■209 スーパーボール
今回はめちゃめちゃな話。ファンタジーを通り越して奇妙。
ある日の帰り道。
私と千夏ちゃんは偶然近所の駄菓子屋さんに寄ってみることにした。
「こんなところに駄菓子屋さんがあったんだ」
「知らなかったねー」
普段通らない道なので知らなかったけれど、脇道に入ったら昔ながらの商店街があった。
不思議だ。だけどレトロな雰囲気がまた愛おしい。
「ちょっと入ってみようよ」
「そうだねー」
私達は駄菓子屋さんに入ってみることにしました。
ガラガラガラ。小刻みな引戸を開く音。テレビでしか聞いたことないやつだ。
「凄いまだ風鈴出してるよ」
引き戸のすぐ近くの軒下には風鈴が吊るされていた。
もう夏はとっくに過ぎ、秋頃。
11月の寒々しい気をより一層寒くしようとでも思っているのかな。逆に寒さを助長して取り切ろう的なノリでさ。
「おっ、見てよ愛佳」
「なに?」
「これこの前テレビでやったたやつだよ。確か生産終了しちゃった」
「イカ酢タコだ!イカなのかタコなのかわからない駄菓子」
イカ酢タコ。
昔からある大手のお菓子メーカーが売っていた駄菓子で、確か凄い人気があったはずだ。
一時期はブームを読んだそうだけど、最近ではスーパーでもめっきりみる機会が減った。
「面白いよね。イカすタコだもん」
「いけてるタコってことだよね。足も8本あるし」
製造が終了した理由は世知辛いものでした。
製造ラインを他のお菓子にあけるため。
人気はあったものの最近の子供にはウケがあまり良くなかったみたいで、食べる機会もないまま見る機会も無くなった。
「芸人さん達が食べたたよね」
「うん。しかも20円だよ」
「本当だ」
値段も駄菓子らしくめちゃくちゃ安かった。
さらに私は隣のお菓子も気になった。
「プチプチプリンだよ!」
「それって本格プリンの?本当だー」
プチプチプリンも同じ番組でやっていた。
値段は30円と少しだけ値段は高いけど、全然買える。
カラメルソールが見事な味わいで、濃厚なプリンと合わさって口の中でとろける。そんな触れ込みだった。
「ここって凄いね。見つけてよかったよ」
「何があるかわからないよね。ん?」
千夏ちゃんは気になるものを見つけた。
お店の側にひっそりと置かれたそれは、古い型のガチャガチャだった。
私も気になって見てみる。
「うわぁー、年代ものって感じだね」
「プラスチックじゃないよ、これ」
確かにプラスチックじゃなかった。
ちょっと冷たい。
「ステンレスかな?」
「ひんやりしてるからそうかも」
中身を見てみると、スーパーボールが入っていた。
色とりどりのスーパーボール。そう言えば最近は遊ぶ機会もないかも。
「1回20円だよ」
「私やるよ」
財布から10円玉を2枚取り出して、投入口にイン。
ダイヤルレバーを回して、中から出てきたのは剥き出しの黄色いスーパーボールだった。
「ほら!」
ポヨーン
「結構跳ねるね」
「私もやろっと」
かなり良く跳ねるボールみたいだ。
私が買ったのを見て感化されたのか、千夏ちゃんも買うと赤色のスーパーボールが出てきた。
他にも中には青や白、黒なんかの珍しいものもある。
「何だか私達みたいだね」
「5色ってこと?」
「そうそう。だってこんなに種類があるのに、自分のトレードカラーを引いたんだよ」
「確かに!」
千夏ちゃんはポンと手を叩いた。
私達は結構いい買い物ができた。
だけどお店の人がいる様子はない。
「すみませーん!」
呼んでみたけど返事もない。
このままお金だけ置いて買えるのもあれなので、今日のところは帰ることにした。
ガラガラガラ
軋む音を立てる引き戸を開け外に出る。
振り返ればレトロな雰囲気の駄菓子屋さん。
「また来ようね。今度は皆んなで」
「そうだねー」
私達は買ったスーパーボールをポヨーンポヨーンと弾ませて遊んでいた。
このレトロな雰囲気。
まるでゲームの中みたいな不思議な空間に迷い込んでしまったみたいだった。
「こんなにファンタジーなことがあるんだね」
「何言ってるの。私達だってファンタジー体感してるでしょ」
「確かにー」
千夏ちゃんがそんなことを言い出したので、訂正する。
さてとこれからログインだ。早く帰って準備しないと。
誰もいないレトロな町並み。
路地裏の先にあった不思議な異空間で、私達は思いもよらない出来事を体感した。
それが何とも嬉しくて楽しくて、心から清々しい気持ちになってリフレッシュしたのでした。現代っ子なんだけどね。
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