■196 日照実験
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私と千夏ちゃんは、科学室の前にある廊下を渡っていた。
そこで白衣を着た女の子、琳廼ちゃんにたまたま出会した。
「琳廼ちゃんどうしたの?」
「愛佳と千夏か。ちょうどいい、手伝ってくれ」
「「手伝う?」」
私と千夏ちゃんは顔を見合わせた。
首を傾げ、もう一度琳廼ちゃんの顔色を窺うと、目線はしっかりと私達を捉えていて、何処か“頼む”ような力強さがあった。
「うん、いいよ」
「暇だもんねー。オッケーオッケー」
「助かる」
私達2人は即座に首を縦に振る。
すると、澄ました顔で琳廼ちゃんぽくない言葉が返ってきたことに驚きつつも、琳廼ちゃんはそそくさと、階段の方に向かっていた。
私達も琳廼ちゃんの後を追い、階段を上る姿が見えたので、すぐさま屋上だと察しがつき、私達も続いた。
一体何するのか、千夏ちゃんと軽く話しているうちに、何をするのか見えてきた。
「太陽光パネル?」
「そうだな。今日はこれを使って日照実験をする」
「えっ?」
「日照実験ー?」
「そうだ。これを使ってみる」
琳廼ちゃんは白衣のポケットから小さなフィルムのような形をした黒いケースを取り出した。
それが何だか判らない。ノースなら、何かしらわかるかもしれないけど。
「なにそれ?」
「これは日照極光発生器。つまり、太陽光を元にして、オーロラを発生される装置で、私がやろうとしているのはその先。逆光現象を利用した、小規模ワームホールだ」
「えーっと?」
「ノースならわかるかもね」
「ノース?ノース・A・高坂のことか。確かにアイツなら解りそうだな」
「えっ、琳廼ちゃん知ってるの」
「当たり前だ。アイツはこの界隈じゃ有名だからな。私もそれなりに有名ではあるが……興味はないな」
琳廼ちゃんはあっさりしていた。
その口振りや話し方がノースに似ていたのも、そのせいだろう。
だけどそれがわかってよかった。やっぱり世界は意外に狭いんだと、あらためて実感させられた。
「本来、逆光現象とは、朝夕の太陽が低くドライバーが前方から強烈な太陽光を受けた際、標識板全体が暗くなり表示内容の判断が困難になることを言うが、この場合は違う。私独自の解釈から、オーロラを擬似的に反転させワームホールを作るんだ。それがこの装置」
「ワームホールって?」
「空間にねじれを生じさせて、直立のトンネルを時空間内で発生させたものだ」
「えーっとですね、わかんないよ」
「わからないねー。まあ、理解はしたかな」
「凄い千夏ちゃん!」
「まあねー」
数学が得意な千夏ちゃんだから、ギリ解ったんだ。
だったら私にはわからないよ。でも何を手伝えばいいんだろ。
「そっち持て。電圧のケーブルを差し替える」
「そんなことしていいの?」
「許可はもらっている。千夏頼むぞ」
「オッケー」
千夏ちゃんは、軽々と太陽光パネルを設置した架台を持ち上げた。
まずこの辺で普通じゃないのはわかるけど、琳廼ちゃんはその下に潜り込んで、+ドライバー片手に作業をし始めた。
「愛佳、さっきの取って」
「えっ、あっ、はい」
「ありがと。あとはこれを逆に付けて、よし」
琳廼ちゃんは手早く済ませると、千夏ちゃんもそれに合わせて架台を下ろした。
「終わったの?」
「ああ。あとはスイッチを入れれば完成なんだが……」
「えーっと、何これ?」
私達の目の前には不思議な黒い輪っかが浮かんでいた。
輪っかは禍々しくて、球体を描くように形成されていく。
これは明らかに普通じゃない。
私は琳廼ちゃんに聞いた。
「えーっと、これがそうなの?」
「成功はしたな。だが考えてなかった」
「なにを?」
「これ、どうしようか」
琳廼ちゃんの間の抜けた声が出る。
私は目を見開いたが、琳廼ちゃんは気にせずに黒い輪っかの中に何処から取り出したのかわからないが、空き缶を放り投げた。
すると、
「うわぁ!?」
真上から空き缶が落ちてきた。
しかも空き缶のコロンって軽い音じゃなくて、屋上の床に凹みを作るぐらい、ドカッと激しい音を立てる。
「な、なんで上から落ちてきてるの?」
「どうやらもう片方を繋いでいないせいで、適当な場所に口が生まれたんだな。これは改良がいる」
「なんでそんなに冷静なのさ!これヤバいよね」
「ああ。だが、成功だぞ」
「成功でも学校壊しちゃ駄目だよ」
琳廼ちゃんを叱ったけれど、本人は全く気にしておらず、白衣を緩やかに翻して、自分の実験の甘さに誇れないでいた。
でも、琳廼ちゃんの実験は成功だと思った。
オチは弱いけど、ノースみたいで私には全く意味がわからなかった。
今回は無茶苦茶な話でごめんなさい。
でもこれはノースと琳廼。それから今後登場するキャラの異常性を表すためのものです。




