■193 清華の袂で
4章終わり。ご拝読ありがとうございました。
マナとKatana、2人は何かに触れた。
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「いい夜ですね」
私は神鳴神社に佇む、巨木に背中を預け夜空を見ていました。
時刻はもう深夜です。どうしても寝付けない私は、日が変わる前にこうしてログインしていました。
この世界は1日に3回日が変わります。しかしそれは場所によっては、判定外であり、ギルドホームも例外ではないのかもしれませんが、そこは要改善の余地があります。
そこで、変わる前にと思いこうして1人で見に来たのですが、やはりいいものですね。
「そう言えばもう秋でしたか。ペガスス座は……ありませんよね」
夜空を見上げて、昔見た本に載っていた星や星座の名前を思い出して、探してみます。
ですが、当然そのような星はないと思い、空の果てを覗き込みます。
「それにしても、今日は色々ありましたね。お礼を無事言えましたし」
細さんは先にログアウトしていて、ここにはいない。
だけど私は境内の床に倒されたことを思い出すだけでも、あの方の強さがひしひしと恐怖のように感じてしまいます。
あれだけの強さに価値はあるのでしょうか。
私にはそこがどうにも気になります。
「あの域に達してしまえば、どんな景色が観られるのでしょうか。私には関係ありませんが」
ふと他人事のように、口走ります。
もっともそれは事実であり、私には、そこまで至るつもりもさらさらありませんでした。
「いつか一太刀……それが叶うとしても、私にはそこまで至る気はないのですよね」
そう口にして、御神木の桜の木にピタリと背中を合わせます。
どうにも静かな夜が、しとしとと冷たく降り頻る雨のように感じてしまいました。
そうして、背中を溶けさせ瞳をゆっくりと閉じながら、私は、
「清らかな華のようにありたい」
本当に意味もなくそんな言葉を口にしていました。
整ったように見えて、実際には形もなく具体性もない意味の一つも感じないはずなのに、何故か私はすんなりとその言葉が出たのです。
そのことに気づき、私はふと目を開けました。
すると、
ピカッ!!
眩い光が煌々と、発せられました。
私は顔を覆い、目を守ります。しかし光は一瞬のうちに消えており、気が付けばそこに光のあった形跡はありませんでした。
「光が消えた?では、あの一瞬は一体……」
不思議に思い、キョロキョロと周りを見回します。
しかし何かあるわけでもありません。
分からないことが目の前で起こり、不自然に感じ取ると、ふと手の中に何か固いものがあるような気がしました。
「えっ!?」
気になって、掌を開いてみると、そこには変わった形のペンダントが握られていました。
しかし変ですね。私がこのようなものを手にしていた覚えはないのですが、いつの間にか私の手の中に収まっていてのです。
即座にポップアウトしたウィンドウには、このペンダントのことが記載されていました。
〈清華の首飾り〉
効果:Unknown
説明:守護獣青龍と密接な関係があるとされる不思議なペンダント。透明な結晶は所持者の心の表れとされるらしい。清らかな華の伊吹を持つと言い伝えられている。
「これは一体……」
不思議なペンダントです。
龍の頭が、結晶体の部分を咥えているような形をしていて、何処となく雰囲気があります。
「付けてみましょうか」
私は首にかけてみることにしました。
似合うでしょうか?
夜の静寂の中、私は背中を神社の巨木に預け、夜空を眺めました。
遠い空の果てを流れていくそれは、何度見てもゲームとは思えない美しさです。
「この星の流れのように、私も……」
その瞬間言葉が塞がりました。
これ以上言う必要はありませんね。ただ一つ、私は・・・
「皆さんと共に、これからも歩みを揃えたいですね」
ふつふつと湧き立つ気持ちが、胸の奥から熱を帯びて、絶え間なく私の心を包みました。
それがどうしても嬉しくて、首から下げたペンダントを優しく撫でるのでした。
それでも私の頭上を優雅に、流るる星空は、川の流れのように緩やかなのです。
明日は多分更新しません。
ごめんなさい。次から5章ですが、5〜7章のうち、5章目はかなり短めの予定です。




