■219 〈リョウワ〉
漢字で書くと、龍輪
私たちは今日も今日とて新しい町に来ていた。
どっちかと言うと村だけど……そんなの関係ない。
「あーむっ。おっ、この草団子美味しい」
タイガーが草団子を頬張った。
ヨモギを混ぜた緑の団子の上にたっぷり餡子が乗っていて、お得感がある。竹串で刺してあるが、重さで今にも崩れそうなところにタイガーがかぶりついていた。
「口元付いてるぞ」
「えっ!?」
自分でも気づかないほどで、スノーが教えてあげる。
びっくりして口元を勢いよく擦るタイガー。ちょっとだけ子供っぽい。
「にしても活気のある村だね」
「うん。ホシナリとはまた雰囲気が違うー」
「当たり前だ。ここには海がある。地形も生き方もまるで違うんだぞ」
「段々な土地になっていますね」
スノーとKatanaが地形を見て言った。
確かにここ、〈リョウワ〉は私達が見ても判るぐらい、土地が階段状になっている。
三から四に分かれた段数になっていて、一番下の段からはすぐに海に行けるよう港になっていた。そのおかげか、新鮮な海産物も多く並び、船もたくさん停泊している。
「ウミノアマとは違うんだね」
「あそこは海の神を信仰しているだけだからね。海産系が豊富とは言えない」
「それにー、船とか出せなさそうだったもんねー」
確かにあの辺は岩礁が多くて、船を出してもすぐに座礁してしまいそうだった。
お陰でアメフラシが出てきてんだけど……考えただけで寒気がしてきた。
体を両手で覆う私だったが、不意に港の船舶を見て気になったことがあった。
「ねぇ、あの船の側面壊れてないかな?」
「本当だー。おっきな穴が空いてるね」
ちなっちが目を凝らして見てみた。
すると大きな穴が空いていて、動かせないみたいだ。
「座礁でもしたのかな?」
「いやそれなら船がここにある方がおかしい」
「けどよ、この辺って確か磯があんだろ。だったらよ」
「それは確かなはずです。ですがタイガー。あの穴の大きさをみてください。奥の方まで貫通していますよ。見るも無惨な姿になっています」
確かにそうだ。
奥の方まで穴が広がっていて、Katanaの言う通り、少しおかしい。
「本当だ。スノー、何でかな?」
「さぁな。例えばモンスターに襲われたとかじゃないか」
「モンスター?」
「私の調べによると、この辺りではよく“テッポウ”と呼ばれている正体不明のモンスターが出るとかだ」
「テッポウ?」
「あぁ。詳しいことは何も分かっていないがな」
聞くからな怪しい。
しかしそんなモンスターにわざわざ挑む必要もないので、私達は観光を続けた。
するとーー
「ここ何かな?」
「武器屋か? 博物館か?」
看板には鉄砲武具博物館と書いてある。
色々詰め込みすぎてよく分からない。
「ちょっと入ってみよー」
「あっ、待ってよちなっち」
興味本位で飛び込んでいた。
すると中には、たくさんの遠距離武器が並んでいた。
弓とか投擲具とか、メジャーなものから知らないものまである。
「これ遠距離なの?」
棒に鎖が付いていて、その先にトゲトゲボールが付いた見るからに怪しい武器だった。
「それはモーニングスターだな」
「モーニングスター?」
「モルゲンシュテルンと呼ばれることもあるどちらかと言えば打撃系ジャンルだ。由来となった星球の柄頭が特徴だ。殴打用合成棍棒で、主に距離を取ってリーチを活かした攻撃を主体とするが、鎖を搭載することで遠くから叩きつけるように攻撃できる。言わば改造品だな」
スノーがかなり饒舌に教えてくれた。
その説明のおかげで何となく解ったような解らないような感じだったが、スノーは他の武器に興味を抱く。
「これは……」
「火縄銃ですね。撃てるんでしょうか?」
「撃てないだろうな。そんなものが解禁されれば、たちまちパニックだ」
「ですね」
Katanaの問いかけを真っ向否定。
それにしてもそんなものまで置いてあるなんて。ここって、博物館としては凄い。
「これは……」
「ボウガンですね」
そんな中スノーの目に留まったのは、ボウガンと言う武器だった。
今まで弓を使って来たスノーだったが、その武器を見るや否や、
「これ使いたいな」
「スノーが珍しいね」
「弓もいいが、弓銃は使ってみたいからね。改造がしたい」
「か、改造?」
カスタマイズってことだよね。
そんなことできるんだ。
聞けば、【技巧】のスキルをいつの間にか取得していたらしく、この手の複雑な武器を試してみたかったらしい。
しかしスノーの手に馴染むものが少なく、困っていたところだったのだ。
「よし、買いに行くぞ」
「えっ!? 今から」
「当たり前だ」
スノーは私の手を引いて早々に店を出ようとした。
こんなに生き生きとしたスノーを見るのは初めてかもしれない。そんな時、
「君らボウガンが欲しいのか」
「「「えっ!?」」」
突然話しかけられた。
振り返れば、そこに立っていたのは初老のお爺さん。頭にタオルを巻いて、職人って感じがした。
「あっ、はい」
「そうかそうか。だったら儂が作ったろう」
「本当ですか!?」
「もちろんじゃ。ただし条件がある」
「条件?」
お爺さんは私達にこう言った。
その条件とは、めちゃくちゃなものだった。
「テッポウの討伐と、タマノハガネ蔓を取って来てくれんか」
知らない単語だった。
「えーっと」
「その名前にお前は誰だ」
「ちょっとスノー失礼だよ!」
「ふん。儂は、面蔵。こう見えて、26じゃ」
「えっ!?」
私が一番失礼だった。
けれど面蔵さん(プレイヤー)は、高笑いをしているのだった。
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