■245 チェアリア火山
今回はほぼほぼ完全俯瞰エピソード。
〈ヴォルカニカ〉を含むこの大陸には多くの火山が存在する。
その中で特に広大で、高温を放ち続けるのがここ〈チェアリア火山〉だった。
「いよいよ行くんだね。暑そうー」
「まぁ暑いだろうな。気温というより、熱で熱いはずだ」
「どっちでもいいー。とにかく早く行こ!」
「待ってよちなっち。って、熱い!」
マナの腕が近くの岩に触れた。
熱い。つい火傷しそうになるが、急いで水をかけたのでややで済んだ。でも痛い。
「大丈夫か?」
「うん。でもこんなのが続くんじゃ、しんどいよね」
マナは顔を顰める。
するとスノーは軽く頷き返し、
「確かにな。だがこの大陸を渡り歩くには火山は必須項目だ」
「そんなーってやるしかないんだよね」
「一応回り道はできなくはないが……」
「遠回りってことだろ」
「そうなるな。もっとも遠回りしてもどのみち高温しかないんだ。それにこう言った火山の近くには温泉があるのが鉄板」
「温泉ですか! いいですね」
まさかと思った。この話題に一番食いついたのはKatanaで、キラキラした綺麗な瞳を見せる。
意外に思ったのか、マナ達は固まってしまったが、こうしている間も暑い。暑いということは頭がぼーっとして考えが回らない。
そこでタイガーが気を張ってくれた。痺れを切らしたんじゃない。マナはそう思った。
「とにかく暑いからもう行こうぜ。こんなことしてても意味ねぇからな」
「そうだね。じゃあ皆んな行こっか!」
マナは声を掛けた。
するとちなっちが先頭を切ってくれて先を行く。その後を二人が続き、マナとタイガーは最後に残った。
そこでマナはタイガーの耳元で、
「ありがとタイガー、気張ってくれて」
「ううん。本当に暑かったから」
「ごめんね」
私しんみりしてしまった。しかしタイガーは首を横に振ってくれる。
マナとタイガーは三人に遅れないよう、急いで火山に入った。
◇◇◇
私達は火山の中に入った。
とは言っても別に火口の中に飛び込んだわけじゃない。火山を登っていたといった方がいい。
その上、
「結構な急斜面だね」
「そうだな。ここまで傾斜がきついとなると、スパイクの方がよかったかもしれない」
「確かにそうかもしれませんね。私も靴を変えて正解でした」
Katanaも今日は草鞋じゃない。
だけどいつもよりも間合いの取り方が鋭いのは気のせいだろうか? いや違う。私は明らかにそう確信を突いた。
「タイガーは大丈夫?」
「なにがだよ」
「いや、その格好暑くないのかなー、なんて」
マナは苦い笑みを浮かべた。
その理由は明らかで、
「まさかこのマフラーのこと言ってるんじゃないよな!」
「いやそれしかないだろ」
「おい!」
タイガーは吠えた。
しかし何の迫力もない。だってタイガーのマフラー白くて暑そうで、何の説得力もないんだからさ。
だけどタイガーはムッとした顔で、私達を睨んだ。
「そういうマナの方が暑そうだぞ」
「そんなことないって」
「いや、前々から思っていたが暑そうに見えるぞ」
スノーにまでそんなこと言われるなんて。
でも確かに暑い。前は砂漠でも耐えられたのに。やっぱりコートは不憫なのかな?
「あの……」
「如何したのKatana?」
「何故常に黒い面を外にしているんです?」
あっ!? 確かにそうだ。
前は白い面を表にしていた。そのおかげで熱に対応できていたのに、すっかり忘れてたよ。
私は一瞬の高熱にうなされて、体がふらついたけれどすぐに白い面を外にした。すると急に熱を反射して涼しくなる。
「うわぁ!? 過ごしやすい」
「いいなー。私もそう言うの欲しい」
ちなっちが指をくわえた。
多分本人はそんなこと思っていないはずだ。だけどスノーはちなっちの首に巻かれた赤いスカーフを見返した。
「お前もこの空間も平気だろ」
「えっ!?」
「ほんとだー。何で汗の一つも掻いてないの?」
私は気になった。
しかしスノーはスカーフを気にしていじりだす。確か名前は、〈火の粉のスカーフ〉だっけ。
「それのは火耐性があるからな。火山はテリトリー範囲のはずだ」
「確かに!」
それで汗を掻いてないんだ。
最近武器にばかりお金かけていたけど、少しは防具にもお金かけるべきかも。私はともかく……
「なんだよ」
「なんでもないよ」
スノーをじっと見ていた。
しかめっ面で返されたのは意外だけどね。
少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。
下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)
ブックマークやいいねなども気軽にしていただけると励みになります。
また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。




