■237 九つ町の大陸
いろいろ大陸が見えてくる。
ちょいと黄昏れるshineさん。
サンライト号はクラーケンに絡まれ、海水をひたひたに浴び、猛暑をくぐり抜けてようやく大陸が見渡せるようになった。
船の先頭で遠く水平線に浮かぶのは巨大な大陸の一部分でしかない。しかし、それを見据えただけでも高揚感は高まるのも仕方がない話だった。何て、そんなのは建前で本当は嬉しくて鼓動の高鳴りを聞いてるだけなんですけどね。
「見えてきたね」
「shine!」
隣にやって来たのはshineだった。
なびく髪を手で押さえ、整えている姿が美しい。流石はモデルさんだ。
「綺麗なところだね。あの大陸に九つも町があるんだってね」
「九つもあるんですね」
「うん。でも話だと、小規模な小さな町や村もあるんだって」
「おっきな大陸だねー」
確かにちなっちの言う通り。それだけ聞くと、さっきまでいた島々と比べると全然違う。
〈リムルト〉や〈ミヤビ〉みたいなしっかりとした町が多そうだ。なんだか楽しそうでわくわくする。
「私たちが目指しているのはヴォルカニカだ。ちょうど、向こう側だな」
「ヴォルカニカってことは、ちょうどあの火山辺りだね」
「そうだな」
スノーは淡々と話した。
ヴォルカニカってどんな町なんだろ。きっと調べに調べつくしているだろうが、結構気になる。
「そう言えばこの船ってどこに向かってるんですか?」
「えっ!? 知らないよ」
「「はい?」」
私とちなっちは声を揃えた。だけど当の本人は大真面目で、一体どこに向かっているのか。
憐れに思ったスノーは溜息交じりに答える。
「この船の進路はちょうどフクノテだな」
「フクノテ?」
「大きな港町だ。それ以外だと、食べものが有名か」
「食べものかー」
shineは天を仰いだ。
すると話を聞きつけたタイガーが何故かイズチを連れてやって来たけど、完全に絡まれてるよ。可哀そう?
「フクノテと言えばやっぱりフクノテ丼かなー」
「フクノテ丼?」
「そうそう。中身は確か、フクテタコのてんぷらを添えたやつだったかな。旨そうだよな」
「食べたいぜ。なぁ、勝負したら食べに行こうぜ!」
「いや、お前とは行きたくないな」
タイガーは顔を顰めるとしわくちゃにする。
しかしイズチは目げないのだ。
「えー、いいじゃんか行こうぜ!」
「お前と行ったらどうせ勝負になるだろ。俺はご飯は美味しくゆっくりじっくり食べたいんだよ」
「はぁー?」
イズチは眉根を寄せる。
でもさ何となくわかった。タイガーは本当は臆病で優しいからね。それにご飯にはとにかく真剣だった。だから勝負みたいなのはしないんだろう。
「ふぅーん。私たちは何処に行くのかな」
「決まってないんですか!」
「もちろん。私だよ」
「「「た、確かに」」」
この場の全員がポカンとしていた。
むしろ納得。shineはとにかく楽しんでるみたいだ。
「そろそろ着くぞ」
バーサーカは呑気にしている私達に声を掛けた。
そこで気を取り直し降りる準備に入った。
◇◇◇
サンライト号は港に着いた。
「まさかこんなあっさり停められるなんてね」
こんなに大きな船舶が港にやって来たら、普通驚く。
だけどそれはそうだ。しかし何も連絡してないはずなのに、停められるなんて驚いた。
「まさかだよねー」
「そうですね。ですがこの船はどうするのでしょうか?」
Katanaは気になった。
そこでshineは私達の話を聞きつけ、教えてくれた。
「うーん、この近くの停泊上に預けよっかなって」
「そうなんですか」
「うん。私達も少し冒険したいんだー」
shineは楽しそうに答えた。
しかし遠くにいるバーサーカは船の件で忙しい。生徒会長なのに副会長に任せきりだ。
「じゃあ私達は先行くねー」
「シュトル!」
シュトルたちはさよならを言いに来た。
どうやらこの後はこの大陸を自由に回って面白い場所を探すらしい。さらにみーさんも船酔いから解放され、ぺこりと挨拶をする。
「それじゃあマナちゃん。また今度ね」
「もう平気なの?」
「うん。ごめんなさい。クラーケン戦の時は何もできなくて……でも次はちゃんと手伝うから!」
みーさんはやる気十分。
別にそんなこと誰も気にしてないのに、そんなこと言わなくてもいいのにさ。
「じゃあねタイガー。今度は真剣勝負、しようね」
「したくないんだけどな」
「しようね」
「あのっ!」
タイガーはむずむずしていた。
頑張って断ろうとするも、イズチはしつこい。しかしムジナさんがやって来て、
「おい止めろ」
「何するのさムジナ」
「嫌がってるだろ。悪かったな、タイガー」
ムジナさんはイズチの耳を引っ張った。
タイガーはそんな光景を直に目の当たりにして固まる。さっきから、「あっ、えっと、あっ」ってあわあわしていた。
「ほら行くぞ」
「あー、ムジナ引っ張んないでって。痛い、耳引っ張んな!」
ガチでキレそうだった。だけど扱いに非常に慣れたムジナさんには手慣れたもので、意味を成さない。ムジナさんは遠くに向かうまでの間、ずっとイズチの耳を引っ張り続けていた。
可哀そう。そんなことを思うよりも、何故だろう。憐れみを込めた目を向けてしまった。
「よかったのかな?」
「うーん、いいんじゃないの?」
「そうだな。私達も行くぞ」
何か話が噛み合わない。
しかしタイガーは、
「悪いことしちゃったかも」
と呟く。
だけどそんなタイガーを宥めた私達は、早速町を目指して歩みを進めた。
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