい三人の連携は見事だった。
なんだか私が介入したら状況が悪くなるような気さえする。何もしていない私に経験値が入る。いいのかな、これで?ずるいよね。名ばかりのギルマスなんている意味あるのかな?
「三人ともお疲れさま」
「ああ」
「いやー、これいいねー。コツが分かったら大した相手じゃないって気づいたよねー」
「そ、そうなんだ。あはは」
軽く笑っておく。反応がないと悲しいもんね。
しかしそんな様子をただならぬと思ったのかちなっちが心配して声をかけた。
的を射るような的確なことだ。
「マナは気にしなくていいよ。適材適所って言葉あるじゃん」
「それはそうだけど。私だけ何もしてないのはちょっと……」
「そんなことないって。それに、このパーティーはマナを中心に立ち回ってるんだよ?」
「えっ!?」
「ちなっち、それは言うな!」
スノーが急にちなっちの口を塞ごうとした。
ちなっち自身ヤバいって思ったのか、顔を引き攣らせる。どう言うことだろう。
そんな様子を眺めていたKatanaは瞬時に状況を把握したのか、ポンと手を叩いた。
「なるほど。つまり皆さんはマナさんを中心に添えてそれを支える形のパーティー構成なんですね。素敵です」
「素敵って。スノー、ちなっち。どう言うこと?」
Katanaによって暴露された情報を唇を噛みながら仕方なさそうな顔になる。
そうして溜息と共にスノーが話し出した。
「Katanaの言う通りだ。私とちなっちはマナを中心とした立ち回りを前提に添えた行動をとっていた」
「もちろん打ち合わせとかはしてないよ。なんとなくそんな気がしてただけ」
「どうしてそんなことしてたの?」
「だってマナってさ急に変な動きするでしょ。多分スノーは気づいてたと思うけどさー」
「ああ。マナの動きは私の知る誰よりも読み難い。むしろ読もうとすると困難を極める程だ。だからこそマナには自由に動かさせそれを的確にカバーする動きの方が最適解に程近い。そう判断しただけだ」
「じゃあ私、二人に迷惑かけてたってことだよね。ごめんね」
私は深く謝った。
二人に迷惑をかけていたと知ると何だか心が窮屈に感じる。
しかしそんな私に二人は首を横に振った。
「そんなことないって。私は全然オッケーだよ。だって中学の時から一緒なんだし、それぐらい気づいてるって。今更気になんないよ。むしろ、こっちの方が普通って感じ」
「私もだ。これぐらいで気疲れする程、私は弱くない」
「いいの二人はそれで」
「「うん(ああ)」」
二人は大きく頷いた。
そんな二人の姿を見た私はほっとする。けどやっぱり気にしちゃう。自由にかー。いいのかな、それで?
不安そうな私にいち早く気が付いたのはKatanaだった。
「いいのではないですか?」
「えっ!?」
私は一切口にしていない。
それなのにこの反応。私の顔色だけで判断したのだ。
「皆さんああ言っておられるんです。変にマナさんが不安を露わにしてもいい結果にはならないと思います」
「でもそれでいいのかな?」
「いいと思いますよ。時には頼りにしてみるのもまた手です」
Katanaはそう言ってくれた。
けど私はいつも二人に頼りっぱなしだ。それが無性に心を締め付ける原因になった。けど、吹っ切れるのが早いのも私だ。逆にKatanaの言葉をそのまま飲み干すことにした。
二人に頼る。いいじゃんそれで。私っぽい。よーし、だったら私も二人を振り回すぞー!そんな気持ちに早変わりした私、Katanaの手を引いて二人の隣に立った。
「じゃあさ早く行こ!旨みはないかもだけど、乱獲?しちゃってどうせならランキング上位目指そうよ!」
「簡単に言うねー。まっ、乗ったけど!」
「はぁー。わかった」
「わかっちゃうんだ」
「三人とも本当に仲が良くて羨ましい限りです」
「何言ってるの。Katanaもだよ!
「私はパーティーメンバーではないですよ」
「今はね。でも、どうせならKatanaもソロで一位目指したらいいでしょ」
「私にはとても。そんな烏滸がましいことできかねます」
「やるだけやろうってこと!さあさあ、早く!」
そう言って私はKatanaの手を強く引っ張った。
そんな私の後をちなっちとスノーは続く。そうして私達がこれから辿り着くのはちょっとした憩いの場だった。




