表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/266

■27 VS虎

 時刻は夜の9時を回った。 

 ゲーム時間では夜。

 3時間周期だとして、大体夜の9時くらいで合っている。

 こんな時間に私はだだっ広い平原にやって来ていた。


「この時間で間違いないか」


 私は時間を見た。

 合っている。

 そしてこの場所だ。つまり奴が現れる。

 そう思った途端、私の周りを凄まじい勢いで突風が舞い上がった。

 反射的に顔を服の袖で覆う私。

 しかしそれを見定めて私の顔目掛けて何かが素早く飛んできた。

 私はそれをすんでのところで半歩下がって躱す。

 ギリギリの行動。冷や汗が溢れた。


「来たか」


 小さく唱える。

 私の目の前に飛んできたもの。それは鋭い爪だった。

 銀色に輝く鋭い爪を持つのは巨大なモンスター。

 名前は無頼タイガー。その名の通り、虎の姿をしたモンスターである。


 私がコイツに遭遇したのは何も偶然ではない。

 コイツがこの時間帯、この場所に現れることは事前にクエスト内容で知れていた。

 そうこのモンスターを倒せば私のノルマは完了する。

 しかしこのモンスターは見るからに強敵で、あまり情報がなかった。それ故にまず飛び込んでくる公開情報のレベルに視線が行く。


「レベル25か。私より2つ上か」


 そう苦い顔で答えた。

 無頼タイガーは爪をジリジリと草原の草を抉りながら、地面を引き裂く。

 そしてその怖い顔からは唾液と生暖かい息を吐く。

 獰猛。

 一言で表すならそれが適切だと思った。

 しかし私は逃げやしない。びびったりもしない。

 背中に背負った弓矢を手に取り構える。

 そうして無頼タイガーの眉間(みけん)目掛けて放った。


「グラウッ!」


 無頼タイガーはそれを前脚で払う。

 流石に効かないか。

 それを悟った私は瞬時に距離を取るが、それを睨むような視線で見つめる無頼タイガー。

 一気に距離を縮めて来た。


「チッ!」


 大きな舌打ち。

 私はすかさず左に方向転換しながら矢を撃ちまくる。

 しかしそれらは無頼タイガーの剛毛に阻まれてしまい、致命傷には至らない。

 HPも僅かにしか減っていなかった。

 しかしそれで十分。


(僅かにでも減らせれば、勝機はある)


 躱し続ければ負けはしない。

 しかし勝つことも出来ない。

 装備出来る矢の数にも限度はあるし、インベントリから出していてはその隙を狙われる。何処かのタイミングで何かしらの“変化”を起こすしかなかった。


「仕方ないか」


 私はインベントリをすかさず開き、そこから小さな小瓶を一つ取り出した。

 中には毒々しい紫色をした液体。

 私はそれを弓矢の先端の(やじり)に垂らす。

 ポタポタと浸された矢。それを構える頃には、無頼タイガーの強靭な牙持つ顎が私に迫っていた。


 しかし私は一切怯むことなく矢を放った。

 それは無頼タイガーの下顎に命中し、痛みからか苦しみ出す。

 その上HPもごっそり削れた。


「ふん」


 私は一瞬で弓矢から大鎌に切り替えた。

 ここからは接近戦。

 無頼タイガーは首を大きく振り引き剥がす。

 しかしさっきよりも確実に動きが悪い。何故かって?そんなの決まっている。

 私がさっき放った矢の先端には毒を塗っていたからだ。

 その毒が無頼タイガーの体に瞬時に回り、毒状態にする。そうエフェクトも出ていた。

 だからこそ動きがかなり鈍いのだ。


「毒は効くのか」


 軽いステップで攻撃をひらりと躱し、大鎌で連続して傷を負わせる。

 こうしてついた傷口が摩擦に点在するのか、無頼タイガーは吠え、私の動きを一瞬止めた。

 片目を瞑り、両耳を覆う。

 その隙を突いて無頼タイガーは私の顔目掛けて鋭い牙を剥き出しにして噛み砕こうとする。

 だがーー


「終わりだ」


 刹那、大鎌が無頼タイガーの喉元に触れた。

 そしてそのまま力の流れに任せて慣性が勝手に無頼タイガーの命を奪う。

 どでかい咆哮。

 悲痛な叫びと共に無頼タイガーは苦しみ出し、そのまま他に伏せると消滅した。

 かくして私は無頼タイガーをものの数分で討伐したのだった。



 無事に無頼タイガーを討伐した。

 そんな私は如何やらレベルアップしたらしい。

 その上、私の目線は下を向いていた。


「なんだコレは」


 私の視界の先。

 そこにはウィンドウ画面が表示されていた。

 そしてスキル獲得の証。

 スキル名が隅付きカッコで囲われている。


「【換装】?」


 私はスキルの説明欄を見た。

 そこにはこうあった。


 【換装】

 レア度:エピック

 習得条件:同時に二つ以上か異なる武器を連続して使用している場合。また装備している場合。

 説明:装備している武器を瞬時に持ち帰ることが出来る。


 そう書かれていた。

 見事にシンプルな文面だ。

 もう少し凝っていても文句はないほどだが、とりあえず試してみよう。


 私は現在装備している弓と大鎌。

 この二つの武器を装備した状態で、片方に手をやる。

 すると如何だろう。

 今まで感じていたラグがなくなり、瞬間的に手に吸い付くように持ち帰ることが出来た。コレは使える。私は確信した。


「なるほどな。いいスキルだ」


 しみじみと心の底から溢れた。

 不敵な笑みを浮かべる。

 ニヒルな口元。二人がいたら気味悪がるだろう。

 しかしそれぐらい面白く、使えるスキルだったことに好感したのだった。

【簡単なキャラクター紹介】

ノース・アレクシア・高坂:スノー

15歳の高校一年生。

元は私立のお嬢様学校に通っていたが、現在は優秀な進学校に通っている。

文武両道、才色兼備の持ち主でその有り余る能力をゲームに注ぎ込む程の暇人で天才。

両親からは甘えられ、学校のクラスメイトや教師からは頼られるほどの優秀さをみせる。

名前に敬称を付けられることを最も嫌う。


ステータス(劇中未登場も含め)


 ネーム:スノー

 種族:〈ヴァンパイア〉

 レベル:25

 HP:102

 MP:75


 STR:50

 VIT:50

 AGI:52

 DEX:50

 INT:75

 LUK:70


 装備品

 体:〈レッドタイ〉

 服:〈黒夜のワンピース〉

 足:〈黒夜ショートパンツ〉

 靴:〈黒夜の革靴〉


 武器

〈黒夜の大鎌〉〈先鷲の弓(イーグル・アロー)


 スキル

【換装】【体術】【受け身】【反射神経】【自動HP回復(小)】【自動MP回復(小)】【呪い無効】【毒耐性(中)】

 魔法

《シャドウバインド》《ダークトルネード》


 称号

『夜の姫公子』

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=446623083&size=300
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ