■222 タマノハガネ蔓
今回はぶっ続け。
テッポウリュウを討伐して、無事に素材がドロップした後、私達はその足で今度は山に登っていた。
鬱蒼としていて、登れば登るほど、緑は一段と濃くなっていくばかりだった。
「はぁはぁ……」
「スノー、大丈夫?」
「あぁ。まさかここまで深いなんて、出直すか?」
「いや、それは無理だと思うよ。だって……」
私は先を行く3人の姿を見つめてしまった。
傾斜もあって、剥き出しになった枝にも負けず、ズンズン登って行く。
今となっては、その姿が小さく見えた。
「あの3人を止められる?」
「無理だな」
私とスノーは3人に比べたら体力やスタミナがない。
だから先に行ってもらったのに、まさかここまで距離に差が生まれるなんて。
って言うか、
「タマノハガネ蔓ってどこにあるの?」
「タマノハガネ蔓は別名火蔓と言って、摩擦熱により膨大な熱エネルギーを生み出す。つまり、天然の葉と葉が擦れ合う場所にこそ、タマノハガネ蔓は生えているんだ」
「へぇー」
「正直上に登るのは意味がない。確かに日光は頂上付近の方が当たりやすいが、葉の成長に関わる雨水や土壌の固さは、高さによって大きく変わるからな」
「つまり、何となく上に登ってるんだ。じゃあ呼び戻した方がいいよね?」
「いや、そうと言うわけでもないぞ」
スノーは含みを持たせて私に言った。
しかし私は首を傾げる。
するとスノーは周りの木々を見つめ返しながら、大きく広がった若葉色の葉っぱに手をかざす。
「これを見てみろ」
「ただの葉っぱだよ?」
「そうじゃない。裏面を見ろ」
そう言って裏面を見てみると、裏側だけ虫に食われたような穴があった。
けれど表の方にはない。
如何してだろうなと考えていると、葉っぱをちぎり、私に見せた。
「よく見てみろ」
「あれれ? この葉っぱ変だよ」
「そうだ。この葉は二重になっているのが特徴で、それだけ栄養を伴う。つまりタマノハガネ蔓が、樹勢するには物足りない」
「そっかー」
「そうだ」
確かにスノーの言うことには一理ある。
私でも解るぐらい噛み砕いてくれていて、申し訳ないが、一つだけ間違っていることがある。
私は少しだけ気負いしながら、スノーの肩をポンポンと叩いた。
「あのさスノー」
「なんだ」
「さっき上に登るのは、樹勢が如何とか言ってたでしょ?」
「そうだ。他には上からの方が、視野が広く取れるからな」
「そうだよね。そうなんだよね。でもさ、あれ見てよ」
「あれ?」
私は右奥を見るように伝えた。
すると私の指を差した先に、パチパチと赤く迸る光が見えた。
蛍光色でも信号機の赤色ランプとも違う。
キャンプの火でもなく、でもパチパチと何だか嬉しくなった。
「人じゃないな……って、まさか!」
「あっ、ちょっと待ってよスノー!」
私はスノーを追いかけた。
一瞬見てたスノーの目の色は、血行が良くなりほんのり赤い。
興奮しているのかな。と思うものの、いざパチパチの正体を確認すると、
「おい、これは……」
「燃えてるね、あれ? でも触れるよ」
私は燃えていた蔓に触れてみた。
しかし少し熱い程度で触らなくない。
ポカンとしてしまう私だったが、スノーの方が気にしていた。
「まさかこんなに容易く見つかるなんてな」
「じゃあこれが火蔓?」
「そうだ。タマノハガネ蔓。しかも美しい鉛色だ」
確かに綺麗な鉛色をしていた。
剣みたいなこと色味だ。
しかし蔓って普通は緑色とか茶色じゃないのかな? そう思ったけれど、スノーはこう述べる。
「タマノハガネ蔓は、天然物に限り色味が銀に近くなる。しかし銀になればなるほど、強度は下がり、速射性に優れる遠距離武器には使いにくくなる。完全に、装飾品送りだ」
「じゃあ鉛色は?」
「鉛色は、ギターやベース。この場合は、弓のようなしなやかさとエレキギターの弦のような強度を生み出せる。ただでは壊れない」
凄い。
そんな面白い素材があったなんて。私はびっくりした。
話終えたスノーは満足めな笑みを浮かべ、燃えているタマノハガネ蔓に触れた。
すると簡単には取れず、仕方ないとばかりに〈黒夜の大鎌〉を取り出した。
「これで刈り取る」
「じゃ私も手伝うね」
〈奇跡の星剣〉と〈波状の白星〉を抜刀した。
タマノハガネ蔓に向かって剣を振り下ろすも、
カーン!
「あ、あれれ?」
「なかなか切れないか」
タマノハガネ蔓は私の想像以上だった。
しかしこのまま放置するのは惜しい。それにスノーは諦めていない。
さっきから魔法を使って対抗しようとしている。
それを見てしまった私は、一つ閃いた。
「そうだ!」
武器を仕舞い、左手の〈暗縫の黒星〉を使ってみた。
「なるほど、衝撃吸収か」
「そう言うこと。行くよー! あっ!?」
私は手袋をしたまま蔓を掴んだ。
するの思ったよりも吸収が過ぎたのか、蔓がブチッ!と音を立てて千切れた。
「嘘でしょ? これ如何しよう」
「いやそれでいい。それだけあれば十分だ」
スノーは上出来とばかりに喜んだ。
私としては正直に言えば微妙だ。本当にこんな感じでいいのかな? 断面も汚いし、不満が絶えない。
しかし、
「いいか、全部使うわけじゃない。それに何本か持って行けばいい」
「いいのかな?」
「当たり前だ。これを見つけたのは、お前だからな。好きにすればいいんだ」
そう言われてみればそうだ。
私は満足がいくまで尻餅をつきながら、タマノハガネ蔓を採取した。
そうして満足のいくものが手に入ると、私達は3人にメッセージを送り、先に下山した。
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