■205 大怪獣アメフラシ
アメフラシって知ってる?
〈ウミノアマ〉の人達からの激励的な送り出しを受けた私達は、後にも引けないクエストだったので、仕方なくと言う気持ちも込めて、近くの磯に向かった。
「ここでいいのかな?」
「ここ以外に磯はないからな」
「ぐるっと一周したもんねー」
ちなっちの言う通り、私達は磯がどこなのか分からず一周する羽目になった。
ただ大陸とは言っても、ほとんどが島のようなもので、一周に1時間30分もあれば余裕だった。
そこで見つけたのは、最初の程近い所だった。
「まさかここなんてね」
「そうだねー」
「ったくよ。面倒ごとになりやがって。はうっ、まだベトベトするよ」
タイガーが唸る。
確かに髪の毛もべっとりしていて、気持ちが悪い。
「体も重いよね」
「うん」
ちなっちが言う通り、体が天然の鉛のようだった。
全身が気怠くて、早く終わらせて帰りたい。
「よし、行くぞ」
「ちょっと待ってって。まだ敵が何かもわからないんだよ?」
「何を言っているんだ。もう見えているだろ」
「えっ!?」
「あー確かに。やっぱあれかー」
スノーやちなっちは気づいていた。
私は置いてけぼりで、目を凝らした。すると黒っぽい何かがニュルニュルと動いている。あれはーー
「村の人は言っていただろ。ふんぞり返っている。だったらすぐにわかる」
「そうそう。で、あれがそうなんだなーって」
「ちょっと待って。もしかして、もしかして!」
「そうだ」
私達は高低差のある高台から磯を見下ろした。
するとそこには石の上を巨大な何かが這っている。
波打ち際と言うこともあり、濡れることも厭わない。それはーー
「アメフラシ。これがその正体だ」
そこにいたのは巨大な黒っぽいヌルヌル。
スノー曰く、それはアメフラシと言うモンスターで、現実にも存在している生物だった。
特徴は確か、
「危険を感じると紫色をした液体を出し、自分自身の分身を即座に作りカモフラージュ。その隙に逃げる。元は貝の中まで、分類もそれだ」
「よく海岸とか磯とかにいるよね」
「ああ。だがあそこまで巨大になるものはいないはずだ。ざっくり計算すると……」
「全長が約7メートルですね」
Katanaが即座に測った。
計算ではなく、パッと見の大きさを刀の長さで測ったんだ。
「うわぁ、おっきいねー。見なよマナ」
「・・・」
「マナ?」
しかし私は目を逸らしていた。
その理由は至ってシンプル。何故なら私は、
「駄目。私、ああいうヌルヌルした生き物嫌いなの!」
「「「えっ!?」」」
私はとんでもないことを言って、皆んなを困らせた。
「カタツムリとかナメクジとか、アメフラシとか、そっち系が嫌いなの!」
「いや待て。あれはモンスターだぞ」
「ごめんって。でも今回は皆んなだけでやって。私を当てにしないてよ!」
完全に言い切った。
するとスノー達は呆れるような目で私を見るが、そっぽを向いて膝を抱えてうずくまる。
それを見たちなっちは、
「こうなったら駄目だねー。そっかー」
「困りましたね」
「ああ本当に困った」
「マナちゃんがいないと、1人分の抜けた穴が……」
「そうじゃない」
スノーはもっと重要なことに気がついていた。
しかしマナの耳に入ることはなく、残りの3人を近くに集め耳打ちした。
「マナがいないと、運気が下がる」
「どういうことですか?」
「あっそっか。うわー、こりゃ大変だぞー」
「だから、なに?」
スノーとちなっち。Katanaとタイガーの間で解釈が相互する。
そんな中、アメフラシは頭を持ち上げると、口から紫色の液体を吐き出した。
「なんか吐き出した!?」
「見ろ。周りの石が溶けていくぞ」
溶解液。
それがとても高いニュアンスで、アメフラシは口から吐いた紫色の液体を周囲に撒き散らすと、ドロドロに溶かしていた。
あんな相手と1人分いない状態で戦うのか。
渋い顔をする。
「仕方ない。やるぞ」
「そうだね。スピード上げて倒さないとヤバそうだ」
ちなっちも本気の口調に変わっていた。
その理由を2人は把握している。
自分達のパーティーはそれぞれの役割と、それぞれの技能が一緒になるから強いのだ。
それこそ、このパーティーが今まで楽に勝ってきたのには理由がある。
それこそがマナの存在だと、2人は誰よりも早く察しており、武器を急いで取り出すと、
「じゃあ行ってくるね」
ちなっちはマナの肩に手を乗せた。
マナはなにも聞かないように耳を塞いでいて、ちなっち達はアメフラシに突撃した。
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