■208 勝因
今回は後始末的なノリ。
確かにアメフラシは死んでいた。
体が収集していて、まるで岩のように同化している。
「本当に皆んなで倒しちゃったんだ」
「まあねー」
「ごめんね」
ちなっちの垢抜けた返答に、私は辛くなった。
しかしスノーが、
「気にするな。倒せたのは偶然の産物だ」
「偶然?」
「そうだぜ。スノー、なんで倒せたんだよ!」
タイガーがキャラを作って、スノーに尋ねる。
するとスノーは自分でもよくわかっていないような顔色になるものの、何とか振り絞って答えた。
「私がKatanaに海を割れと言ったのは覚えているな」
「はい。まさか本当に割れるとは思いませんでしたが」
「悪かったな。だがそれでよかった。これはモーセの海割りをモチーフにしただけだ」
「モーセ?」
なんか聞いたことあるような。無いような。
あやふやな記憶だった。
「やはりそうでしたか。では十戒の?」
「そうだな。モーセは神から十戒と言う啓示を授かり、一番有名なものとしてモーセの海割りと言って、聖書の中の一説としてイスラエル軍を連れてエジプト軍から逃れる際、杖を使って海を真っ二つに割り逃げ延びたと言う話がある。それを元にして、海を割らせた。そうすることで、海上の一部が空白になり、残りが空中に巻き上げられることになるからだ」
何を言っているのか、さっぱりだった。
しかしスノーとKatanaはこれ以上はないぐらいに満足そうだった。
けれどそんなことだけで、勝てないかな?
「で、なんでちなっちにクロスファイアを使わせたんだよ」
「あくまで海水を巻き上げるために必要だったからだな。クロスファイアを使ったのは、予想していなかったがな」
スノーはちなっちを見た。
「もしかして塩を手に入れるため?」
「そうだ」
「あー……ん?」
ちなっちはわかっていなかった。
だけどもしかして、
「塩で固めるとか?」
「そうだ。しかし溶かすためじゃない。わかるか?」
「えーっと、ん?」
今度は私も置いてけぼりになってしまった。
しかし、
「なるほど、塩蒸し焼きか」
「「塩蒸し焼き?」」
タイガーは気づいたらしい。
「そうだぜ。塩で肉を固めて、蒸し焼きにするんだよ。って、まさか!」
タイガーはさらに先に気づいたらしい。
すると顔色が急に悪くなって、吐きそうになっていた。
「タイガー!?」
「大丈夫ですか」
私とKatanaがタイガーに近づき介抱する。
すると小声で、
「それ本当。本当にそんな恐ろしいことを……怖っ」
「怖い?スノー、どう言うこと!?」
私はスノーに対して、怒鳴るように尋ねた。
すると我が物顔で、
「大したことはしていない。塩を全身にまぶし、高温で蒸し焼きにしただけだ」
「高温で蒸し焼き……寒暖の変化!」
「そう言うことだ」
さっきまでの話の流れから大まかに察すると、こうだ。
まず、Katanaが海水を巻き上げる。
その段階で既に大量の水を被り、全身のぬるぬるも合わさってかなり冷たい状態になっていた。
そこに塩と水に分解された海水の塩分がアメフラシの体に纏わりつく。ぬめりけのせいで塩は絡みついてしまい、そこに高温が襲い掛かる。
すると逃げることの出来ない強烈な熱気が上と下から叩きつけるように食らわされ、アメフラシは逃げることもままならずに縮むように絶命したのだろう。
「怖いこと考えるね」
「それしか手段はなかった。もっとも、あの大雨の影響と津波によって海水は真水と統合していたからな。この戦法に気付くのにはそう時間は掛からなかった」
淡々と今回の勝因を語り合えたスノーは抜け殻のようだった。
「とにかくこれで面倒事からは解放された。とにかく早く帰るぞ」
「えっ、もう!?」
「一度パスだ。今日はくたびれた」
スノーは自由だった。
でも私以外の4人は精神的にも参っているみたいで、大いに賛成する。
けれど何もしていない私はまだまだ絶好調で、
「だったらお前が報告して来い」
「私1人で!?」
「そうだ」
スノーはそれから帰ってしまった。
そしてちなっち達も、
「ごめんねー、マナ」
「お願いします」
「頼んだよ」
3人ともくたびれた様子だった。
それを見届けた後、私は仕方ないなと思い、
「と言うことがあったんですよ」
村に戻っていた。
「なるほど。ではもう」
「はい大丈夫なはずですよ」
そう報告し終えると、村の人達は喜んでくれた。
しかし私はその間何もしていなかったので、よくわからないまま空気に溶け込むことにしました。
少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。
下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)
ブックマークやいいねなども気軽にしていただけると励みになります。
また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。




