■247 回り道は危険な道
はい今日は、例の回ですよー。
結局私達は下山することにしました。
原因は火山を舐めていたからです。
だけどまさかここまでとは思わず、私は口を滑らせた。
「如何したらいいのかな?」
「とりあえず防熱対策は必要だな」
「薄着にするの?」
「馬鹿言うな。ただの暑さじゃないんだぞ」
スノーはちなっちの冗談にもすぐさま食らいつく。
イライラしている犬みたいだ。
だけどそれも何となく解るなと一人でに納得してしまった。そんな中、
「おいおい、何だよあれ!」
タイガーが訝しんだ目で前方を睨んだ。
見れば明らかに道が塞がれている。大きな大岩が、来た時にはなかったはずなのに脇道を誘うみたい。
「明らかに自然の影響ではないな」
「ってことは人為的ということでしょうか?」
「それは分からんが、少なくともこっちに聞けと言うことらしい」
「こっちって……」
「めちゃめちゃ細いけど」
この火山に入るにはいくつかのルートがある。
基本的に繋がっている部分は多くないが、そこに行くまでに複数の細道が張り巡らされていた。スノーいわく、動脈と網脈みたいな関係らしい。
「仕方ないね。こっち行こっか」
「そうだねー。こっちしか道ないんじゃ行くっきゃないよねー」
ちなっちはノリノリだった。
この状況を楽しんでいる。それができるのはちなっちのメンタルあってのことだと私は知っていた。
チームのムードメーカー。でありながら、決めるときはびしっと決める。率先して危険な役割を担う傍ら、まるで鉄砲玉みたいな作戦と、それを軽くやってのける身体能力。まさにチーム一の度胸の持ち主なのは誰が見ても過言ではない。
そんなちなっちは今日も道を照らすみたいに先を切り開く。
〈赫灼相翼〉を意味もなく抜き、目印のように掲げていた。
「はいはーい。それじゃあレッツゴー!」
「相変わらずだな。お前は」
「でもそれがちなっちだよ」
スノーも分かっている。
故の皮肉だってことも笑い話にできた。
結局細い細ーい脇道を進むことになったマナ達。
つい右に視線を横切れば、そこにはふつふつと煮えたぎるような真っ赤なマグマが広がっていた。何でこんな下流に流れてるんだろうね。マナは疑問視した。
「そう言えばさっきから登ってない?」
「そうだ。この道は一度登る必要があるんだ」
スノーの言っていることは間違っていない。
マナ達は山を迂回しながら登っていた。とんでもなく危険な道のりだった。
「あはは。落ちたら死んじゃうかもね」
「もう冗談でもやめてよ!」
「ごめんごめん。でも大丈夫でしょ。これ、ゲームだし」
ちなっちは笑っていた。
しかしスノーが不気味に呟いた。
「それは如何だかな」
何故だろう。空気がひりついて一変。マナ達は唐突な冷気に凍てつくされた。
しかしその理由を口にする。
マナが発端だ。
「ど、如何言うこと?」
「聞きたいか?」
「う、うん」
「そうか。VR空間はあくまで視覚的、聴覚的な働きだけではない。神経を繋ぎ、生体電気に干渉し、あまつさえ脳波に直接的に呼びかける。つまり私達が感じているものは現実のそれとほとんど変わりない。何故かは分からないが、私達はその感受的能力が常人を逸しているが故に、痛みを含む痛感もはっきりしている。それはつまり……もう分かるな」
「えーっと、マグマに落ちたら死ぬってこと?」
「そこまでではないにしろ、現実的ではない感受的ダメージを受けることになるだろうな」
体が硬直した。骨が軋み、頭がくらくらする。しかしちなっちは平然としていた。
「あはは。そんなの関係ないって」
「ちなっちは怖くないの?」
「もちろん怖いよ。でも楽しいじゃんか!」
「楽しい?」
「うん!」
ちなっちは呆れてしまうほどやさしい。
私に手を差し伸べる。マナはスッと手を伸ばすと、体を引き寄せられた。
「大丈夫。私達は弱くない」
「なにそれ」
良いこと言ったつもりが意味が分からなくなった。
けれどだからこそのちなっちなんだ。
私は先頭を歩いていた。
あの細い脇道ももうすぐ抜ける。それにしてもスノーも変な話をした。私は信じないけどさ。
そうこうしているうちに先が見えてきた。
私は皆んなに知らせようとする、がそんな時ふと視界に飛び込んできたのは……
「あれは……」
「何かいるの?」
マナが私に聞いた。
背中で見えないのかな。先に見えるのはこんなところで珍しいスライム。しかも赤い。チェリー味のゼリーみたいだった。美味しそう。
「ううん。なんでもないよ」
「そう?」
「うん……ヤバぁ!」
私がふと視線を前に戻した。
するとそこにはまだスライムがいたけれど、不意に地面が崩れてスライムが投げ出された。
それを見た私は何故か体が咄嗟的に動いていた。
「ちなっち!」
「皆んなは先に行って」
何でだろ。如何してだろ。訳も分からない。
しかし体ははっきりしていた。
私は崖から飛び降りてスライムを抱きかかえる。しかしそれは……
「ちなっち!」
「あっ、これヤバくね?」
背中が熱い。
煮えたぎるように熱いよ。
「如何して私……」
ゆっくり炎が迫る。
背後に視線を移す勇気はない。流石にそれは目が痛い。マナ達の声が遠くなる。これが痛覚の伝達。死ぬ……はっきりと理解した。
でもよかった。これがゲームで。
でもさ変だなー。スライムには痛覚がない。だけどぬいぐるみみたいにギュっとしたのに全然逃げずにいたままで、私はマグマの中にダイブしたのが感じられた。
それから、私の意識は——
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