■189 避けられない刃
とにかくタイガー達が頑張っての回になってます。
阿修羅武者は執拗な攻撃を次々に放った。
阿修羅なだけあって、三つの顔から何処から攻撃が来るのか、わからない。
「こんなの避けられないって!?」
「くっ」
私とスノーはパニックになったり、諦めムードを漂わせたが、そこに飛び込んできたのは2人の少女。
「おりゃあ!」
「刀華流“徒花”!」
タイガーとKatanaがスッと割り込んだ。
タイガーはガントレットで刀を受け止め、Katanaは自慢の刀で受け流す。
阿修羅武者と言う名前だけど、三つあるのは顔だけなので、腕は2本。だからこそ、タイガーとKatanaは瞬時に割り込めたのだろう。
「大丈夫、マナ、スノー!?」
「うん。タイガー、Katanaありがと」
「助かった」
タイガーとKatanaは言葉で返すことはなかったが、首を何とか縦に振る。
2人が苦戦するほど、このモンスターの攻撃は重たく、まるで動かなかった。
そこで今度は私達の番。私はちなっちとアイコンタクトを取り合うと、阿修羅武者の左右の顔目掛けて、固定された腕を伝って斬りつけに向かった。
「視界を奪う……行けっ!」
さらにスノーは弓を使って、阿修羅武者の正面の顔の目を狙って、矢を放つ。
真っ直ぐに飛んで行く矢は、自分よりも何メートルも高い位置にある顔の中でも、左目を正確に狙っていて、その矢は鋭く突き刺さり、一瞬にして、視力を奪った。
「よしっ!」
スノーが小さくガッツポーズを取る。
するとその拍子に、腕が緩み、タイガーとKatanaの2人は解放された。それから私とちなっちも擦り傷程度だけど、ダメージを与えた。
「って、うわぁ!?」
「よっと」
私は慌てて振り落とされて、ちなっちは私よりも酷い大勢だったのに、着地の時には軽やかだった。
そうして緊急で私を抱き抱えると、スノーの隣に高速で戻る。
「ありがと、ちなっち」
「いいっていいって。にしても、目を一つ潰しても、残り五つもあるんだねー」
「そうだな。この手の相手はパワー型か、テクニック型だとは思うが、今のところ、前者のようだ」
スノーはそう見解を出して、解析する。
パワー型でもテクニック型でもどっちでもいいよ。私達は私達らしく、各々のバラバラな特徴を活かして、撹乱しながら、攻め立てるだけなんだからさ。
「とりあえず私とちなっちで、注意を引くよ」
「それがいいな。私はここから指示を出しつつ、適宜攻撃をしてみるつもりだ」
「オッケー!じゃあタイガーとKatanaは、要所要所ってことだよねー」
「そうなるな」
スノーは縦に首を振る。
今は私達に注意が行かないように、2人が間に入ってくれている。ここからはスピードを活かせる、私達の出番ってわけだ。
「ちなっち、行くよ!」
「オッケー!じゃあ、一気に行っちゃうよー!」
私とちなっちは阿修羅武者の前に出るために、スキルを使うことにした。
「【雷歩】!」
「【加速】!」
最初の一歩目が、地面を蹴る。
真横を何かが駆け抜ける。それを肌で実感し、私達は阿修羅武者の前に立ちはだかった。
マナとちなっちは、Katana、タイガーペアと交代する形で、阿修羅武者の攻撃を引きつけることにした。
さらにスノーは、弓を構えつつ、距離を取り、常に見張っていた。
「Katana、タイガー、行けるか」
「はい。ですが、今のまま無策に飛び込めば、あの刀の餌食です」
「あの刀、多分マナとちなっちは受けきれないぜ。どうするよ」
Katanaとタイガーは、スノーに問う。
真っ先に戦い、前線で常に身体を張り続ける2人だからこそ、出た答えと言ってもいい。
そこでスノーは一つ提案を出した。
「長期戦はこちらに分はない。つまり、短期決戦を狙う」
「短期決戦って、確かに一発当たったらアウトだけだよ……」
「可能なのでしょうか?」
タイガーとKatanaは、不安そうにしていた。
しかしながら、スノーは喝を入れる。
「問題ない。私達がやるべきことは、決まっているだろ」
「決まってる?」
「いいか、私は視界を全て奪う。2人が狙うのは……」
スノーは2人に指示を送った。
誇れるようなやり方ではないけれど、力の差を埋めるには、これが何よりも手っ取り早かったので、2人はプライドとかは全く無く、その意見に従うことにした。




