■197 火山の街を目指す
5月1日に新作を投稿します。
お楽しみに。
時刻は夕方。17時。
私達はギルドホームに集まっていた。
ホームの中は、優しい木の香りに包まれており、中央に置かれた大きなテーブルにそれぞれが着く。
私とちなっちは宿題をしながら、Katanaは愛刀を研ぎながら、スノーはやることがないのか、手持ち無沙汰であやとりをしていた。
「うぃー、できたぞー」
そこにキッチンから戻ってきたタイガーは、テーブルの上にスイートポテトがたくさん乗った白いお皿を置いた。
私達は待ってましたとばかりに手を伸ばし、包み紙に包まれたスイートポテトを口に運ぶ。
「うん。美味しい!」
「あっさりしてるねー。さつま芋のゴロッと感が残ってて、歯応えもあるもんねー」
「悪くない」
「はい。タイガーさん、美味しいですよ」
「あんがとな」
タイガーは頬を赤らめた。
照れを隠すように、頭を掻いたのが可愛らしい。
真っ白な髪を撫で、タイガーも席に着くと、それを見越してからスノーが口を開いた。
「食べてるとこ悪いが、一ついいか」
「なーに?」
「今我の予定だが、次の街に行く計画を立てたいんだが」
「それでしたら!」
「あっ、私も私も!」
スノーが口を開いたのを皮切りに、私とKatanaは何故か同時に声を上げた。
自分でもよくわからない。だがしかし、何故か口が勝手に動いていた。
「どうした、2人揃って」
「いや、あのー」
「なんででしょうか?ふと桜の木が頭に思い浮かんでしまって……」
「あっ、私もだよ!」
「マナさんもですか。不思議なこともあるのですね」
Katanaに言われてハッとなった。
確かに、私の頭にも桜の木が思い浮かんだ。
その理由はわからない。けれど、桜の木がポイントになっていることは確かだった。
「桜の木か……そう言えば、ここにも不思議な木があるな」
「そう言えばそうだよねー。桜だっけ?」
「おそらくな」
スノーはすぐに黙り込んだ。
それから親指を口元に当て、頭の中で考えを練り合わせる。
それから考えがまとまったのか、1分にも満たない間に結論を出した。
「そうだな。とりあえず、それを方針に入れるぞ」
「方針?」
「そうだ。リムルトもミヤビも距離は空いていたが、明確に何かがあった。つまり、北に行くか南に行くかだが……」
「暑い方がいいよ!これから寒くなるんだよ」
時期は11月。
これから冬真っ盛りになるので、北になんて行きたくなかった。それを加味したのか、スノーはマップを取り出すと、南の地に浮かぶかなり大きな大陸を示した。
「ならばここに行くか」
「ここは……九州?」
「リアルの地図な訳あるか。ここは九の街が存在する大陸で、現実とも違う」
「確かに実際は七つですものね」
Katanaが納得した答えに辿り着いた。
それを聞くとかなり違うのがわかるが、一体何故ここなのか?
「ねぇスノー。なんで近くじゃなくて、こんな遠い場所なの?」
「そうだぜ。俺達、こんなとこ行ったことねぇだろ」
「確かに私もない。つまりここに行くためには海を渡るしかないわけだが、ここに行くのには二つの合理的な理由がある」
「なになに、合理的ってどゆことー?」
ちなっちが間の抜けた質問を投げる。
すると、スノーは淡々と二つの理由を投げ返した。
「一つ目はまずここを見ろ」
「ここって?」
「ヴォルカニカ。私達がこれから目指す街だな。広さとしては、リムルトと同じぐらいだ」
「あれ?このおっきな三角形、山かな?でも赤く表示されてるよー」
「火山でしょうか?」
「そうだ。ここには活火山がある。つまりここには熱源が存在していて、温泉もある。それだけじゃない。噂だと、ここにはマグマの中に咲く桜があるらしい」
「「えっ!?」」
私とKatanaは声を揃えた。
つまりここにも何かあると言うことだ。
だけどマグマの中なんて、そんなの無理だよ。
「それともう一つだが、見ての通りかなり距離がある。ここまで最短でも1〜2週間近くはかかるだろうな」
VRゲームは基本的にリアリティを追求しているものが多い。そのため、パソコンなどでやるゲームと違って、サクサク進むことはない。
苦労を重ねて、現実と同じ速度で進んでいく感じだ。
おまけに8時間で強制ログアウト。
それもあるからか、時間と労力がかなり掛かる。
「距離もあるが、逆に言えばテレポート用に、様々な町に行けばいい」
「そっか。ポータル?を増やすんだね」
「そう言うことだ」
確かにそれなら納得がいく。
時間は掛かるかもしれないけど、それだけ後が楽になる。
桜の噂も気になるし、何よりも楽しそうだ。
「私はいいよ!」
「火山なんて燃えるじゃん!」
「火山だけにかよ」
「確かに面白そうですね」
4人全員、スノーの意見を飲んだ。
私達はスノーの方針を受け入れて、とりあえず明日から次の街を目指すため、色々な場所に行ってみることにしました。




