■21 アプデ後①
ストックが7本出来たので、1本目です。
伸びが悪いので、しばらくこの時間に上がるかも。
アプデのあった次の日。
私は先に〈WOL〉にログインしていた。
するとそこに広がっていたのは以前と何ら変わらない街の様子だった。
「うわァー、街は全然変わってないんだ」
驚く私。
大型アップデートだったので、街の様子もガラッと変わるのかと思いきやそんなことはなかった。
しかしパッと見、何が変わったのかよく分からない。
「何が変わったんだろ」
そう思う私。
すると聞こえて来たのは見知った声だった。
「ちわーっ、マナ」
「ちなっち!」
やって来たのはちなっちこと千夏ちゃんだった。
彼女は私に手を振ってやって来る。
「どうしたの?こんなところに突っ立って」
「うん。大型アップデートあったよね?」
「うん」
「全然変わってないなーって、思っちゃって」
私はそう伝えた。
それを聞いたちなっちはクスッと笑った。
「何がおかしいの?」
「いや、別に。ふはは」
「ちなっち?」
「そんな街並みが丸ごと変わるわけないでしょ普通。リアルで起きたら大騒ぎなことが、ゲームだからって日常茶飯事に起きないって」
「そうなの?」
「そうだよ普通。だって急にあったお店が次の日には無くなってることはあるけど、街の雰囲気や造りが全体的に変わっちゃうことってそうないでしょ?それとおんなじ」
「そうなんだー」
ゲームだからと言ってガラッと雰囲気がチェンジすることはない。
新しい発見だ。
感心する私と、未だに笑いを堪えているちなっち。
そんな構図を傍目から見たら不思議でしょうがないだろう。
「じゃあさちなっち。具体的にはなにが変わったの?」
「うんと、確か新しいクエストが出たんじゃなかったっけ?」
「新しいクエスト?」
「うん。なにが増えたのかは知らないけど、だいたいこう言うアプデの際はそこそこ大きなイベントが追加されるものだよ」
「そうなの?」
「うん。ソーシャルゲームだったら、ユーザーを飽きさせないようにするためにもよく取り扱われる手法だよ」
私はソーシャルゲームもあんまりやらない。
と言うか私のスマホには入っていない。
その程度だった。
それなのにパソコンだけは一般家庭にあるものよりもスペックが良い。それが私の家の特徴だった。
「他には?」
「後はそうだね。あっ、新しいスキルとか!」
「スキル?」
「うん。こっちもよくわかんないけど、またスキルが追加されたっぽい。しかとメチャクチャハードル高いやつ」
「それはきつそうだね」
「うん。まあスキルなんて欲しくて取れるような代物じゃないからねー」
ちなっちの言う通りだ。
この世界。と言うかこのゲームでのスキルの習得はそこそこ難しい。
無理難題のような偶然を引き寄せるしかなかったら、自分の待ち合わせる技術や技量がそのまま反映される。
スキルゲー?ではないにしろ、スキルは配布でもないので努力と幸運で賄うしかなかった。
それはつまりスキルに頼れないことになる。
「未だにスキル持ってないプレイヤーも多いでしょ」
「そうだよね。私達は偶然スキル取れたけど」
「うん。そもそもスキルの存在すら知らない人だっていそうだしね」
「それはそれで寂しいね」
「まあね。でも無闇に知って中毒になるよりはマシでしょ」
「そんなの当たり前だよ。何倍もマシに決まってるよ」
私は怒鳴った。
このゲーム一応課金はあるが、課金と言う課金ではないらしい。
そもそも課金する意味がない。
課金出来るのは単純なもので、生産系の人が使うようなレアアイテムだ。
それにそのアイテムがなくても遊べるし戦える。ただの見栄えと見栄にしかならない。
ではどこで収益を得るのかだが、答えは簡単だ。
話題と知名度。それから広告を大々的にすることでお金を稼ぎ、後は通信力を取っているとか。そんな感じだった。オンラインの特性を上手く利用していると、ネットの記事にあったのを思い出していた。
「まあそんな感じで色々増えたわけだけど、一番はやっぱり」
「ギルドだよね!」
「そうギルド。スノーには連絡ついたんだよね?」
「うん。急いで向かってるって」
「そっか。じゃあそこのベンチに座って待ってよっか」
「うん!」
私は大きく頷いた。
かくしてこれからギルド設立に向けて動き出す準備を固めるのだが、そんな時だ。
「おい!」
野太い声がした。
急なことだったので、クイッと顔を上げるとそこには男の人達が三人いた。全員種族もバラバラだ。
何か用かと思い、私は声を出した。
「なんですか?」
そう言うと男の一人がこう言った。
「お前の持ってるアイテム寄越せよ!」
そんな無理難題の無茶振りを急にふっかけられたのだった。




