■174 衝撃吸収って凄い!
正解はブラックホールでした!
シズさんに作ってもらった、新しい武器。
早速私は右手に手袋をつけてみたけど、やっぱり信用できない。
シズさんを信用してないんじゃなくて、本当にそんなことができるのか、不安だった。
「ホントにできるのかな?」
不安が吐露してしまう。
しかしそれでも私を鼓舞してくれる人達がいた。
「大丈夫、問題ない」
隣でシズさんが「私を信じろ」と言いたそうにしていた。
さらに隣ではリオナさんが、
「シズのアイデアは信用しなくてもいいけど、腕だけは本物だから信じてあげて」
と、私に説明する。
それを聞けば、波状の白星もちなっちの赫灼相翼もシズさんのアイデアが形になったもので、それを今でも私達は愛用している。だから今回も大丈夫、何だろうけどやっぱり手袋はないよ。
「まあ一回試してみましょうね」
「は、はい」
というわけで、今回はリオナさんとシズさん2人に付き添ってもらった。
『Blue Wave』の2人が普段どんな風に戦ってるのかも興味があるけど、今回のメインは私だ。
「それで、シズ。貴女どんな依頼を持ってきたの?」
「パラパラ山にいる、ガレキドーンの捕獲」
「ガレキ?」
「シズ!」
私は首を傾げた。
しかし、リオナさんは逆にシズさんを怒鳴りつける。一体全体、私には意味がわからない。
「えーっと、リオナさん。そんなに危険な依頼なんですか?」
「えっとね、危険って言うよりガレキドーンの捕獲はとっても難しいのよ」
「ほえ?」
それから、リオナさんは私に分かりやすく説明してくれた。
ざっくり言うと、ガレキドーンとは岩のモンスターらしい。某、超有名RPGに登場する爆○岩みたいな、見た目をしているらしく、少し触れればすぐに爆発するそうだ。
「そんなの捕獲できないじゃないですか!」
「だから難しいのよ。それで、シズ。ちゃんと算段はあるのよね」
「ある」
「でしょうね。でも、何となく貴女が考えていることはわかるわ」
「流石リオナ」
「はいはい」
いや、私には分かりませんから。そう、抗議したくなる。
しかし今回の依頼内容が、私に自信をつけさせるものだと考えれば、自然と青写真が思い浮かぶ。
「もしかして、この手袋で爆発を吸収しろってことですか!無理ですよ、そんなの。死んじゃうじゃないですか!」
「それはちょっと違う」
「えっ?」
しかしシズさんの思惑は少し違うらしい。
と、そうこうしているうちに私達はパラパラ山に着いてしまった。
「ここにいるはず」
「もうやるんですか」
「怖い?」
「怖いですよ。なにやるか、わかんないんですもん」
私は不安でいっぱいだった。
だけどそんな私の肩を叩くリオナさん。
「何かあったら私達でカバーするから、自信持ちましょ」
「リオナさん」
「あっ、きた」
「!?」
その瞬間、リオナさんは大剣を抜いた。
さらに言えばシズさんと大きなハンマーを手にする。2人ともやる気満々だよ。
「えっ、えっ、ちょっと!?」
「さぁマナちゃん。さっき言った通り、殴ったら爆発しちゃうからね」
「わ、わかりましたよ」
もう逃げられないっぽい。
私はため息混じりに、目の前の巨大な丸い岩を見つめた。岩に顔がある。変なの。そう思ったのも束の間、岩が私達に向かって転がってきた。
「ちょ、そっちからくるの!」
「気をつけて。触れると爆発する」
「そっちからなの!」
そんなの聞いてないよ。
私は慌ててパニックになった。
「えーい、もうやってやる!」
私は右手を使った。
黒くてピチッとした、手袋を開くと、そのままガレキドーンに触れた。
このままじゃ爆発する。それじゃあおじゃんだよ。そう思って目を瞑る私だけど、さっきから爆発音も衝撃波もまるでなかった。
「あ、あれ?」
しかし掌には、固いものに触れている感触がある。
「ば、爆発してない。しかも、痛みもない!」
「そう言う設計だから、当たり前」
シズさんはジーッと観察していた。
確かに凄い。シズさんの発想も、完成品も間違いなかった。
暗縫の黒星は、あらゆる衝撃を吸収して、痛みもなく一方的に殴り続けられる特性を持っている。その吸収性は、まさにブラックホール。私は恐ろしいと共に、頼もしかった。
「シズさん」
「なに?」
「私、気に入りました。この武器、最高です!」
「そう。ならよかった」
シズさんは笑顔を綻ばす。
私は自信を取り戻し、そのままガレキドーンの動きを止めた。後は、
「せーのっ!」
そのまま動かないようにするだけだ。
リオナさんとシズさんに協力してもらって、動かないようにロープで固定する。
こうすれば、爆発しない。
後は万が一にも爆発しないようにと、私が触れた状態で持って帰ることにした。時間は非常にかかったけれど、無事に依頼を完了出来た。
「やっぱり、シズさんの武器は最高です!」
「だそうよ、シズ」
「嬉しい」
シズさんは短く答えると、頬を赤らめる。
その様子がとても可愛くて、私も私で改めて星シリーズを気に入りました。




