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■26 虹色マンゴー

 私は今、たった一人で山を登っている。

 理由は一つ、この山の上に生えるって言う虹色の輝きを放つマンゴー、虹色マンゴーを採りに来たのだ。


「うわぁー、結構高いや」


 腰の双剣が揺れる。

 白い岩肌に手を付き、私は周りの景色を眺めた。

 空がちょっとだけ高く感じる。

 こんな秘境に生息しているのがこの虹色マンゴーなのだ。


「おっ、見えてきた!」


 私の視界の先、そこには小さな森があった。

 山の上に森って不思議かも知れないけど、クエストだとこの森の中央に虹色マンゴーは生息しているらしい。

 しかもかなり背の高い木らしくて、なかなか入手出来ないのが悩みの種だとか。

 虹色マンゴーの納品クエストを出してくれたNPCは商人みたいだったけど、かなり高価なものらしい。

 すっごく甘くて濃厚。

 貴族の間ではかなり高値で取引されるものだと聞いた。

 貴族とか知らないけどねー。

 まあとにかくーー


「早く採って、パパッと帰ろ」


 私は少しだけ歩みを速めた。



 私は森の中に入った。

 モンスターの姿はなかったので、森の中央部にはすぐに辿り着いた。

 その上、目的の虹色マンゴーもすぐに見つかった。

 けど一つだけ問題があった。


「思ってた以上に高い木だなー。何メートルあるんだろ?」


 そこに生えていたのはもの凄く背の高い木だった。

 背が高いことは聞いていたけど、まさかこんなに高いとは思わなかった。

 ざっと10メートルぐらいはあるんじゃないのかな?

 その上かなり滑りそうだ。

 木の表面の樹皮を優しく撫でながら、私は感想を吐露した。


「コレ行ける?」


 流石の私でも無理かもしれない。

 自分を過大評価していないけど、そこそこ木登りには自信があった。

 けど流石にこの高さ。

 そしてこの滑りやすさ。

 どちらを取っても難しいことは必須だった。

 けどまあやらないとは言ってない。


「さーてと、さっさと採っちゃお!」


 肩と二の腕を伸ばす。

 腕を背中に回し、軽くストレッチをした。

 屈伸。

 それからアキレス腱を伸ばしておく。

 ピンと伸ばした爪先。

 最後にふーっと大きく息をゆっくり吐くと、私は双剣を外し、木に指をかけた。


「うん。行けそう」


 確かに滑るけど、足と太腿。それから指先を窪みに入れれば何とか登れそうだ。

 私は勝機を見出したかのように、口元を上げる。

 それからゆっくりと枝に手を伸ばし、時にはほんの小さな凹みに指を入れてよじ登ってみた。


「よいっ、ほいっと」


 ボルダリングの容量で登っていく。

 ボルダリング何てやったことないけどね。

 でも昔から木登りは得意な方だったので、あんまり苦労はしなかった。おまけにスキル【木登り】まで獲得してしまった。

 おっ、めっちゃラッキー!


「あー、ちょっと遠いなー」


 枝から枝へと飛び移るのが難航した。

 落ちたら多分死んじゃうだろうし、またもう一度山を登り直すのも癪だった。

 出来るだけ腕を伸ばし、体をゆらゆらと揺らして勢いと慣性を付けて思いっきり飛んだ。

 そんな危なっかしいことを連続して繰り返し、ようやく片手がマンゴーに届く。


 ブチっ!

 マンゴーが手に収まる。


「よーし、これでクエスト完了っと」


 私は虹色に輝くマンゴーを手にした。

 充実感に浸る中、私の視界には山と一面の緑が飛び込んできた。


「うわぁ結構高い」


 下を見るとかなりの高さがある。

 私は虹色マンゴーを採ると、そのままゆっくり降りようとした。

 しかしそこで私は足を踏み外した。

 踏み外したと言うか滑ったのだ。

 何とか木に手を伸ばしたけど、体重を支えきれずそのまま地面に落下する。


「嘘っ!マジですか!」


 私は地面目掛けて落下する。

 不安定な体勢だ。

 このままじゃ確実に死ぬ。


 そう思った私は出来るだけ受け身の体制を取った。

 柔道みたいな受け身のやり方じゃ殺しきれない。

 もっと体を丸めて指先から全身にかけて、痛みや比重を全て地面に流すぐらいじゃないと無理だった。

 ああ、こんなことならインベントリを無理にでも開いておくんだった。

 体勢が体勢だっただけに、インベントリを開く余裕なんてなかったのが手痛く響く。

 奥歯を噛み締め、私は指を伸ばす。

 地面が迫ってきた。

 一か八か。現実なら絶対出来ないことをやるしかない。


「せーのっ!」


 私は指先から地面に触れた。

 そしてそのまま頭跳ね起きをする。

 普通に考えたらまず無理だ。

 しかしながらヘッドスプリングが成功したのは意外だと。何で成功したんだろ。

 私の体はヘッドスプリングを成功させたことにより、無事地面に激突せずに済んだ。代わりに頭が痛かった。


「痛たたた」


 頭を押さえる。

 しかし何とか無事だ。HPもあんまり減っていない。

 私は直前で手放した虹色マンゴーを拾い上げ、即座にインベントリにぶち込む。

 そして私の視界にはウィンドウが展開された。

 新しいスキル、【受け身】を獲得したらしい。

 いや、今あっても遅いからね!


 内心では文句をたらたら吐きつつも、何とかクエストを無事に完遂出来たことを心からほっとした自分がいたのだった。

 それにしても今日はあんまり面白くなかった。

 やっぱりマナやスノー。私は皆んなと遊んでいる方が、気楽なのだと改めて気付かされるのだった。

 


 



【簡単なキャラクター紹介】

南千夏:ちなっち

15歳の高校一年生。

愛佳の中学生からの親友。

運動神経がずば抜けて高く、初めてやるスポーツでもそつなくこなしてしまえるほど。

その運動能力の高さから“異常”と言われている。

数学以外の勉強は苦手。


ステータス(現在 ※覚えている限り)


 ネーム:ちなっち

 種族:〈エルフ〉

 レベル17

 HP:75

 MP:60


 STR:29

 VIT:30

 AGI:65

 DEX:32

 INT:45

 LUK:30


 装備品

 体:〈火の粉のローブ〉

 服:〈赤の長袖〉

 足:〈革のショートパンツ〉

 靴:〈俊足のシューズ〉


 武器

〈普通の剣〉〈鋼鉄の剣〉


 スキル

【加速】【受け身】【木登り】


 魔法

〈フレイム・オブ・エンチャント〉


 称号

『同レベル帯最速保持者』



 

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