■234 引きずり込むもの
ピンチ!
雨はそこはかとなく降り続ける。
大粒で槍のようだった。船内にいるのに天井からは今も音が鳴りやまない。
「凄い音だね」
「まるで嵐だな」
外には雷雲が覆いつくし、甲板を打ち続けた。
ちょっとだけ恐ろしい。今のところ船酔いでダウンしているメンバーはいないみたいだけど、ムジナさんやみーさんは頭を押さえていた。
「大丈夫、みーさん?」
「う、うん。大丈夫だよ」
みーさんの顔色は悪い。
ちなっちは心配して首を傾げる。
「ホントにー?」
「ホントにです。だから心配いりません」
「そうか。じゃあちなっち早く引け」
スノーはあっさりしていて、トランプのカードを見せる。
残りの手札は五枚。戦略的に一番数が少ない。ちなっちはどれにしようか選び、引いた。しかし揃わないので捨てられない。
「それにしてもトランプ持って来ててよかったね」
「そうだな。本当はポーカーでもいいんだが……」
そう言うも、それはできないんだよね。
だって、
「私達ポーカーのルール知らないんだもん」
「そうだよ。だから諦めよう」
「今度教えてやる」
スノーは溜息を吐いた。
しかしすぐに気を取り直し、トランプのカードに集中する。
「ねぇ、だらか麻雀とかチェスとかできない?」
「できますよ」
「私も知識はあります」
ムジナさんとシューネが手を挙げる。
もちろんスノーはできるとしても、まさかこんなにできるなんて。ってかそんな話しててもいいのかな? それこそフラグじゃないけど、何か起きそうな気がした。
「でもさ、如何して突然雷雲が出たのかな?」
「それはな……」
スノーが何か口走ろうとした。
しかしその瞬間よくないことは的中した。急に船が揺れ出す。
「うわぁ!」
「凄い揺れだね」
少しだけドアを開けて外を見てみれば波が高い。
嵐に巻き込まれ完全に船が飲まれそうになっていた。それを見たバーサーカは急いで縄を回してかじを取ろうとする。しかし上手く旋回できない。
「何か突っかえているのか?」
「それならマズいよ。早く何とかしないと」
「だが船は波に乗って進んでいる。つまりこの違和感を別にあるわけだ」
shineとバーサーカはそんな話をしていた。
不穏な気配が漂う。そんな中、私とKatana、それからイズチと【気配察知】を持っているこの場の全員は船を取り巻く異質な気配を敏感に感じ取った。
「な、何!?」
「何かいるねー」
ちなっちはゆったりしていた。
しかしこの空気は不穏だ。しかもこの場所は移動ができない船内。気配の元は外にある。
イズチとムジナさんは外を見た。すると何か赤いものが船に寄りかかっているように見えた。
「何だ、アレ?」
「判らない。見に行くか」
ムジナさんは頭を押さえて外に出る。
この嵐で船酔いになっていた。そのせいで足元がもぼつかないでいる。
「ムジナさん、下がっててください」
「私達が行くからさ」
私とちなっちは船外に飛び出した。
心配したshineにシュトルも甲板に足を運んだ。
「赤いものってこれかな?」
甲板に乗ったかった赤いもの。
むしろ少し白めでもある。
「赤くて白い? それにしてもうねうねしてるね」
「もしかしてこれ触手?」
まるで触手。シュトルの反応は正しい。
ちなっちが武器を構え近づくと、触手は海の中に戻った。拍子抜け。誰もが微かにそう思った。しかし私達は違った。武器を取り出すと、周りに警戒して構える。
「如何した!?」
「皆んなは下がってて。来るよ!」
私は叫んだ。
すると予想は的中して、船が激しく揺れ出す。
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」
「マナ、掴まって!」
「【飛行】!」
船内に残るメンバーと、シュトルに空まで運ばれる私達。
すると真下で何か蠢いていた。船の底。そこに見えるのはすでに隠れる気もないモンスターの姿だった。
「な、なにあれ?」
「絶対ヤバいね」
そう確信した。
そこに潜むもの。それはタコかイカか、どっちつかずの巨大生物だった。
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