■182 青龍の華雨
私が見つけたのは巨大な大樹でした。
その木は桜でしょう?よくわかりませんが、緑色をした葉っぱをたくさん付けています。
「この時期でも、これだけの実りを付けているのですね」
この世界はリアルの時間軸に影響されています。それ故、特定のエリアを除き、季節は脈々と移り行くのです。
「ここに何かあるのですか?」
私はスライムに聞いてみます。
するとスライムはポヨンポヨンと跳ねながら、大樹に向かっていきます。
「付いて来いと言うわけですね。わかりました」
私はスライムの後に続きます。
すると大樹の袂までやって来て気づきました。
すると大樹の表面に窪みがあります。如何やらこの中のようですね。
「この中ですか」
そう尋ねると、「うん」と言いたげにプルルンと震えてみせます。
私はコクリと小さく頷き返し、表面に空いた窪みの中に入ることにしました。
「神聖な雰囲気ですね」
初めて木の中に入りました。
そこは太陽の光が入り込み、神聖な雰囲気を醸し出していました。
私はキョロキョロ周りを見まして、大樹の中を見て回ると、その中央にあるものに気がつきました。
「アレは……刀ですか?」
大樹の奥。
その中央に鎮座していたのは、突き刺さった刀でした。
鞘は特になく、剥き出しの状態です。
私は内側から興味が湧き起こり、刀に近づいてみます。
「この刀は……」
そこにあったのは龍の姿をした紋様が深く刻まれた刀でした。
「どうしてこんなところに刀が、
それにこの絵……」
その絵を一目見て私は気が付きました。
この龍の紋様。あの謎の建物で拝見した、床の絵にそっくりです。それにこの系譜から見てまず間違いありませんね。
「マナさんと同じ。と言うことは、こちらの紋様は青龍?」
私はそう確信しました。
青龍は四神の一つとされている、青い龍です。それがまるで、刀の刃を咥えるように刻まれており、不思議と私を待っていたかのように錯覚してしまいます。
「抜け、と言うことでしょうか?」
私はスライムをチラリと見ました。
するとまるで頷いているように体を縦に上下させます。
「わかりました」
私は頷き返し、刀の柄を握ります。
本当に抜けるのかは定かではありませんが、私は意を決して引き抜きました。すると、
ポンっ!
「えっ!?」
異様に軽く、そして簡単に抜けてしまいました。
拍子抜けしてしまい、呆気に取られて軽い声が出ます。
「抜けてしまいましたね」
私は「これでよかったのでしょうか?」と、首を軽く傾げてしまいますが、そこにスライムの姿はもうありませんでした。
「あれ、いない?」
辺りをキョロキョロ見回してみても、スライムの影も形もありません。どう言うことでしょうか。不思議ですね。
私は呆然と立ち尽くし、左手に持った謎の刀を見ました。
美しい。優美な曲線に、深い彫り。マナさんの〈麒麟の星雫〉にも引けを取らない完成度でした。
龍の目のところには青い宝石が嵌め込まれており、不思議と私の手に馴染むのと同時に、温かさを感じます。
「もしかして、私のことを待っていたのでしょうか?」
などの言う妄想も膨らみます。
私はふと名前が気になり、インベントリにしまう前に一つ名前を見てみることにしました。
するとそこにはやはり、青龍の文字と振り仮名が付けられていました。
「 青龍の華雨。華に雨ですか?」
まるで今の私を象徴とするような言葉文句です。
私はやはり不思議に思うものの、不気味には思えず、今回のことは皆さんに後で伝えましょう。今はボス戦のことを考えねば、と思いインベントリに渋々と興味を抱き収納しました。
マナに続いて、ようやく2人目の神獣の名を冠する武器使い。




