■221 銃口の先の向こう側
今日はもう一話。
私とタイガーは慌てて皆んなの元に戻って来た。
それからてんやわんやになりながらも、何とか起きたことを説明する。
するとスノーは、訝しげな顔をして黙り込んでいた。
「なるほど、水飛沫か」
「大変だったね。怪我とかしてない、マナ?」
「あっ、まあねー」
私は笑って誤魔化した。
しかしタイガーはギロッと目を動かし、Katanaも私の服の袖が一部引き裂かれたみたいに破れていたことに流石に顔を顰める。
「とにかくだ。あれはやばいぞ、なぁマナ」
「うん。姿もわからなかったもん」
「見てないのか!」
スノーは目を見開き、詰め寄ってくる。
私はコクコクと縦に首を振るのだが、
「俺は見たぜ、タツノオトシゴ」
「「「タツノオトシゴ!?」」」
私達は揃って声を上げた。
タイガー曰く、一度振り返った瞬間があって目を凝らしたそうだ。そこは私も確認済み。
そこから一瞬だけど、サンゴっぽいものの中に何かが動いていて、それが水族館の小さい水槽とかで見るタツノオトシゴのおっきいやつだと解った。
「そんなに大きかったの?」
「あぁ。さっき見たボウガンの全長と同じくらいだっだな」
「それって……」
素材にするってそのまま使うってことだったんだ。
びっくりして声も出ない。
しかしスノーは何かに気が付いたのか、突然声を上げた。
「そうか! テッポウとはテッポウリュウのことだったのか。それなら何とかなるか」
「えっ、な、なに!? テッポウリュウって」
私はスノーに尋ねた。
すると、スノーは自分の考えを話してくれた。
それはテッポウリュウと言うモンスターの話だ。
「テッポウリュウ。聞いたことは……ないだろうな」
「うわぁ、失礼だなー」
「じゃあ知っているのか」
「……」
ちなっちは黙ってしまった。
私は黙っていることにして、スノーの話に耳を傾ける。
「テッポウリュウは口を銃口に見立てて、強力な水噴射によって獲物を仕留めるモンスターだ」
「本当に鉄砲みたいだね」
「テッポウリュウのテッポウはそれだからな。続けるぞ、その威力は船を破壊して座礁させるほどだ」
「待ってください! では港で見かけたあの船の惨状は……」
「おそらくな」
Katanaは口をつぐんだ。
そんな威力の相手に勝てるのか。しかし、スノーには勝算があった。
しかも、今回の作戦はいつもよりもまともなものだった。
「よし、行くぞ」
「時間との勝負ですね」
Katanaはギュッと手を握り込んだ。
それから私達は今度は5人でサンゴの周りに向かう。
「そう言えば何でテッポウなのかな?」
「それは元になったのがテッポウウオだからだろう」
「「テッポウウオ?」」
私とちなっちは首を傾げた。
「口から水を鉄砲のやつに飛ばはことができる魚だ」
「凄い! そんなのがいるんだ」
「世の中って不思議だねー」
とか談笑をする余裕があったのは、皆んなが一緒だから。
やっぱり1人よりも皆んなとの方が私は好きだな。
私とタイガーは今度は2人ではなく、5人でやって来た。
早速作戦を始める。
まずはKatanaが磯のど真ん中に無防備に立ち尽くす。
そして私達は岩陰に隠れた。
「頼んだよKatana!」
「お任せください」
ペコリとお辞儀をしてくれた。
とっても危険な薬だけど、これができるのはKatana以外にいない。
仕方ないとは言え、本当にうまく行くのかな。
「おい、見えたぞ」
タイガーが小言で教えてくれる。
サンゴの中に何かが動いている。
ピンク色のタツノオトシゴの姿。それは水を口から噴射した。
「来るぞ、Katana!」
「心得ています」
とんでもない勢いで水飛沫を上げなら噴射された。
水の勢いは止まらず、真っ直ぐKatana目掛けて放たれる。
その瞬間、私達4人は岩陰から出ると、サンゴに向かって走り込んだ。
それからKatanaは、
「龍蒼寺流剣術漆ノ型“粉雪”!」
自分に直撃する瞬間、〈夜桜蒼月〉を抜刀し、水を真っ二つに切り裂いた。
ザバァーン!
勢いよく音を立てる。
それから解るのは、次が来ないこと。チャージ時間が長いんだ。
それを見越して先に動いていた私達は、サンゴの中を叩きまくる。するとちなっちとタイガーの攻撃がクリンヒットして、HPバーが緑から黄色に変化する。
テッポウウオは空中に逃げる。
それから最後の力を振り絞り、もう一度水を発射しようとするも、
「〈シャドウバインド〉!」
スノーの魔法によって動けなくなった。
そこで私は〈奇跡の星剣〉を抜くと、最後の一撃を食らわせた。
「ていやぁっ!」
私はテッポウリュウを切り裂いた。
するとHPバーが黄色から赤になり、完全になくなった。
どうやら倒せたみたいだ。そして私のインベントリの中には、
「テッポウの筒ってのがドロップしてみたいだよ」
「それだ。それがあれば問題ない」
「じゃあとは蔦だねー」
そっかまだ終わりじゃないんだ。
今のでかなり疲れた。だからこのまま連戦はごめんだ。
しかしスノーは依然やる気に満ちていて、私達は今度は山の方に向かうことにした。
「それにしてもKatana凄いね。前より動きが洗練されてる?」
「ありがとうございます。実はあれからますます腕に磨きが掛かるように修練を積んでいたんです」
それを聞いてポカンとした。
Katanaは強いし凄いな。それに度胸も据わっている。私は感服していた。
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