■210 ホシナリ山道
ホシナリに行くよ。ここから長いよ。意味あるよ。
その日、私は変なテンションでした。
「ふっふふーん。ふふーん」
「気分いいね、マナ」
「うん!」
私はかなり愉快な気持ちでした。
心が弾むようで、これから行く町に何かしらの思い入れがあるわけじゃないけど、ビビッと来たんです。
だって、
「ホシナリだよ。星の形してるんだよ!」
「それはそうだけど……」
「まさかこんな山奥にあるとはな」
スノーが愚痴を溢します。
そもそもあの地図を見た時、私がここに行きたいって言ったのに誰も遠慮しなかったんだもん。
それにほら、
「楽しみですね」
「名産何かなー。楽しみだぜ!」
Katanaとタイガーはノリノリだった。
2人ともこの傾斜の急な坂道も何のその、軽快な足取りで登っている。
それからちなっちもだ。
「ほらほら。体力がないのは、私達だけなんだから」
「チッ」
スノーは舌打ちをした。
そんな私とスノーを見て、何か思うところがあったのか、ちなっちは、
「ほらほら行こ行こ」
「おい、背中押すな」
「痛い。痛いから!」
まさか背中を押さえるなんて。
しかも痛い。痛すぎるよ。ちなっちはスピードだけじゃなくて、パワーもあるから急に力をかけられて、体が痛かった。
しかも上り坂なんだもんね。
「そんなに気を落とさないの」
「落としてはいない。ただ……」
「ただ?」
スノーが言いたいことを予測した。
すると、
ガウガァ!
急に岩が転がってきた。
かと思えば、岩がアルマジロの姿に変わった。
「何これ!?」
「やはり来たか。おかしいと思っていた」
スノーが警戒していたもの。
それは考えればすぐにわかった。
「ここに来るまでモンスターに出会わなかったもんね」
「そう言うことかー。って、岩のモンスター?」
ちなっちは首を傾げた。
岩のモンスター。つまり斬撃系の攻撃が効きにくいのだ。
「コイツはイワマジロ。ミツオビアルマジロがモチーフのモンスターで、背中が岩になっている。つまり、全身が岩の鎧で覆われてるってことだな」
「じゃあ斬撃系は……」
「厳しいな」
だったら前に出るのは1人しかいないよね。
指示を出す前に、先手必勝な一撃を放った。
「おんどりゃあ!」
タイガーが思いっきり殴りかかった。
するとイワマジロは背中を丸めて、鎧にする。
しかしタイガーの一撃は相当重く、鎧を破壊するには十分すぎた。
グギュァ!
「酷い」
「惨い」
私とちなっちはそれって同じ顔をした。
しかし砕けた岩の破片が飛び散ると、ちなっちは即座に抜刀。
岩の破片を的確に双剣で打ち落とす。
「まだ来るぞ!」
スノーは弓を構えていた。
矢は的確に肉質の柔らかい部分に入り、Katanaはそれに合わせて矢を奥まで押し込んだ。
「今度は3匹ですか。はあっ!?」
するとイワマジロは自分から丸くなって、体当たりをした。
しかしKatanaは逃げることはなく、刀を抜刀する。
「龍蒼寺流剣術漆ノ型“粉雪”!」
左からの逆胴に、イワマジロは巻き込まれた。
まるで粉雪のようにサラサラとしていて、ほんのひと時の隙間を裂いたみたいだった。
「よーし、私も!」
〈麒麟の星雫〉は使わず、〈波状の白星〉で衝撃波を送る。
イワマジロは衝撃で吹き飛ばされ、そこに拳を叩き込んだ。
【体術】と〈暗縫の黒星〉を使ったことで起こった闇が、イワマジロを身動きの一つも取れなくして粒子に変えた。
「ふぅ」
「これで最後!」
タイガーは無鉄砲に戦った。
その結果襲ってきたイワマジロの群れを次々に倒していき、私達の経験値に変わった。
「あっ、レベル45超えたよ」
「私は48だな」
久々にレベルを確認してみた。
正直このレベルが最近じゃ技術で補えるようになってきたから、スキルと同じで使う機会も少なくなった。
けれどやっぱりレベル上げは楽しいし、嬉しい。
「でもホシナリに行くのに、関係ないんだね」
「関係ない?」
「モンスターの種類だよ。イワマジロって普通……って言うか、アルマジロだよ!」
私の疑問はそこに尽きた。
するとスノーは興味なさげな様子で、
「そんなこと関係ないだろ。とにかく早く行くぞ」
「あっ、待ってよ」
「待つ待たないじゃない。こうしている間にも次のモンスターに集まられても困るだけだ」
確かにそれは言える。
私は自分を抑えつけると、スノーの後に続いた。
ちょっと疲れてしまったけど、でも楽しいことに変わりはない。
少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。
下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)
ブックマークやいいねなども気軽にしていただけると励みになります。
また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。




