■215 星が煌めく
コトノさんは強い。そして分かり切った伏線を張るよ。楽しんでくれたら嬉しい。
私達はプレイヤー達に取り囲まれていた。
NPCの人達は早々に諦めてくれたみたいで、脅威にはならなかった上に、私達を応援してくれる。
「頑張れよ!」
「盗人に負けんな!」
対するプレイヤー達はお金に目が眩んで、私から剣を奪おうと画策する。
そんな中、最初に手を出したのは他のプレイヤー達だった。
「おりゃあ!」
鋭い一撃が飛んできた。
それを何とか躱した私達。これでいい。
これで、
「PvPに突入しました。プレイヤーは敷地内での戦闘が全面解放されます」
「オッケー!」
「これで本気が出せますね」
私は剣を抜刀した。
いつもの〈麒麟の星雫〉を右手に持つ。
それから左手には〈波状の白星〉を強く握り込むと、
「いけっ!」
衝撃波がプレイヤーを襲った。
レベル差もあるが、武器の差が違う。
たった一回の衝撃波で、プレイヤーが何人も吹き飛ばされた。
「ぐはっ!」
やりすぎ感もあるけど、まだまだ敵は多い。
今度は連携して、ちなっちを狙う。
「「クロスショック!」」
2人の男達は連携して魔法を放った。
重ね合わせた剣がバチバチと火花を電流のように散らして発光させ、襲い掛かる。
しかしちなっちは容赦なかった。
「そんなので私は倒せないよー」
魔法を乗せた攻撃を魔法なしで受け止めた。
その圧巻の動きに目を奪われ、男達はそのまま鳩尾に一発ずつ食らうと、動かなくなり、消滅した。
「これ、後で恨まれないかな?」
「それはない。大抵のやつは、負けた時の記憶はドライブが消滅させるからな」
「それってヤバいことしてない?」
「だろうな」
スノーはえらく淡々てしていた。
しかも遠くのプレイヤーは近づかれる前に、弓矢で射抜き、近くに来たら死神みたいに鎌で首を落とす。
残忍で残酷。だけどスノーなりに考えて、これが一番効率がいいことに気づいたんだ。
「なんだコイツら。ぜんぜん近づけねぇ!」
「そいつらはいい。とにかくあの剣持ってやる奴を叩けばいいんだ!」
「そうだな」
プレイヤー達が一致団結して私に襲い来る。
流石にこの数は無理。
ちなっちとスノーも手にいっぱいみたいで、私は防御の構えを取ろうとした。
「消えなさい」
コトノさんの声がした。
見れば両手に何か持っている。あれは、琴かな?
「コトノさん?」
「おい、マナ見ろ」
スノーが叫んだ。
何事かとおもい見てみると、プレイヤー達が一掃されたのか、全員気絶している。
今のコトノさんやったのかな。
でも如何やって。
タラタラーン
「琴の音?」
「そう言うことか」
スノーは何かに気づいたらしい。
コトノさんはその感も、琴を弾き続ける。綺麗な音色だ。
うっとりしてしまう。
「もう終わりましたか」
「はい。凄いですね、コトノさん」
「ありがとうございます。そうだ、マナさん。手を見せてください」
コトノさんは私の手を掴んだ。
するとさっき見せてくれた星形の鍔を押し込む。
「えっ、これはコトノさんの!」
「私が持っていても意味がありません。それと」
今度はフレンド申請だった。
「テンポが早いな」
「そろそろ戻らないといけないので。それではまた会いましょうね」
コトノさんは颯爽と帰っていった。
不思議な人だった。それにしてもーー
「如何やって倒したのかな?」
「音だ」
「音?」
スノーが口にする。
私は首を傾げると、スノーは簡単に説明した。
「プレイヤーの脳に直接振動を送った。そんな芸当が、可能なのかは分からないか、とにかくあの場にいた中で、私達を除いたプレイヤーだけに聞こえる共通の音波信号を確立させ、瞬時に奏でた。そんなことができる奴、私は知らない」
「スノーでもできない?」
「……時間があれば」
その言い方じゃ、スノーもできるってことだ。
本当に凄い。でもそんなスノーから褒められるコトノさんはもっと凄い。
一体何者だったのかな。
私は渡された星形の鍔をジッと見つめていました。
◇◇◇
深夜、都内某所。
私はある方と待ち合わせをしていました。
「この辺りですね」
都会のビル群でもなく、駐車場でもなく、ましてや雑居ビルや喫茶店でもありません。
私が待ち合わせ場所に指定されたのは、神社でした。
「この時間に人はいませんね」
深夜は回って夜の2時。
この時間に出歩く、まして神聖な社に足を踏み入れる輩など言語道断。普通に考えればいないでしょうね。
しかし、
「待っていました」
「はい。お待たせいたしました。少々手間取ってしまい」
「構いません。ところで……」
社の中。
私が書いたのは妖艶な香りを放つ声でした。
私がお慕いする方です。
「あの子達を見て、如何思いましたか」
「まだ弱いですね。あれでは……」
「解っています」
私の言葉はすぐに返されました。
おそらく、自らもそう思っていたのでしょう。
しかしながら、次に続く言葉は違っていました。
「あれほどまでに楽しんでいる姿を見るのは、やはり心が歯痒くてニヤニヤしてしまいますね」
「楽しんでいますね」
「ええ。とっても。やはり、あの子達には笑っている顔が似合います」
私よりも縁も深く、そして導く存在。
寛大なお言葉です。
「例のものは渡せましたか」
「はい。フレンド申請もしておきました」
「そうですか。では、今後も定期的にサポートをしてあげてください。私は表立って行動できませんから」
「わかりました。ところで、他の方々は」
私は首を突っ込むべきか悩みましたが、気になりました。
あの方達とお会いするのはそうそうないはずです。
そんなわけで気になってしまいました。
「連絡は取り合っています。しかし、それぞれ忙しいようですね」
「では他にも対面を果たした方は?」
「私を除けば1人だけです。しかし彼女は、感情を表に出しませんからね」
あの方のことを言っておられる。
その話し方は変わりませんが、抑揚があって楽しそうです。
「私も貴女には笑っていて欲しいです」
「ありがとうございます」
そのお言葉をいただけるだけで、心が癒されます。
私はやはり貴女に臣従しているみたいですね。
「それでは、私はこの辺りで失礼いたします」
「いえ、待ってください」
私は呼び止められました。
即座に振り返り、表情を確認しました。
すると柔らかな笑みを浮かべていて、
「今から食事でも如何ですか。深夜に営業している食堂があるんです」
「是非、お供させていただきます」
私は丁寧にお辞儀をしました。
こんなに嬉しく思うことはありません。
私は心の奥底から歓喜に満ち溢れ、頭の中でお花畑が形成されて、愉快なリズムが刻んでいました。
「喜んでいただけて何よりです。それでは行きましょうか」
「はい」
私とあの方はその場から消えました。
何一つ残らず、残さず。
まるで神隠しなったみたいに、木の葉の如く消え失せるのでした。
幻ではありません。
しかしそれに近い。
悠久の時を生きる者、そんな一説が面白いようにページをひたすらに捲る描写が思い浮かびます。
さて、何を食べましょうか。
やはり定食ですかね。
舌なめずりを合図に、私の中で弾けます。
天にキラり輝く星達が、瞬き共に私を映します。
あの子もそうですね。
似て香りがして、私は嫌いにはなりませんでした。
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