■236 天を仰ぐ刀
ついに披露する、最強クラスの刀。
Katanaはインベントリから何かを取り出した。
それは刀のようだけど、見たこともない。龍を模した装飾が施され、まるでマナの持つ〈麒麟の星雫〉のようでもある。
「Katana、それは!」
「申し訳ございません。以前手にしたものの、身に余ると思い使うのを控えておりましたが、今は使わざるおえません」
マナの問いかけに対し、Katanaの口調は早口だった。
しかしすぐさま納得すると、Katanaは青龍の刀を一振り天高く掲げた。
「青龍の華雨! 頼みます」
すると眩い閃光が迸った。
Katanaが掲げる〈青龍の華雨〉を中心に、雷雲が変化した。大粒の雨が槍のように降っていたはずが、かき消されるみたく太陽が照り始めた。
「おいおいどうなってるのさ。何で急に晴れるんだよ!」
「分からない。だけどこれは……」
どんどん日差しが強くなる。
青空が雲の間から覗くも、その熱量は常在を超えていた。つまりは……
「あ、暑い!?」
「何だこの熱量は……Katana!」
「私は大丈夫です。皆さんは早く船内へ!」
マナ達が汗をダラダラと流す中、Katana本人は汗一つかいていない。
それどころか〈青龍の華雨〉は天候を操作して、海水まで蒸発させ始めた。あまりの速度に、クラーケンはその姿を露わにする。
「クラーケン。お覚悟を」
Katanaは苦しみながら暴れるクラーケンを飛びかかった。
それから〈青龍の華雨〉を振り払った。
「くっ!?」
脚を一本切る。
しかしクラーケンもただではやられてくれない。口から墨を吐き、Katanaは浴びた。すると熱がこもり、顔を顰めるも〈青龍の華雨〉はKatanaだけを雨で冷やして、墨をのぐい落とした。
「Katana!?」
「やはり一人では厳しいですね」
そう答えると、船内から二本の矢が放たれた。
鉄製の鏃。まさかと思うと、スノーとシューネが撃ったもので、それを見るや否や、マナもインベントリからある剣を取り出す。もちろん、あれしかない。
「私も行くね!」
「マナ!?」
マナが取り出したのは〈麒麟の星雫〉。
久しぶりに使われたことで剣は喜んでいるみたいだ。それからあまりの暑さをものともせず、〈麒麟の星雫〉はマナを守る。するとクラーケンに飛びかかり、切り付けた。
「そりゃあ!」
「マナさん!?」
突然真横に現れたので驚いた。
しかしマナはKatanaに伝える。
「行くよKatana! 一気に決めちゃおう」
「分かりました!」
マナは剣を構えて技を放つ。
Katanaも渾身の一撃を放つため、刀を構えた。
「《スターライト・エンド》!」
「“五月雨蓮華”!」
二人の技はまるで違った。
しかしその巧みな連携により、クラーケンの脚を“五月雨蓮華”で全て切り伏せ、本体を《スターライト・エンド》が貫いた。
クラーケンはぐったりして倒れた。
光の粒子に変わり、経験値になる。
全員に等分した経験値が送られると、レベルがアップした。
「凄い、こんなに大勢でやったのに!?」
「それぐらい強いモンスターだったというわけですね。確かにそう思いましたが」
「でも勝ててよかったね」
「はい!」
マナとKatanaは互いに褒めあった。
それから笑顔になるも、二人の様子を心配したスノーが叫んだ。
「おいお前達、早くそこから離れろ!」
「「えっ!?」」
二人はスノーが言っていることを理解できなかった。
しかしすぐに察した。クラーケンを倒したことで、海面の水が上昇。大きな波が起きて、二人の体を飲み込んだ。
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」
「ヤバいよ。早く助けないと!」
突然のことで流石の泳げる二人も上手くは泳げないでいた。
波に飲まれて沈もうとする。何とか顔を上げて息を吸い込むが、暴れ回って大変なことになっていた。
慌て出す船内。しかし、
「掴まって!」
空から手が伸びる。
それはシュトルとブリッツさんのものだった。
シュトルの手を掴んだマナ。ブリッツの手を掴むKatana。二人は引き上げられて船内に戻ってきた。
「はぁはぁはぁはぁ」
「大変な目に遭いましたね」
息を荒げて、肩を上下に上げ下げする。
そんな二人を見てスノーは訝しい顔をするも、シュトルはマナの肩に手を添える。
「お疲れ様。凄かったよ」
「ありがと」
「でも、無茶しすぎだよね。せめて飛べるとかないと」
シュトルは【飛行】スキルを自慢した。
けれどマナにはそれがとっても魅力的に映る。自分も空を飛びたい。そう思わせるには流石に十分すぎた。
「でも空を飛べるのは面白いですね」
「ねぇ如何やって飛べるようになったの?」
マナは尋ねた。
するとシュトルとシューネは真顔で答える。
「普通にかな?」
「はい。ただ高いところで過ごしていたらですね」
さっぱり状況が読めない。
しかしマナとスノーは何かを察した。流石に危険だからやりたくはないけど、二人がいないと死んでいたのは確かだ。
「はいはい、暗い話はしないの」
shineは暗くどんよりした落ち込んだ空気をかき消した。
手をパンパン叩き、バーサーカは舵を取る。
「さぁ山場は越えたよ。もうじき着くね!」
「何だか長かった気がするんだけど」
「そんなに経っていないがな」
ながらに話をし始めた。さっきまでの張り詰めていた空気は何処に行ったのか、天候と一緒にあどけない明るいものに変わっていた。
そんな空気に流されたマナの心も清々しくなる。
ただしもっと強くなりたいと思った。
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