■217 お狐様の思し召し
明日は久々に疲れます。
その日の私は、少し興奮気味でお話をしていました。
その相手は、
「って、ことがあったんですよ」
「なるほど。それは大変興味深い話ですね」
「面白いですよね!」
私はイズモさんに食い気味に話をしてました。
しかしイズモさんは嫌な顔一つせず、ティーカップに注いだ紅茶を飲みながら、にこやかな笑みを浮かべていました。
「マナも要りますか?」
「は、はい。ください」
私のティーカップの中もすっからかんだった。
興奮しすぎてついつい話しすぎてしまった。そのせいでティーカップいっぱいに注がれていた紅茶が底をついているではないか。
「今日の紅茶はアールグレイです。如何ですか?」
「如何って言われても、美味しいですよ」
「イギリスではとても愛されている紅茶の種類になりますね。もっとも、日本人の中にも紅茶と言えば一般的にアールグレイやダージリンを飲むのが定番なんでしょうが、それだけ親しまれているということでしょうね」
「この世界って、そんなに種類あるんですね」
「この世界とはどちらのことでしょうか?」
そんなの決まってる。
ゲームの中。
「ゲームは実在する世界を元にして作られています。もっともその全てが現実のものと言うわけでもなく、もしかしたら地名や言語は本当にあるものかもしれませんね」
「アールグレイ? とかダージリン? があるんですもんね」
「そうです。必ずしもないわけではない。もしかしたら、侵食されているのかも……と、考えれば面白いですね」
イズモさんは笑っていました。
長い金色の狐尻尾を揺蕩うように翻し、私は目で追いました。
「猫みたいですね」
「猫って、私ですか!?」
「はい。あっ、貴女は麒麟でしたね。失礼しました」
イズモさんは頭を下げる。
別に怒ってない。だけどイズモさんの言葉を聞くと、ほんの少しだけ〈麒麟の星雫〉が揺れた。
プルプル小刻みに振動を震わせる。
変なこともあるんだね。
「如何やら怒らせてしまったみたいですね」
「そうなんですか?」
「はい。機嫌を悪くされているみたいです。すみません」
イズモさんは剣に謝る。
すると振動が止み、私は目を丸くした。
「なんですか、これ!?」
「マナ一つ忠告です」
「忠告?」
イズモさんの目付きが本気だった。
如何やら今から私は説教を受けるのだろう。
「説教ではありません。安心してください」
「なんで考えてたことが!? えっーっと」
私とイズモさんの考えを読もうとしました。
けど全く掴めません。
するとイズモさんは、
「その子、麒麟の星雫は生きています」
「生きてる? 生き物なんですか」
「近いです。ですが、あまり酷使したり頼りすぎも禁物です。貴女はその子に頼り切りですよね」
「ギクッ!?」
私はついつい声に出してしまった。
見てないはずなのに何で分かるんだろう。
しかも本気のトーンなのが怖い。
「いいですか。貴女はその剣に頼りすぎていて、本当の意味で戦っていませんね」
「は、はい」
「一応腰の剣と、拳の剣で戦っているようですが、状態異常を無効化するその子の力に甘えている節があります。今のままでは100%力を引き出すことはできませんよ」
「100%?」
イズモさんの言葉が深く重い。
私が知らない何かを知っている。まさにそんな感じだ。
「その首飾り綺麗ですね」
「えっ!?」
急に話を変えた。
かと思えば違うみたいで、
「その首飾りは貴女とその子との絆をリンクさせています。このまま頼り過ぎれば、きっと飲まれる。それは困るんですよ」
「イズモさん」
「いいですかマナ!」
イズモさんは立ち上がり、私の肩を掴んだ。
力強い。っていうか痛い。
「貴女は私の友人ですね」
「えっ、そうなんですか!?」
「フレンド申請は送っています」
こんなタイミングで送られても困る。
でも何だろ。イズモさんは少し微笑んでいた。
「貴女は少し、その子を使うのを控えるべきです。いいですね」
「でもそれじゃあ……」
「大丈夫です」
イズモさんはそういうと、人差し指を私の心臓に押し当てた。
「ここさえ強ければ、貴女は誰よりも何よりも強くなれるんですから」
イズモさんの言葉には信憑性があるのかないのかはわからない。
けれど何だか確信が持てた。これが勇気なのかな?
「分かりました。できるだけやってみます」
「それでいいんです。また何かあったらここに来てください。それと……」
イズモさんは帰ろうとしたものの、一度振り返り、
「マナには期待しています。誰よりも私が知っていますからね」
「怖っ!?」
私はつい本音が出てしまった。
しかしながらイズモさんは笑ってくれていた。ありがたいけど、ちょっぴり気味が悪かったのは言えないけどね。
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