■184 怪しい森
今回は伏線回。すぐに回収するけどね。
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私は森の中を一人で歩いていた。
この森は今まで来たことないし、今回の目的は、〈ミヤビ〉のボス戦にある。
〈ミヤビ〉の街のボスは、ここまで全然ちっとも情報がない。今はスノーが、ネットで情報を洗っていて、ちなっちとタイガーの二人は街で聞き込み、それからKatanaは私と同じで、一人で情報集めのために、フィールド内を駆け巡っている。
「でも、ここまで来て何にもないなんて……」
この森に来るのは初めてだ。
私は、色々聞いてみた結果、この森の周辺には誰も来てきないらしいことを、突き止めていた。
と言うのも、ここは川辺に近く、自然豊かなハイキングコースみたいで、モンスターの影も形もないからか、レベル上げにも不向きな場所なので、全然見向きもされず、そもそもプレイヤーよりもNPCの方が、多かった。
「こんにちは」
「あっ、こんにちは」
私は通りがかるNPCに声をかけられたので、挨拶を交える。
ハイキングに適した、動きやすい格好をしていて、のんびりほんわかムードだった。
「山登りですか?」
「そうなんですよ。あっ、ところで、この辺りにモンスターっていましたか?」
「モンスター?いいや、いなかったけど」
「そうですか。ありがとうございます」
如何やら本当にいないみたいだ。
やっぱり私の勘違いなのかな。
そもそもここに来たもう一つの理由は、私の“なんとなく”の勘にあった。
「もしかして、私の勘って当てにならない、とか?」
いまでのことがまるで嘘みたいに自信がない。
だけど、こんなところで、諦めてられないよ。って、諦めるとか、ないか。うーん。って、あれ?
「スノーからだ」
私はスノーからメッセージが来ていることに気が付いた。
「なんだろ。えーっと、浅萩山?って、ここだよね?」
如何やらスノーの情報収集が終わったらしい。
一体何をやったのかはわかんないけど、多分“本社のハッキングをかけて無理矢理引っ張ってきた”んだと思う。まあ、スノーならできそうだけど、よくそんな真似が思いつくよ。でも・・・
「どうして、向こうは何もしてこないのかな?」
まるで、“私達が情報を盗むのを待っていた”みたいに、おとなしい。
ハッキング何てバレたら、それだけでペナルティはありそうだし、重たい。何より、犯罪で捕まるよね。でもその記事が一切ないのは、完全に黙認しているのとおんなじだよ。
「まあいっか。もしそうなったら、スノーなら自力でどうにかするよね、きっと」
それが何となく察してしまえる私が怖い。
だけど、その可能性が一番高いのも、また事実だった。
「それじゃあ、もう少し探してみようかな」
私は、早速、浅萩山を駆け巡った。
「うわぁー」
凄い大きな滝。
一体どれだけの水が落ちてきてるんだろう。
「それにしても、こっちの方まで来ると、結構人も少なくなるんだね」
私は、滝の上を歩いていると、ふと周りを見回してしまった。
周囲一面には、生い茂った木々。
だけど、人の気配は全くと言っていい程ないし、なんだか少し不気味なのに、どうしても温かさがぬぐい切れなかった。
「って、そうだよ!」
この感覚、私が感じた“勘”に凄く似ている。
つまり、ここがその場所なんだ。なんだろ。ここに来て、その感覚が強くなった。
「って、ことはやっぱり……」
私は歩いていこうとした。
しかしその瞬間、ただならぬ感覚が全身に悪寒として、感じとった。
「嫌だな。行きたくない」
そんな感じが強かった。
何か足りない。この先にあるのは、ちょっとした森だ。鬱蒼とした空気感が伝わってくる。
「か、帰ろっかな?」
私は引き返す。
すると、〈麒麟の星雫〉は、まるで呼応するかのように震えだした。
「麒麟の星雫?」
私は不思議に思った。
まるで、この先に何かあるみたいな。そんな気がしてならなかったが、今の私にはその先に行くことは敵わなかった。」




