■2 VRドライブって?
とりあえず4話までは予約投稿しました。
黒い箱を凝視する。
そこそこの大きさで、中には千夏ちゃんの家で見たVRドライブ本体とヘッドホン型のアイテムが入っていた。プラスで何かのゲームのダウンロードコードが入っている。
「コレ何のゲームだろ」
私はゲームパッケージを見た。
するとそこには千夏ちゃんの家でこれも見た〈WORLD OF LIFE〉の文字。〈WORLD IS LIFE〉じゃないのが気になるが、まあそんなことは置いておく。
とにかく折角貰ったんだ。遊ばない手はない。それよりよくお父さん達こんなの手に入れられたなと思う。新手の詐欺を疑ったが、如何やらそんな様子はない。私は思い切って遊ぶことにした。
「うーん、まず何からしたらいいんだろ」
とりあえず説明書を読んでみることにした。
取説にはまずはVRドライブの設定作業だった。
「設定かー。難しかったら如何しよう」
子供も遊ぶものだからそんなに難しくはないと思うけど、設定作業って何にしても難しい。
機械音痴ってわけじゃないけど、あんまり慣れてないものを触るのは正直怖い。間違えたら如何しようっていう人間の心理を突いてくる。
私はそんな迷いは吹っ切ることにして、とりあえず取り出した本体をいじってみることにした。
「うーん。どれが電源かな?」
取説を見ながら本体の電源を入れた。
すると青白く蛍光ランプがライン上に点灯する。このゴーグルも同期させる必要があるらしくゆっくりやっていくことにした。
「えっと、まずはゴーグルと同期させるっと。如何するんだろ」
取説のページを一つ進め、ざっと読む。
如何やらゴーグルを付けた状態で決められた手順で合わせて行くらしい。コードとかついてないので、Wi-Fi接続みたいな感じだろうか。
サクサクと同期を終わらせた私は、次に手足を触って身体情報を覚えさせる。網膜認証に指紋認証。おまけに学生証を使って名前とかも登録した。こうしてようやく初期設定を追わさせた私は、次にゲームのダウンロードをする。
「ダウンロードコードはっと……」
ゲームのコードを直接本体に送る。
データとしてではなく、メモリーカードみたいな小さなチップが入っていてそれを本体に挿し込んでデータを移す仕様になっているみたいだ。
私は〈WORLD OF LIFE〉を本体に読み込ませる。
意外にもすぐに終わり、要らなくなったカードは廃棄して良いらしい。でもちょっと勿体無いので、元に戻して取っておくことにした。
「意外と簡単だった。何であんなに不安だったんだろ?」
大抵そう言うもんだ。
不安に思っていることも終わってみれば呆気ない。それぐらい簡単に済むことの方が世の中多いのだ。
「さーてと、登録も終わったし。後は明日にしよ」
時刻はもう深夜1時を回っている。
こんなに夜更かしするのは久々だ。両親が家にいない分、夜更かしもし放題だけど誰も起こしてくれないので毎日の生活リズムにすぐに支障が出る。
体を無理をして壊しても良くないので、残りは起きてからにして私は早々にベッドの中に潜った。
「ふみゃあー、寝よ」
私はVRドライブ達を床に置き、ベッドの中に入る。
するといつにも増して疲れていたのか、自然と意識が夢の中に落ちて行った。こうして夜が明けるのを待つ私だった。
朝になった。
時刻は朝の7時。いつも6時に起きているのに今日は少し遅かった。深夜までなれないことをしてそのせいで少し遅い時間に起きてしまったのだろう。
昨日のうちにゴミ出ししておいてよかった。
「ふみゃあ、朝ご飯作んないと」
私は寝ぼけ眼で目を擦り、一階に降りる。
妙な癖がついてしまった栗色の髪が乱れる。ショートだからそんなに乱れるはずないし、寝癖ってほど酷くもない。そもそも私、自分で言うのもなんだけど寝相は悪くないと思うんだけどね。
歯磨きをして、うがいをして、それからキッチンに立って作るのは目玉焼きとトースト、それから簡単なサラダ。
目玉焼きは半熟ぐらいになるように熱を調節し、トーストを焼いている間にサラダを作る。ドレッシングも市販の中華ドレッシングをトマトとレタスに和えただけの簡単な物だった。
部屋の掃除もテキパキと済ませ、気がつくと朝ご飯の支度が終わっていた。
「いただきます」
手を合わせてご飯にする。
一人きりのリビング。そこに一人でいるのはちょっともの寂しさがあるけど今時こう言うのは普通だし、私ももう慣れちゃった。でもほんのちょっとだけ寂しくもあるのは確かだ。
「ごちそうさまでした」
食事を終え洗い物をする。
掃除も終わったしゴミ出しもない。宿題も昨日のうちに終わらせたので、後やることは特にない。
こうして全てのルーティーンを終えた私は自分の部屋に戻ると、床に置かれていたVRドライブに目が留まる。
「あっ、忘れてた」
私はVRドライブとゴーグルをセットで手に取りゴクリと喉を鳴らす。
折角登録も済ませたし遊ぶ気満々だった。折角だし今行ってみようかな。私はゲームの世界にダイブするべくゴーグルをかける。そして起動のための合図を口にした。
「えっと確か……アクセス!」
その言葉を強く発すると、私の目の前が突然眩く輝き始めると、私の意識は闇の中に吸い込まれた。
力なくベッドの上で横たわり、腕がデーンと置かれる。こうして私は初めての体験をすることになるのだった。そうそれは仮想空間と言う全く知らない世界に飛び込んだ証だった。