■228 達磨さんの目標。
一応伏線だが、突飛に思い付いたものです。
それから30分後。
「悪いなノア」
「いえ、お帰りはいつ頃になられますか?」
「帰りは電車で帰るからいい」
「作用ですか。かしこまりました」
ノースはクロノアに送ってもらい、新設された第二公園に足を運んだ。
きっかり30分。大型バイクの後ろに揺られ、軽い脳震盪を起こしていた。
「あっ、ノース!」
「全くこんな時間に呼び出して何のようだ。ん? お前は……」
「みーさんです」
「みーさん? 雷聖のか?」
「はい。ノースさんは、スノーさんですか?」
「まぁな。そんなことよりこのメンツはなんだ。一体私を呼び出してのは何のためなのか、聞かせてもらおうか」
ノースは少し怒っているのか、腕組みをして厳しい姿勢をとった。
しかし私達も何をするのかとは聞かされておらず、肝心の達磨さんを待つばかりだ。
「うんうん。全員揃ったね。それじゃあ行こっか!」
「行くって何処にですか?」
「そんなの決まってるでしょ。ほらほら付いてきて」
達磨さんは自由気ままだった。
流石に突然呼び出されたノースは訝しげな表情を浮かべ、私達も顔を見合わせた。しかしどんどん遠くに行ってしまう達磨さんの姿を追う内、次第に仕方ないとばかりに背中を追っているのでした。
それから公園を抜け、ビル群に出ると路地の向かいにある建物に入る。
「ここですか?」
「そうだよ。このビルの七階が、私の作業スペースなんだ」
「作業?」
何だか意味深だ。
私達は何かの作業の手伝いをするためか、それとも見学なのかだったかだと思った。しかし何の? いまいち掴み所がなく、やっぱり怪しい。
そう思いオートロック式の部屋の一つをくぐる私達を待っていたのはーー
「これは如何いうことだ」
「はいはい、いいよいいよ。もっとポーズ取って!」
カーテンを開けると、そこにいたのはフリルの付いたドレスを着せられたノースだった。
黒のゆったりパーカーを剥ぎ取られ、真っ白な美しい髪を引き立たせるために淡いピンク色のドレスを着せられていた。まるで着せ替え人形。けれどノースの特質した髪と相まって、貴族感を高める。
「似合ってるよノース!」
「ほんとほんと。お姫様みたいだよ」
「わぁー」
「美里、お前は口を閉じろ。せめて何か言ってくれ」
私達は褒め称えたり、呆気に取られていた。
それから達磨さんは一眼レフカメラを撮り出して、様々な角度から写真を撮っていく。それから何をするのかと思えばスケッチブックを取り出して、デザインを膨らませる。
「達磨さん、もしかしてこのためにノースを呼んだんですか?」
「そうだよ。やっぱり被写体は可愛くてスタイルが良くないとねー。あっ、3人も可愛いからね!」
「でも私達って、意見を聞きたくて呼ばれたんですよね?」
「うん。今日はね」
「「「今日は!」」」
何だか嫌な予感がした。
さっきアドレスを交換したのもそのせいだろう。
にしても一体何のためにこんなことをしているのか。いささか疑問や思った。それをいち早く問うのは、一番不満が溜まっているノースだった。
「達磨、これは何だ」
「ん?」
「ん? じゃない。何のためにこんな真似をしているのか聞いているんだ!」
ノースは威圧的な態度だった。
しかし肝心の達磨さんはスケッチブックに目をやり、鉛筆を走らせるだけで、特に気にしていない様子だ。
しかしその状態で淡々と話し出す。
「私さ、将来はデザイナーになりたいんだよ!」
「デザイナーですか?」
「うん。ファンションデザイナーね。そのためにモデルやってるのかなー?」
そう言えばさっきからスケッチブックに走る絵は完全に同じものではない。被写体は変わらないが、服のデザインが若干変わっていた。丈や袖の形とパーツごとに事細かだ。
「いつからだっけ。私がモデルをやり出した頃に、ある人が出したデザインがとってもカッコ可愛くてね。それから一目惚れしたんだよ」
「運命の出会いみたいなものですか?」
「そうそれ。美里いいこと言うね」
パッと振り返って鉛筆を向ける。
先端恐怖症なら溜まったものじゃない。だけど直ぐにスケッチブックに目を向け、鉛筆を走らせ続けた。
「それから私ね、その人みたいになりたくて頑張ってるんだ。新人賞を取って、いつかその人みたいな有名ブランドのデザイナーになりたい。そのためにはモデルとして色んなデザインの服を見て、聞いて、触って、試して、自分の経験値に変えて、それからアイデアを膨らませて、自分の思う最高のものを作りたいんだよ」
「壮大な夢だな」
「ありがと。でね、最近出た新作がめちゃカッコ可愛くて、私も負けてられないって思ったんだよね」
達磨さんは笑顔だった。
しかしそのデザイナーさんって誰なんだろ。流石に私も知ってるのかな?
「ちなみにそのデザイナーって誰なの?」
「名前はニシ・セツガって人らしいよ」
「ニシ・セツガ? タイガーウェストじゃないか」
「知ってるの、ノース!」
「まぁな。確か本人は自分の娘に着て欲しいからと言う理由でブランドを立ち上げたそうだが、それが今では世界中を虜にする出来にまで発展して、娘に会えないと嘆いている母親の作品のはずだ」
「へぇー」
それにしてもニシって。確か大河ちゃんも西だったよね。
でも大河ちゃんは服に何て興味の欠片もなさそうだし、違うかな。
そんなことより、
「あー、いつか会ってみたいなー!」
「それはいいが早く終わらせてくれ」
「あっごめんごめん。次もあるもんね」
「はあっ!?」
如何やら着せ替えタイムはまだまだ終わりそうになかった。
その上、私達も家に帰れなさそうで、このまま夜も遅くなるまで待つことになった。
途中で帰ろうとして、ノースに泣き顔で止められた時は、流石に顔を顰めて呆然とする他なかったのだ。いい加減、早く終わって欲しいと思ってしまった私達だった。
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