■235 クラーケン
クラーケンは近年だとダイオウイカ説が優勢だけど、神話のクラーケンは結局タコでいいのかイカなのか。皆んなはどっちだと思いますか?
上から見たら一発で分かった。
赤くて巨大な軟体動物が船を飲み込もうとしていた。
「あれって……」
「クラーケン!?」
shineが真相を目の当たりにして、苦い顔をする。
顔を顰めて、気持ち悪そうにしていた。
「もしかして、タコとかイカとか駄目なんですか?」
「そんなことはないけど、あの大きさになると誰でも思うでしょ?」
「「「確かに」」」
空中に滞在する私達はshineの言葉に大きく頷き返した。
だって船を飲み込もうとするぐらい大きいんだよ。そんなのが真下に現れたらこんな風になっちゃうって話。だけど、そんなのはどうだっていい。今やらないといけないのは、
「あれをどうにかしないと船がヤバいよね?」
「そりゃそうでしょー」
「じゃあ如何するの?」
シュトルとshineか首を傾げる。
しかし私は違った。
「アレを倒さないと船が壊れるんだったら、倒すしかないよ!」
「それもそうだねー」
「じゃあ私が船の皆んなに伝えるよ」
話はすんなりまとまった。
私達は突然のことで、何も準備していない。完全に手付かずの状態でレイドバトルが発生した。
◇◇◇
〈星の集い〉〈雷聖〉〈大空航空団〉〈シャイニーハート〉の面々、四つのギルドは一堂に会した。
しかしそれぞれがバラバラの行動を取り続けても勝てない。
そこでスノーを中心として、索敵範囲を広げつつそれぞれが応戦できる形にした。
けれど肝心の相手は海の底。攻撃は全く当たらない。
「私が舵を取る。お前達は応戦してくれ!」
「それじゃあシューネ、天。私達は空からね」
バーサーカは船の舵を精一杯取る構えを取り、ムジナさんを除いた〈大空航空団〉の三人は【飛行】で空に舞い上がる。
「《サンダー・クロー》!」
「《虎殴》!」
イズチとタイガーの二人は雷と風を纏った攻撃を海面に叩きつける。
水蒸気が生まれる。衝撃波本体に届いたのか。いや、まるで通用していない。
「この、効かねぇのかよ!」
「チッ。こりゃきついぜ」
二人は苦渋を舐めた。この二人に匹敵するパワーの持ち主は、他にいない。それなのにこれでは勝ち目がない。
「せめて海上が上昇すれば……」
「《ブラストファイア》!」
スノーの嘆きに合わせて、ちなっちは海上に炎を叩きつけた。
すると少しだけ水が抜けて、クラーケンの体が剥き出しになる。その隙を見逃さず、スノーとシューネはボウガンを撃った。
「マーカー完了」
「魔力を固定。《シャドウバインド》!」
スノーは十字を切って魔法を放った。
黒い影が海面から伸びてクラーケンの脚を引っ張り上げる。そこで私とKatana、それからshineは剣を振り上げた。
「このっ!」
「せやっぁ!」
〈奇跡の星剣〉と〈波状の白星〉の二刀流で攻め立てる。
さらにshineも細剣で無数の連続突きを見せた。しかし脚を一本破壊するのが限界で、Katanaは追い打ちとばかりに、技を駆使する。
「下がってください。刀華流“紫陽花”!」
抜刀術を決めた。
激しく打たれた水飛沫を纏った刀の刃は、高出力の硬度を保ちクラーケンの脚を同時に二本切り落とす。
しかしそれ以上に効果はない。Katanaも口をひん曲げて、渋い顔になる。
「駄目でしたか」
「Katana!」
「申し訳ございません。今のままでは本体には遠く及ばず……」
そんなことない。それは私達も同じだから。
だけど何か勝機はあるはずだ。そもそも私達は倒す必要がない……ん? 倒す必要がない。
「そっか。倒さなくていいんだ!」
「何言ってるの?」
「スノー、倒さなくていいんだよ。倒さなくて!」
「それは考えている。だがこの雨が……」
スノーは先を読み続けていた。
シューネも少し先を読み何となく察しがついている。だけどこの雨が邪魔をして、私達の逃げ道を塞いでいた。
「せめてこの雨が止みさえすれば……」
「おそらくこの雨はクラーケンのものですね。クラーケンを引き剥がさない限りは、無理ですね」
「そんなことは分かっている。だが何かある。雨を払い抜ける。雨が海面に当たらないようにするには、蒸発……いや、火力が足りない。それにそれは逆効果だ……だったら……」
頭をフル回転させるスノー。
シューネも苦い顔になりながら、考えを膨らませるがやはり思いつかない。だけだ、一人だけ何か策を思いついた人がいた。
「もしかしたら、今でしたら……」
Katanaが意味深に呟く。そしてインベントリから何かを取り出すのだった。
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