■190 刀華流“五月雨蓮華”
いよいよ最後。
スノーのとった戦法。
それはかなり姑息な手段だった。
「ちなっち、3人が話し合ってるよ」
「みたいだねー。でもさー、やるなら早くしてほしいよー」
確かにそれはそうだ。と、マナ達は思っていた。
やっと!こうしている間にも、私ペラペラの防御力を敏捷性とスキルでカバーしていた。
「おっ!?なんか決まったっぽいよー」
「うん。それじゃあ、一気に!」
「オッケー!」
マナの一気にとは“全力”や“いざ”みたいな意味があった。
それを一番長くいるちなっちはすぐさま理解して、阿修羅武者の腕を駆け上がる。
「よし、動いたぞ。今だ!」
「「はい」」
スノーの合図でタイガーとKatanaも駆け出した。
マナとちなっちの2人が、阿修羅武者の腕の傷を付け、微かにダメージを稼ぐ間に、死角に回り込んだ2人は足首を切り裂いたり、骨を折って、阿修羅武者の動きを止める。
「うわぁ!?」
マナ達は急なことで、もう一階体勢を崩したけれど、今度はスノーが的確に阿修羅武者の目を狙って、一時的に視界を奪ったので、その間に逃げる。
「ま、まさか動けなくするなんて!」
「スノーにしては単純で姑息だけど、それしかないよねー」
驚くマナとは対照的に、ちなっちは納得していた。
しかし動けなくしたけれど、阿修羅武者は止まらない。
ズドン!
阿修羅武者は倒れ込む力を利用して、刀を振り下ろした。
それをすぐさま察知したちなっちとタイガーさ、刀を押さえ込んで、近くにいたマナとスノーを庇う。
「うわぁ!?」
「さっきより、重い……」
ちなっちとタイガーは今にも押し潰されそうだったが、腰を低くして、何とか耐える。
その光景を目の当たりにした、Katanaは、
「マズいですね」
これではさっきと同じ。
Katanaはその情景を改めて、頭の中で思い起こすと、このままでは駄目だと思っていた。
この状況を打破するため、皆んなの残りの力を掛け合わせても、このタイミングで押し切るしかない。
その瞬間、今自分がやるべき光景がKatanaには見えた。
それは考えるよりも先に身体を動かしていて、無茶なことでもやるしかないと、強制的に思わせていた。
「こうなったら、一か八か、賭けてましょうか」
「えっ!?」
その瞬間、Katanaは飛び出した。
それからタイガーとちなっちが抑え込む刀の合間をすり抜けて、阿修羅武者の太い太腿を踏み台にして、勢いよくジャンプした。
「Katanaー!」
マナは大きな声で叫ぶ。
すると急に〈夜桜蒼月〉を抜刀すると、二の腕を斬りつけ、微かにダメージを与えると、ちょこまかと動気回るので、阿修羅武者は、Katanaに視線を移し、刀を降りかかった。
その時、Katanaの瞳には阿修羅武者の動きが鮮明に捉えられていた。
モンスターだけど、呼吸音や心拍数を感じ取った・・・ような気がしており、振り下ろされる二本の刀の向き、重さ、軌道。それから、阿修羅武者の目線などなど、全てを感覚として受け入れ、無防備な空中で、それを捉えていた。
(ここはやるしかありませんね。この世界における、最大出力……普通の方には不可能だとしても、今の私なら……)
いつにもない自信が溢れ、Katanaは刀を正面に構えた。
それから、阿修羅武者の刀が振り下ろされるよりもだいぶ早く、Katanaの握る〈夜桜蒼月〉は龍蒼寺刀香の閃いた型を、即興で体現させた。
「刀華流“五月雨蓮華”!」
Katanaの〈夜桜蒼月〉が空を切り裂いた。
すると、刀の先が触れてもいないはずの阿修羅武者の刀がバラバラに折れてしまう。
空気の振動を増幅させ、複雑なエコーによって阿修羅武者の刀を折ったのだ。
それから、阿修羅武者にもダメージがあった。
じわじわ削れていくのではない。正眼に構えて振り下ろされた〈夜桜蒼月〉を媒介として、正面方向に発生した衝撃波が、そのまま阿修羅武者のHPを削り切る手段に至ったのだった。
しかしそれはKatanaの実力と剣の強度、それから極度の集中状態により通常の何倍も引き出された、龍蒼寺刀香の本質だった。
「す、凄い……」
下で見守るマナは何もすることができず、Katanaが倒し切ってしまって姿を見て、唖然としていた。
対する本人はと言うと、
「勝て……まし……た」
そのまま気を失ってしまい、体勢を崩します。
そんなKatanaの身体を瞬時にちなっちが抱き抱えると同時に、その場にずっと存在していた、阿修羅武者の姿は崩壊し、粒子となって消えていた。
それからレベルがまた上がった音を確認し、Katanaが目覚めるのを待っているのでした。
Katanaは強い。
土壇場、心の芯が固まった彼女はもはや最強無敵なのだ!ってね。




