■260 アイアンタートル
今回は何があったかって話。
私達はその頃、ちなっちとKatanatoと一緒に水辺に来ていた。
ここにやって来たのは他でもない、頼まれたからだ。
「確かスノーが言ってた、水辺ってここだよね?」
「そうだよー。でも本当にいるのかな? 私、こんなとこにいるのって聞いたことないよー」
ちなっちは頭の上で腕を組む。
そんな中、Katanaは周りに警戒しながらだ。
刀の柄に指をたがえて、いつでも抜刀できるように準備する。
「でも大丈夫かな?」
「なにがですか?」
「だって相手は硬いんでしょ? そんな相手に私達の武器が通用するのかな?」
「さぁねー。まぁ何とかなるでしょ。全員レジェンド武器持ってるんだからさ」
ちなっちは簡単に言った。
確かに私もそうだけど、ここにいる三人はギルド内でも、神獣の名が記されたレジェンドレア武器を持っていた。
でも不安なのは、皆んな剣だってこと。
だって今回の相手は……
ザブーン!
背後で水飛沫が上がった。
赤い舌が水の中から伸びる。
私を狙っていた攻撃を、ちなっちが間に入って、切り裂いた。
微かにHPバーが減った。
「ありがとちなっち」
「いいってこと。でもさ、こいつがそうなのかな?」
「おそらくは。姿を見せなさい!」
Katanaは抜刀した。
すると水が途切れて、中から銀色でとげとげの甲羅をしたカメが出てきた。
舌先が釣り針のようで危ない。
アイアンタートル。ワニガメがモチーフのモンスターだった。
「二人とも気を付けて。いけっ!」
腰から〈波状の白星〉を抜刀すると、衝撃波を放つ。
するとカメは甲羅の中に隠れてしまい、簡単にガードされてしまう。
カキーン!
弾かれた。
私の攻撃がトゲ甲羅に弾かれて、返ってきた。
「あぶなぃ!」
「【加速】」
私に返ってきた衝撃波。
怯えた私を絶妙なタイミングで、ちなっちが助けてくれた。
あまりに速い。
スキル、【加速】を使ったんだ。
「ごめんね、ちなっち」
「うぃうぃ。全然大丈夫ー。でもさー、これで遠距離攻撃は駄目っぽいねー」
「そうだね。ちなっちのファイア系魔法は全部無理かも」
ちなっちは落胆した。
ずーっと炎系の魔法を組み合わせて戦って来たんだ。
ここで使えないのは、かなり痛い。
「如何しよう。これじゃあまともに戦えないんだけど」
「えー、如何しよう。私達の遠距離攻撃もねー」
「ではこうしましょう。行きます、龍蒼寺流剣術玖ノ型—氷柱突き!」
Katanaは【縮地】を使って、アイアンタートルの顔目掛けて近づく。
そのまま刀を突き出して、頭を狙うも、まさかの動きをされてしまった。
グルーン!
「えっ!?」
「まっ!?」
カメが高速回転を始める。
とんでもない速さだ。
目で追えないし、そもそも独楽みたいになっていて、近づくことすらできない。
「ですが、やるしかありません!」
Katanaはそれでも突き出した。
だけど、いくらなんでも硬すぎる。
鋼のような高度を誇る特殊な甲羅が高速回転をしていて、弾かれてしまい、Katanaはしぶしぶ顔を顰めた。
「だいじょぶ?」
「はい。ですが、左手がもう……」
「それは!」
私はとんでもないことが起きていた。
Katanaは、左手から血を流していた。
ゲームの演出で、少し落ち着いているけど、左手は痺れてしまい、まともに動かせない。
こんなことになるなんて。
それでもKatanaは、残った右手で刀を握り直すと、だらーんとした左腕を庇いながら戦うらしい。そんなの危険すぎるよ。
「Katana。一旦下がって、ここは私達で攻めるから」
「しかしそれではお二人が!」
「だいじょぶだいじょぶ。作戦は考えてるよ」
「スノーが万が一に備えてって言ってた」
「スノーさんが?」
こうなったのも、スノーのせいだ。
だから対策もばっちり。
私はインベントリから、丈夫な蔓を取り出す。
タマノハガネ蔓だ。
「それはこの間の!」
「そうだよ。これを使うんだよね」
「楔に打ち込んでっと。よーし、いつでも行けるよ」
「これでいいんだよね」
正直不安だ。
半信半疑だ。
私が偶然見つけたこの蔓の強度は一番身に染みて、知っている。
だけど上手く行くかはわからない。
それでもやってみる価値はあった。
私はちなっちを一瞬チラ見した。
すると目配せのタイミングが同じで、ニヒッと笑い合う。
変な笑顔だ。だけどそれを如何タイミングで合わせ、ちなっちは私と一緒に走り出した。
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