■212 〈ホシナリ〉
ホシナリ=星成
村が見えてきました。
長い長い道のりを越え、私達がやって来たのは山間の小さな集落です。
そこには観光スポット的な情報も何もなく、ただ上から見れば星の形のようになっているのが、ここ〈ホシナリ〉の最大の特徴でした。
「やっと着いたね」
私達は村の門前までやって来ました。
そこには星マークと〈ホシナリ〉と書かれた看板があります。
その隣には、
「奇跡の星が眠る地?」
と書いてありました。
何かのキャッチコピーなのかな。
触れ込みとしてめちゃめちゃ怪しい。
「見た限りでは、目立った特徴はなさそうだな」
「みたいですね。ですが、先程上から覗いた時は、大きな木の葉っぱが見えていましたよ」
「あー、あのちっちゃく見えたやつな。村の奥なんじゃねえか?」
Katanaとタイガーがそう答えます。
そんなのがあったなんて気づかなかった。
私は何故かピンときて、首を傾げます。
「如何したのマナ?」
「体調でも悪いわけないよな」
「その言い方なに!?」
ちなっちとスノーが心配してくれます。
けれどスノーの言い回しはちょっぴり棘があって、痛いです。
「大丈夫。行こう!」
私は元気全開で、皆んなを連れて村に入りました。
当然私が先頭で、率先してです。
「変なテンション」
「でも楽しいのはいいではないですか」
「場合にもよるだろ」
「お腹すいたよー」
その後ろを4人が続き、私達は〈ホシナリ〉に完全にやって来たのです。
しかし、
「普通の村だね」
「うん。普通だね」
〈ホシナリ〉は私達の想像以上に田舎村でした。
ただこの雰囲気が悪いわけではない。
それもそのはず、
「うわぁ!? この野菜、土がつきっぱなし」
「おう。さっき収穫して来たばっかの大根だ」
「こっちは人参!? じゃがいもも。これがいい。これがいいんだよ!」
「解るのか嬢ちゃん!」
「はい。やっぱりこれがいいですよねー」
タイガーは新鮮な野菜を見つけてうっとりしていました。
ほっぺを大根に擦り合わせていました。
「あれ、Katanaは?」
「あっちだ」
スノーが指を差しました。
すると村の奥の方でKatanaがスケッチブックと鉛筆を片手に何かを描こうとしています。
「何を描くのかな?」
「あの位置と姿勢、角度から推測するに、この範囲を写し取るんじゃないか」
スノーはカメラマンさんとかが、構図? でやるような動きをしました。
指を合わせてカメラのようにしている姿がスノーには合います。
「うわぁ、井戸だよ井戸」
「へぇー。井戸なんて見たことないね」
私とちなっちははしゃいでいました。
都市開発の進んだ日本だと、今時見ることがないからです。
しかしスノーはまるで話には乗って来ず、人間観察を始めていました。
「この村の金まわりは……ほどほどだな。商人の姿もある。しかしほとんどは自給自足と言った具合か。いや、待て。だったら如何やってここまで来たんだ」
「何が?」
私は悩むスノーに尋ねます。
深く考え事をしているようで、手伝えないかと思ったんです。
「あれを見てみろ」
「あれ? ただの馬車だよ」
「よく見てみろ。車輪が擦り減っているだろ。しかもところどころが傷んでいる」
「それが何かあるのー?」
ちなっちも話に加わりました。
スノーは解らない私達に教えてくれます。
「いいか、この土地を見てみろ」
「土地?」
「自慢ってことでしょ。うーん、砂地じゃないから走りやすそうだねー」
「そこもポイントだ。あの馬車の車輪。砂があまり付着していないだろ。つまり、この土地に来てまだ浅いということだ。洗っているなら、水滴があるはずで、そうでなくてもここの土地ぐらいなら車輪に傷はあまり入らない。ましてや、深くな」
スノーの着眼点はそれだけではありませんでした。
まさに探偵小説に出てくる、探偵さんです。
「あの馬は高山系を得意としている。脚の太さがそれを物語っているな」
「ホントだ。ちょっと太い」
「重たい荷物を長期に渡って運ぶからだ。サラブレッドなら、もっと筋肉隆々になるはずだ」
正直、馬の種類とか言われてもピンと来ません。
しかしスノーが言いたいことはそこではないみたいです。
「結局何が言いたいの?」
「忘れたのか。ここに来るまでの道中のこと」
「ここに来るまで? えーっと、モンスターに襲われて……」
「そっちじゃない。もっと後だ」
「もっと後? てなると」
一つしか考えられない。
「「あの大岩!」」
「そうだ」
如何やら当たったらしい。
私とちなっちも確かにあの大岩は変だと思ってた。何がとは言えないけどさ。
「あの大岩、最近のもののはずだ。過去のものだとすれば、あの商人の馬車がここにいるはずがない」
「そう言えばそうだね」
「不思議なこともあるねー」
スノーに言われてハッとなった。
「それに加えて地図で見た限りでは、あの道以外にない。なら如何してだ?」
「如何してって?」
「あの商人がここに滞在してそう長くないことは、身なりでわかる。だが、私達が来た時には大岩があった。村人はそれにすら気づいていない。つまりだ」
「誰かが意図的にやったとか? それか……」
「自然の摂理か。どちらにせよ、謎は残る。まるで私達を試すような配置にな」
あの大岩は確かに変だった。
特定の人じゃないと壊せない。
そんなの普通の人は無理だし、如何やっても通れない。
それにーー
「Katanaのあの動きも気になるもんね」
まるで誰かいたから振り返った。
そんな様子を今更だけど不気味に感じ、私達は誰かに試されているんじゃないのかといういわゆる恐怖心に苛まれていた。
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