■199 ナミカゼ
タイガーの行動力が光る!
次の日。
私達はスノーを頼りに、港町〈ナミカゼ〉にやって来た。
「うわぁー」
「潮の匂いだねー」
そこは風情豊かな港町だった。
海の上に造られた堤防や丘の上の灯台。
それから船着場には、たくさんの漁船の姿があるが、そのどれもが現実のものとは違っていて、よく見る鉄板のものは少なく、木製の船が多かった。
「いい景色ですね。絵に描き留めておきたいです」
「あっ、いいねそれ!」
「後にしろ。Katana、お前は描き始めたら長くなるタイプだろ」
「はい。凝ってしまいますね」
「なおさらだ」
スノーは淡々としていた。
Katanaも自重したらしく、目を閉じた。
「でもさー、この町って何かあるの?」
「船がある。ここから他の大陸に直通で行ける。が、私達の経路図はかなり遠回りだ。だが、1ヶ月もあれば十分埋まる」
スノーはマップを見ながらそう答えた。
経路図には赤線で道標がしてある。多分あれから色々調べたんだ。
知らない文章が書き留められている。
「ありがとう、スノー」
「感謝されることでもない。これは私が好きでやったことだ」
そう言うスノーだけど、少し照れ臭そうだった。
そこがまた可愛くて、愛くるしい。
なんて、友達同士のじゃれ合いを踏まえた上で、とりあえず町の方に足を運んでみることにした。
「結構、人いるね」
「閑散としていると思っていたが、如何やら違うらしいな」
スノーも把握していなかったらしい。
それは少し意外だ。
だけど、行き交う人達は他に何かを持っていた。
「すみません、それなんですか?」
「これかい?これはね、モードリ鰹だよ」
「モードリ?」
「鰹!?」
それを聞いていち早く反応したのは、タイガーだった。
もちろんと言えばもちろんだが、今日の反応はいつもと違う。
「あの、モードリ鰹って?」
「脂の乗ったオオオニ鰹だよ。今年のはかなりのビッグサイズで、お客さんも多いみたいだよ」
「そうなんですか。ありがとうございました」
「君達も、余裕があったら食べてみるといいよ」
NPCのお兄さんは、そう言って何処かに去っていった。
「イベントみたいだね」
「そうですね。それで皆さんは如何なさいますか?」
「如何って……」
「もちろん行くぜ!」
タイガーが真っ先に答えた。
皆んなだろうなと思いつつ、人だかりの中に飛び込んだ。
しかし私達が先頭に着く頃には、
「すみません、今日の分はもうおしまいで。また明日来てくだせぇ」
「えー。がっくし」
タイガーが背中から折れた。
心の音がポッキリとしなしなになって、元気が見るからになくなる。
「残念だったね。また明日来ようよ」
「う、うん。はぁー」
タイガーは大きなため息をついた。
それを間に受けたのか、私達はタイガーを可哀想に思う。が、こんな時だからこそタイガーは諦めない。
いつにも増して、やる気を振り絞り、私達にこう言った。
「だったら、今から獲りに行こうぜ!」
「えっ?もしかして、釣りに行くの」
「察しがいいじゃねえか。ほら行くぞ!」
「ちょっと待ってよ。獲りに行くって言っても、海に出るんでしょ?船なんて借りてないよ」
「今から借りればいいんだよ。任せとけ」
タイガーは私達の静止を押し切り、港に行ってしまった。
こうなったタイガーはもう駄目だ。
これだけの実行力を内包しているからこそ、タイガーが本気になった時の馬力は恐ろしい。なんてことを、前にスノーが言っていた。
だが、それをこうして目の当たりにするとやっぱりタイガーは頼りになる存在だった。
「何だか面白いことになったねー」
「うん。それにそれに、釣りってことはタイガーが調理するんでしょ!楽しみだなー」
「はい。私もタイガーさんの魚料理はかなり美味だと思います」
「それは言えるが、これだけの実行力をリアルでも発揮して欲しいものだな」
スノーは皮肉めいた言葉を吐き捨てる。
するとちなっちとKatanaは互いに目を合わせる。
「それはー」
「それはですね……」
2人は黙り込む。
しかし私はスノー達に注意するように、
「そんなこと言っちゃ駄目だよ。タイガーはタイガーなんだから。人には向き不向きがあるんだよ」
「アドレナリンが出まくったタイガーは怖いと言う話だ」
「あっ!?」
それは、そうですね。
現実だとあの性格になることはほとんどない気がするけど、もし本気でキレたら誰よりも怖そうだった。
「おーい、船借りれたぞー!」
「えっ、もう!?」
あまりに早すぎる。
タイガーのコミュ症具合はちなっちから聞いたたけど、それらを吹き飛ばすぐらいに生き生きしていたので、私達は結局朗らかに喜ぶべきだと思い、平常になって柔らかな息を吐いたのでした。
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