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■204 〈ウミノアマ〉の祈り

ウミノアマとは適当に思いついた言葉です。

海の天です。

 村まで吹き飛ばされた。

 ちょうど入口のところで倒れていたので、この村に行けの言うことだったのだろう。


「ここって……」

「ウミノアマ?」


 それって私達が目指してたやつだ。

 まさかの出来事に素直に喜ぶべきか否か微妙だった。


「とりあえずここをくぐれば、ポータルに登録される」

「じゃあ。ほいっと」


 私はつま先を入口に通した。

 これで一応ポータルとしては登録できたはずだ。

 しかし、このまま帰るのも惜しい。

 それにしても不気味な雰囲気が出ているね。


「これなに?」

「それは(ぬさ)ですね」

「幣?」

「はい。他にも御幣などと呼び方はあります。祈祷の際などで使われるものでね」


 Katanaはそう説明してくれた。

 しかし祈祷(きとう)ってことは、何かあったに違いない。


「でも奇妙だよねー」

「なにが?」

「だってさこんなに外に置くかな?普通置かないよね」


 ちなっちの指摘はもっともで、村の入口を取り囲むように幣が幾つも置かれている。

 さらには篝火が焚かれ、危ないにも程がある。

 だが村の人達は一切気にしていないのか、中から出てくることはない。


「明らかにヤバそうだよ」

「そうだな。だが、ここで戻るにも……」


 スノーはチラッと背後を気にしていた。

 タイガーが踵を返すが、その瞬間、


「うわぁ、なんだ!?」


 透明なバリアが貼ってあるみたいに戻れなくなっていた。

 どうやら、私達をここに飛ばしたお坊さんが関係しているに違いない。


「行くしかないんだね」

「仕方ないな」


 スノーは完全にテンションが下がっていた。

 それでも行かなければならないが、あのお告げのような文言、どういう意味だったんだろう。


 村は静かだった。

 それでいてとても暑かった。


「暑い……」

「それになんでしょうか。体に何か纏わりつくような……」

「うわぁー、これ塩じゃねえか」

「塩?」


 タイガーはグデーンとしていた。

 この熱気、セリアンスロゥプのタイガーには厳しいのか、尻尾の先や耳にはベッタリと汗が染み込む。


「なんで塩?」

「なるほどな。海水を熱することで蒸発して残った塩が溜まったんだろう。いわゆる天然のサウナというやつだ」

「天然のサウナって。全然整わないよ」

「知らん」


 私の問いかけにスノーは適当で返した。

 如何やらこの蒸し暑さでかなり滅入っているらしいが、1人だけピンピンしている子がいた。


「なになに。皆んな元気ないよ!」

「ちなっちは元気だね」

「こんなの夏場の練習に比べたら全然だよ。ほらほら行くよ……何か聞こえる?」


 私達はもはや暑さで頭がまともに働いていない。

 そのため、耳鳴りみたいにしか聞こえてこない。


「ちょっと見てくるよ。はぁっ!?」


 ちなっちが叫んだ。

 何事かと思い私達も追いかけると、そこで行われていたのは白装束を着た村人達が、大きな大きな篝火に灯る火の柱に向かって、手を合わせて祈祷をしていた姿だった。

 あまりに突然のことで驚いてしまった私達。

 しかしその姿に気がついた村人の1人が、ハッとなった。


「勇者様……」

「勇者様?」

「勇者様方が来てくださったぞ!」


 何のことだろう。

 あたふたする前にポカンとしていた私達だったが、何故か取り囲まれてしまい、余計に蒸し暑くなった。


「ちょっと、なになになんの話!?」

「勇者様。ついに来てくださったのね。待っていましたよ」

「待ってたって、私達のこと?何か人違いしてるんじゃないの?」

「そんなことありませんよ。噂通りのお顔です。見た目は違うようですが」

「見た目?」

「はい。衣類の種類が」


 ヤバい。頭がおかしくなりそうだ。

 これもクエストの一部で、仕様なんだとすると理解できるが、考えようとするだけで無駄だと思った。


「とにかくです。勇者様、どうか我々をお助けください」

「何かあったのか?」

「はい。災いがこの村を襲い、塩に汚染されて野菜ができないのです」


 話によれば、村を突然の豪雨が襲い、雨に異常な量の塩分が含まれていて、そのせいで野菜が育たなくなったのだとか。

 そりゃ海水で野菜を育てるなんて普通じゃない。


「可哀想……」

「助けてやろうぜ」


 私達はこの場で一番感受性の薄そうなスノーに視線をずらした。

 すると、


「わかっている。どうせそのクエストをクリアしないと帰れないんだ。やるしかない」

「ありがとうございます。勇者様方、災は磯にふんぞり返っております。どうか、どうか討伐を」

「はぁー」


 スノーの大きなため息。

 村人は面倒そうにしているスノーを変に悪く言ったり、咎めることもなく、何故かすんなり見送られてしまった。

 すると先程は戻れなかった道に出ると、仕方なくといった具合で磯に向かうのでした。

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