■255 サクラヅカ
また新しい町。
こっちは十二月だけど、現実でも暑いけど、皆んな大丈夫?
ここは少し涼しい。
それもそのはず活火山から離れた場所にある。
〈ヴォルカニカ〉から、二十キロの地点にあるのが、ここだった。
「ふわはぁー。涼しいなー」
「涼しいとは言っても二十五℃は超えているぞ」
「そう言うこと言わないの。せっかくの気分が台無しだっつーの!」
「すまない」
スノーのとんだ一言で、ちなっちが怒った。
でもそれを言われると暑いんだよね。マグマの熱さとは比じゃないぐらい軽いけど、やっぱり暑い。
私達の額から汗が零れた。
「まさかここまでとは思わなかったがな」
「ですがかなり過ごしやすいですよ」
「だよねー。野菜もこんなに育ってるねー、タイガー」
Katanaに煽られ、ちなっちがタイガーに風を送る。
するとタイガーは畑を見ながら、うっとりした顔になっていた。
「タイガー?」
「火山灰を利用した作農方法。かなり良い」
「効率が?」
「ううん。地熱を活かしたって言えばそうだけどね、火山灰を肥料として利用するなんてかなり良いよね」
実際のところ私は詳しくない。
だけどスノーが同調してくれたので、何となくその強みが理解できた。
凄みって言うのかな。何だか生き生きしている。
「サクラヅカ。ここにはチェアリア火山から噴き荒れる火山灰が定期的に届いている。そのためこの火山灰を利用しない手はない。そうしなければ、この地は終わっていた」
「そんな言い方って。確かに長閑な村だけど……」
「こんなに畑が大きいんだよ?」
サクラヅカは長閑な村だ。
平地にあるので、火山灰の積もる速度が尋常じゃない。そのせいで常日頃から火山灰が積もる。
だから火山灰を肥料に混ぜて使っているそうで、有効活用が凄い。
実際に火山灰を利用した農業はあるらしく、メリットとデメリットが激しい。
メリットとして、火山灰土壌とかなんとか言って保水性と通気性がいいらしいが、デメリットの生育不良もある。
そのせいで長年苦しめられてきた地域もあるそうだ。
「でも避暑地って感じがしていいよね」
「確かに長閑ではあるが結局暑……なんでもない」
今度は空気を読んで口をつぐんだ。
でも言いたいのは分かる。結局暑いんだもん。
「いやぁー、よくやってくれるわい。若いもんが手伝ってくれると助かるのー」
「いえいえ」
畑作業をしながら依頼主のお婆さんが話しかけてくれた。
この人はNPCで、私達は報酬目当てでこの村にやって来た……わけじゃない。たまたま依頼を受けたんだ。
「Katana。巻き割りは終わった?」
「はい。スノーさんは?」
「もちろん釣ってきたぞ」
「そっかぁー。私の方もほら!」
収穫したウサギ肉と鶏の卵を見せた。
ちなっちの手にはビワ。それからタイガーはニンジンやジャガイモを抱え込む。
「これで後は……」
「ごちゃ混ぜシチューを作るんでしょー」
「正解だぜ。じゃ、ぱぱっと作りますか」
タイガーは集めに集めた食材を使って手製のシチューを作り始めた。
今回のクエストはお婆さんとシチューを作ること。指定された食材はないけれど、タイガーが本気になってしまい、最高の食材を集めていた。
そのおかげで例えば私の持ってきた鶏は、七輪鶏だし、ちなっちの持ってきたのはカジュウビワ。スノーの何て、アオイカワ。タイガーが涎を垂らすぐらい美味しいそうだ。
でも、
「こんなに食材集めたけど、本当に全部使うの?」
「もちろんだぜ。俺はせっかく集めてもらった食材は無駄にはしねぇ」
「そ、そっかぁー。頑張って」
「おう!」
タイガーは大鍋に向き合った。
Katanaはその間も薪を割り、ちなっちはお婆さんとお話に興じる。
「いやぁー、若いもんはいい。あたしも若い時は……」
「へぇー。この辺も昔は人で賑わってたんだぁー」
「そうだよー」
それからスノーは周囲を一望する。
一体何をしてるのかな?
「スノーは何してるの?」
「この地形だ。高台でもない。窪地でもない。ここまで平らだと、大変だろうと思ったんだ」
確かにそれもそうだ。
私はポンと手を叩く。
「サクラヅカってさ、何処に桜があるのかな?」
「なんだそんなことか。それなら見てみろ」
「えっ?」
私は謎が残った。
スノーは村を一望しながら教えてくれた。
「ここ自体が桜だ。チェアリア火山から噴き出る火山灰が降り積もる墓場塚。それがこの村の名前だ」
「そうだったんだ。でもよく知ってるね」
「考えれば分かる」
いやいや考えても分からないよ。
私はポカンとしていたが、スノーが戻ったのを見て私も戻る。さてと、どんなシチューになってるか楽しみだなぁー。
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