■194 愛佳と千夏①
今回から第5章!
結局投稿しちゃった。
少しでも面白いと思ってくれたら嬉しいです。
ブックマーク登録やいいね、感想など気軽にしてくれると励みになります。
評価でたくさん★が付いたら、頑張れます!
私と千夏ちゃんは、一緒にゲームをしていました。
テレビに繋いで、コントローラーをそれぞれが手に持ち、目の前の画面の中で派手なアクシャンを小刻みに行うキャラ達を操作して、バトルを繰り広げています。
「そりゃあ!よー、やるね」
「うん。じゃあこれは如何かな?」
私はコントローラーのスティックを動かして、AとBのボタンを同時に押した。
すると画面の中の人型の犬っぽいキャラが、決めポーズみたいな溜めを挟み、上段突きと、下段キックをお見舞いした。
「それならこれでガードできるよー」
しかし千夏ちゃんは的確な操作で、私の攻撃を難なく躱すと、そのままステージ端まで追い詰められ、崖から落とされてしまった。
上手く復帰ができないように阻まれて、残りの残機もなくなって、GAME SETの文字とそれに加え、YOU LOSEの文字がキャラの上に表示されてしまった。
やっぱり運だけじゃ勝てないよね。
「うわぁー、負けちゃった」
「あはは。勝った勝ったー!やっぱり、こう言う実力差が出るゲームだと、愛佳って普通だよね」
「普通じゃ駄目なの?」
「いや、いいんだけどさ。最近、愛佳、私の技盗んでないよね」
「技を盗む?」
「あれれ?あっ、そっか。ちょっと言い方間違えたねー、練習積み重ねてないでしょ」
「う、うん」
私は小さく首を縦に傾げた。
痛いところを突かれちゃった。確かに最近は触ってなかったよ。
千夏ちゃん曰く、「愛佳は飲み込みがめちゃ速いから、最強にはなれなくても、かなり上達するのにね」とフォローしてくれる。
そのフォローが、嬉しいような悲しいような、そんな気持ちで胸がキュッとなった。
「あー、こうやって2人でゲームするのも久々だよねー」
「そうだよね。最近は、ずっとVRばっかりだってもんね」
「そうなんだよねー。あー、身体動かすの好きだし、動かしたいなー!水橋と勝負してこようかな」
「1on1?」
「それもいいねー。水橋、前よりもブロックが上手くなってる気がするんだよねー」
千夏ちゃんは楽しそうだった。
だけだその言い方だと、天狗になってるように聞こえるから、やめた方がいいよ。
私は軽く注意するとともに、一つ気になったことがあるので、聞いてみた。
「千夏ちゃんは、バスケ好き?」
「ん?嫌いじゃないよー」
「じゃあさ、部活とか入りたい?」
「えっ」
千夏ちゃんはベッドから起き上がると、ぽけーっとした表情を見せる。
私には楽しそうにスポーツのことを話す千夏ちゃんが、もしかしたら部活がしたいんじゃないかと思ったんだ。
もしそっちに興味があるなら、私はそれでもいい。
そう言おうとしたんだけど、千夏ちゃんはケラケラと笑い出した。
「ふふっ。ふふふっ」
「こ、怖いよ?」
私は顔を引き攣らせ、千夏ちゃんはお腹を抱えていた。
「いや、ごめんごめーん。そんな風に見えてたんだ。心外だなー」
「ええっ!?」
「私、陸上部辞めた人だよ?それなのに今更本気でやると思う?」
「やるんじゃないかな?ほら、転部って形で」
「だとしても、今の関係を壊すようなことしないよ。それに、向こうはわくわくするじゃんか!楽しくて愉快な友達と遊べるのって、超楽しいでしょ!」
「う、うん」
それには強く同感した。
でも何より嬉しかったのは、千夏ちゃんがそう思ってくれていたこと。私は馬鹿だな。私だって、今が楽しいのに。
それは多分、ノースも刀香ちゃんも、大河ちゃんも同じことだ。皆んな変わった。それはこのゲームがきっかけなのに、今更何を忘れていたのかな。
私は自分のことが信じられなくなって、少し落ち込んだけれど、千夏ちゃんはそんな私の肩にポンと手を置いた。
「大丈夫だって!」
「そうだよね」
根拠の何もない笑顔と言葉に突き動かされて、私の心はハートフルにビートを奏でた。
このわくわくはずーっと、ずっと終わることはない。
ここから25〜40話ぐらいは、ぼんやりとした内容になるけど、5章はそう言う回です。




