■249 朱雀の炎翼
朱雀の武器。それはつまり……
炎に揺らめく桜の木。
私らしくはない感想だけどさ、“幻想的”だった。
それはそれは巨大な桜の木で、目を奪われる。花弁は周りを覆う大木の壁と、合間から覗かせる炎の揺らめきが目のレンズを感化する。
「桜の木が本当にあったんだ。でもなんで……」
なんでこんなマグマの中に生えているんだろ。
しかもこの炎、ただのホログラムだしさ。でもさっきはハチャメチャに熱かった。だって死んだもん。
それだけは確実に覚えているし、精神的にも擦り込まれた感があった。
まぁ私は気にしないけどさ。どうせこっから戻るには炎を死ぬ気で突っ走るしかないもんね。
「でもさ、なんで私をここに呼んだの?」
私は不思議に感じた。
だって明らかにこの赤いスライム、私をここに連れてくるために落ちたみたいだった。しかも私が先頭にいたことを理解していたみたいだ。変だよ。
でもなんでかな。頭がグルグルしてきた。考えられないよ。
「頭が痛い。って、何処行くのさー」
私は頭を押さえながら叫んだ。
別に頭が完全に破壊されるほど痛いわけでも病気でもないんだけどさ、これ以上深読みは危険っぽい。それを促すみたいに、スライムは跳ねまわした。
ポヨーン! ポヨーン!——
こっち来いって言ってるみたいだ。
私は頭をぶんぶん乱暴に振り回し、スライムに付いて行くと、
ポヨーン! ポヨーン!——
「えーっと、これって剣だよね? しかも双剣じゃないのー!」
桜の木の根元。
そこに置かれていた奇妙な台座。突き刺さっていたのは同じ丈の剣が二本。見た目も完全に同じで重さも同じそうな双剣だった。
しかもこのスライム、私に抜いてと言ってる。
それになんでだろ。私の手は自然に双剣に伸びて、抜いていた。
ポンっ!
スッと抜けた。
あまりに力が要らなかったから、呆気に取られた。不意に転びようになったよ。
「えーっと名前は……朱雀の炎翼?」
あれ、どこかで聞いたことあるよなないような。
そうだ。確か朱雀ってスノーが言ってた、この間の床に描いてあったイラストだよね。確かにそれっぽい。知らんけど。
「えーっと、どれどれ……ん?」
〈朱雀の炎翼〉
レア度:レジェンド
説明:伝説の守護獣、朱雀の力が宿っているとされる伝説の武器。
世界にたった一つしか存在しておらず、選ばれた者にしか抜くことが出来ないと言われている。
所有者に無限の勇気と飛翔する燃え尽きない翼を授けると言われている。
「ふぅーん……はぁ?」
流石の私でも頭を抱えて首を傾げる。
だってこのありきたりなネタ切れ間のあり名前とか、ここに来ての意味不明な文言の数々。私は呆れることはほとんどしないけど、流石に理解できない。
でもなんでだろ。
凄く馴染む。それに見た目はカッコよかった。
剣の鍔の部分は朱雀の頭を模していて、それから刀身の部分は翼のようだった。
〈赫灼相翼〉とは違ってワイヤーで繋がってはいないけど、二対一刀って感じがして好きだった。
「まぁいっか。私のだしさ。で、これでいいのかな?」
私はスライムに話しかけた。
しかしそこにスライムの影はない。さっきまでずっとポヨーン! ポヨーン! と弾みながら私を待ってくれていたのに、何でだろ。
もしかしてさっきまで見えていたものは私に見ていた幻? 確かにここは炎のエフェクトが絶えず出ていて、そのせいで私の目が陽炎に飲まれたのかも。
でも違う。だってさ、ずっと一緒にいたはずだもん。私の手の中には確かな柔らかい官女区があった。それなのに、
「もしかして私をここに呼ぶためだけに?」
そう考えたら納得がいく。
だけど深くは考えない。そんなの私らしくないもん。
「よし、帰ろう」
私は引き返すことにした。
でも本当に帰れるのかな。桜の木を後にして、大木の亀裂を抜ける。
それから炎を目の前にした。
「多分ここから落ちてきて……どっちに行けばいいんだろ」
適当に炎を触ってみた。
しかし熱い。越えれるとしても流石に熱すぎてダメージ覚悟になる。
「うーん、如何しよう。そうだー!」
私は今手に入れた剣を使ってみることにした。
双剣を構え、適当に振りかざした。
「そりゃぁ!」
炎の壁が崩れた。
マグマをかき分け、炎の切れ目に飛び込んだ。熱い。だけどさっきとは違う。
まるで炎の中に溶け込むみたいに、体が奥の方から高鳴って全然平気だったんだ。
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