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■254 ノースの練習①

今回はノースが普段からしていることだよ。

 高坂家は広い。

 その別館には当然のように道場があるが、そこにいるのはこれも当然のようにノースとクロノアだった。


「せりゃぁ!」

「上手ですよ、ノース様。ですがまだ詰めが甘いです」


 クロノアはノースの両手で振るう鎌を、全く同じ大きさの鎌で動きを封じ、そのまま弾き飛ばした。


「うわぁっ!」

「終わらせましょうか、ノース様」


 ノースは小さく叫んだ。

 クロノアによって手首を鎌ごと捻り回され、そのまま手前に引き寄せられていたのだ。

 しかしノースもただではやられない。

 手前に引き寄せられたのを受け、鎌の持ち手から瞬時に突き放し、鉄棒の要領でクロノアに蹴りを食らわそうとするも、


「ノース様。それはあまりに単純です」


 ノースの足首は簡単に取られ、畳の上に叩きつけられた。

 これでも親愛するクロノアの主人だ。手加減に手加減を重ねている。

 それに加えて、ノースは別段戦闘が得意でもない。クロノアには全く効かなかった。


「ぐはぁっ!」

「はい、ノース様。これにて終了にごさいます」

「そこはお前らしくないな」

「ではチェックメイトにございます。よろしかったでしょうか?」


 プクッと頬を膨らますノース。

 何だか釈然としない。

 完全に遊ばれていたことに腹を立てていた。


「はぁー。やはり私じゃ勝てないか」

「そんなことはございません。適材適所と言うものがございます。しかしっ先程みたいな胆略的な手法はいただけませんね」

「悪かった」

「謝らなくても構いませんよ」


 ノースは目を閉じた。

 それにしても滅入ってしまう。しかしノースの凄みをクロノアはよく知っていた。

 そのことを懐かしく思うように口ずさむ。


「それにしてもあの時は本当に目に見張るものがありました。まさか高坂家が危うくなった際、一切の金銭と権力を持っていなかったにも拘らず、一夜にして数百億を稼がれてしまうなんて」

「そんなこともあったか?」

「ございましたよ。まさかお忘れになっていたとは。恐れ入ります」


 クロノアが口にしたのは過去のこと。

 一時期高坂家が他社の策略で経営が傾いたことがあった。しかしノースはたった一人で、しかも一夜にして金銭も権力もなかったにも拘らず、真っ当な手段で数百億を稼ぎ出したのだ。

 故にノースはお金に捉われずにいた。

 富と名誉の二つを密かに得たが何とも思わないのは凄まじい神経をしている。


「そう言えば、ノース様は何故このようなことを?」

「このようなことって」

「鎌による戦闘。こんな訓練が必要でしょうか?」

「それは分からないが、無駄に時間を持て余すよりはマシだろう」

「流石です、ノース様」


 クロノアは片付けながら、話し出した。

 ノースの研究は凄い。それをクロノアは知っている。その中でも特に秀でているものは……


「あの時ノース様に雇われ、そして命を失ったあの日。一度失った人生を補完してくださった貴女様のことを私は尊敬しております。この身は貴女のために」

「悪いがそんな気持ちの悪い宗教はやっていないんだ」

「はい。これは私からの敬意です」


 クロノアはにこやかに微笑んで見えた。

 赤みがかった瞳がぎらつく。怖い。


「ノア、あまり深く考えすぎるな。目の色が怖いぞ」

「そうでしょうか? 失礼しました」


 クロノアは力を抜いた。

 すると瞳の色が元に戻る。


「ノアは楽しそうでよかったな」

「はい。こうしている時間も私にとっては快楽の一つですから」

「……キモい……」


 ノースは眉根を寄せた。

 顔を顰めて、訝しむ。


「さてと部屋に戻るか」

「お待ちください、ノース様。この後のご予定ですが……」

「真面目だな。まぁいい。だが、私は会談には参加しないぞ。あれは息が詰まるからな」

「いえ、学校側からの課題は……」

「やった」

「ではピアノは……」

「上々」

「では……何もありませんね」


 クロノアはパタンと手帳を閉じた。

 ノースは既にやることをほとんど終えていて、時間に余裕があった。かなり暇だ。

 クロノアはメイド長として家事を始め、ほとんど終わらせていた。故に、


「では私と何処かにお出かけしますか?」

「そうするか」

「ではバイクを出しておきます」

「頼む」


 二人は天才だ。

 それは色々な意味で天才的な力量を持っていて、それはその界隈だと他を圧倒するほどのものだった。

 しかしかなり暇を持て余し、その結果、今回のようなことが頻繁にある。


少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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