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■225 試し撃ち

ここから少し面白みが・・・

 山を登っていた。しかもかなり高い山だ。

 傾斜は凄まじく、太い木の幹に掴まりながら何とか歩いていた。少し気を緩めれば転げ落ちてしまいそうで、私はともかくスノーは息が絶え絶えだった。


「はぁはぁはぁはぁ」

「大丈夫? 息荒いよ」


 私は振り返ってスノーに聞いた。しかしスノーは額と顳顬から汗をダラダラ垂らしながらも、目がとろんとしていてもその姿勢は崩さない。

 仏頂面で、クールに締めようとする。


「問題ない。それより如何して先に行かない」

「そりゃ、スノーを放っておかないよ」


 私は木々を伝いスノーの元に寄る。

 みれば顔は白くなりつつあり、元気がない。目の奥の瞳は爛々としていた。


「こんな病人みたいな人、放置できないって」

「病人だと。私は平気だ。少し疲れているだけで……」


 スノーの言葉が詰まる。

 如何やらこの蒸し暑さも災いして、かなりの体力を失ってしまったみたいだ。

 私は心配になったので、インベントリから水の入った水筒を取り出すと、スノーの口に押し込んだ。


「がはあっ!?」

「ちゃんと飲まないと駄目だよ」


 しかしスノーは私が押し当てたのが辛かったのか、勢いよく口から離す。

 これだけ動ければまだ大丈夫そうだ。

 錯覚的に私は判断すると、周りの景色を見回した。


 ここまで結構登ってきた。

 ざっと40分ぐらいだろうか。一度も休むことなく歩き続け、ようやく見えてきたのは少し開けた場所だった。

 きっとここならいるはずだ。


「フォレストウルフ。全然いないね」

「この辺りは目撃例も多いからいると目をつけていたんだがな」


 如何やらスノー曰く、いるにはいるらしい。

 しかし私達の気配に感づかれたのか、まるで姿を現さないでいた。


「そう言えばフォレストウルフってどんな見た目なの?」

「ただの狼だ」


 ん? 私は絶句した。

 ただの狼って、そんなの如何見つければいいんだ。

 声にもならない。

 如何してそんな依頼を受けてしまったのかと、頭の中がおかしくなりそうだった。


「手がかりもないんじゃ見つかるわけないよ!」

「手がかりならあるだろ。そこに」


 スノーは地面を指差した。

 するとそこには何かの足跡。しかも四角形になるように、四つの足跡が続いていた。

 これは人のものじゃない。獣の、それこそ犬系の足跡に似ている。


「これってフォレストウルフの?」

「そうだ。何もなしに追ってきたわけじゃない。私達は道なりに沿ってはいたが、途中よろけただろう。その時、たまたまこの足跡を見つけたから、私は傾斜の急な山道を選んだんだ」


 そうだったんだ。

 知らなかった。私はあてなくただ試し撃ちのために止まっていた。

 しかしそれも間違いではない。

 ちょっと切株があったので、スノーはそこに腰を下ろすと、〈雪花銃〉を取り出した。

 それから何をするのかと思えば、狙いを絞って木の幹に開いた穴目がけて撃った。


 ボウガンにセットされていた矢は真っ直ぐ飛んでいく。

 見事幹を貫き、刺さった。


「まあまあの威力だな」

「これじゃあ駄目なの?」


 私がそう尋ねると、スノーは首を横に振る。

 本音を吐露するように、語り出した。


「正直デザインは気に入っている。しかし私が改造したことで、本来の威力にはそぐわないものになってしまったと思い、若干懸念していた。しかしいざ撃ってみればかなりに肌に合う。おまけに軽くて使いやすい。これなら腕を下手に痛めることもないだろうな」


 滑らかで饒舌だった。

 ここまでベタ褒めするのはスノーはかなり珍しい。目が子供のように澄んでいて、混ざりけがなかった。


「気に入ってるんだね」

「まあな」


 しかもスノーの手が加わったボウガンだ。

 今度は腕にセットして撃ってみる。けれどここで疑問が生まれた。一体如何やってトリガーを引くんだろう。


「ねえスノー、それって如何やって引き金を引くの?」

「トリガーのことか。無論普通にだが」


 いやいやその普通ができないよ。

 だって今トリガーは後ろに大きく迫り出して、真横になっている。そんなの普通には使えない。そう思って私だったが、ここでスノーが加えたギミックが光る。


「この部分を横に倒して、これで如何だ」

「嘘っ!?」


 何とトリガー部分を引き出し、棒みたいなものが内部から飛び出た。

 それをロボットアニメのコントローラーみたいに手元にたぐり寄せると、そのまま押し込んで固定する。変な格好だけど、如何やらこれで撃てるらしい。


「見ていろ」


 棒に取り付けられたトリガーを引く。するとボウガンの矢が発射され、木の幹に突き刺さった。しかし威力は変わっていない。単に撃ちやすくなっただけだった。


「もしかしてこのために改造したの?」

「そうだ。これなら右手も自由が生まれ、大鎌を振るいながら戦うことができる」


 スノーの笑みは口角が上がり、自信満々だったが私は大鎌を振るうのは流石に無理があると思った。

 いくら軽いとはいえ、流石のスノーでも無理に近い。しかしスノーは、


「あくまで理想系だ」

「理想系ではあるんだ」


 スノーはそう口にするものの、早々に撃ち壊れた。

 だけどスノーならいつか何とかしそうだと心の何処かで余裕が生まれる。この余裕は何なのか分からないけど、とにかく無事に完成したことだけは見て判る。まだ荒削りだけど、私も〈奇跡の星剣〉を上手くは使いこなせないので、頑張りたい負けてられないと思い、熱意を燃やしていた。密かにだけどね。

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