■172 新しい武器は手袋?
マナの新武器を作る話。
私はリオナさんのところにやって来た。
そこにはシズさんもいて、急かすような顔をしていた。
「あっ、シズさん」
「待ってた」
「ほえ?」
今日は半月状の寝ぼけ眼ではなく、せかせかと身体がぷるぷるしている。
それをリオナさんが制止させる。
「こら、シズ」
「だって、早く欲しいから」
「はぁー、しょうがない子ね」
まるでお母さんと、子供。それか、お姉さんと妹って感じの立ち位置が似合った。
少なくともそんなほんわかムードは、昨日の壮絶な戦いを乗り越えた後だと、心から落ち着けた。
「あはは、なんだか賑やかでいいですね」
「「よくない」」
「そう言うところは、ハモるんですね」
変なツッコミになったけど、とりあえず私は、シズさんが欲しがっているものを、渡すことした。
「それでシズさん、これ、お土産です」
「待ってた!」
目をお星様みたいに、キラキラさせるシズさん。可愛い。
だけど私が渡したのは、疫嬢蜘蛛から取った糸だった。女の子が、こんなので喜ぶのか怪しいところだったけど、シズさんはそれを受け取ると、子供みたいに喜んだ。
「これ、これこれ!……うわぁー、とっても伸びる。それにネバネバしてないのに、凄い粘着力。いい、最高」
「喜んでくれてよかったです」
「とっても満足。早速使う」
そう言うと、シズさんは切り替えた。
目をカッと見開いて、私の手をじろじろ見回して、触りまくる。
「あ、あの?」
「動かない。……うん。ちょっと硬いけど、いい感じ」
「は、はぁ?」
こう言っちゃ何だけど、気持ち悪い。
シズさんに対して、不審な目を向けてしまう私だったけど、満足したのか「うんうん」と大きく頷くシズさん。
「えーっと」
「どうシズ、満足?」
「うん。満足、納得した」
「は、はい?」
もしかして私、試されてたの?
それってちょっと酷くないですか。そう言いたくなるが、シズさんは楽しそうにしていたので、これ以上は言わない。ただ気になることがあるので、聞いておく。
「あ、あの、何でさっきから手を触ってたんですか?」
「武器」
「武器?あっ、私の。ってことは、手の大きさに合わせて柄の太さを変えるってことですね」
「違う」
「えっ!?」
私は驚いて声を上げていた。
でも、そうじゃなかったら何をしていたのかな?まさか参考までに私の手を観察してただけとか?キモい!
「ふふっ、シズ。多分今、キモいって思われてるわよ」
「ちょっとリオナさん!」
「如何でもいい。私は、自分のしたいことをしただけ。如何思われてもの勝手にしろ」
「はいはい」
シズさんもシズさんだけど、リオナさんも大概だ。
私はそんな2人の間に挟まれて、シズさんの見解を待つ。
「それでシズ、いいアイデアは浮かんだの?」
「当然」
「本当ですか!」
私はついつい叫んでしまった。
身体を前のめりにして、シズさんにキラキラした瞳を見せる。
「落ち着いて、マナちゃん」
「は、はい」
そんな私はリオナさんに止められる。
コホンと一つ咳払いをして、シズさんは答える。
「残念だけど、今回のは剣じゃない。形にそぐわなかったら、ごめん」
「剣じゃないんですか?」
「うん」
シズさんらしくもなく、落ち込んでいた。
多分、「お得意様なのに、期待にそぐわないものを作るなんて言ったら、きっと嫌われる。如何しよう」とか考えてるに違いない。
こう見えて、シズさんは繊細な人なのだ。
「気にしなくていいですよ。そもそもシズさんは、自由なアイデアと自分勝手なスタンスが売りじゃないですか!」
「確かにそうよね。ほら、シズ、元気出して。マナちゃんもこう言ってるんだから」
「わかった。じゃあ言うけど、……驚かないで」
「はい、シズさんの奇抜なアイデアには慣れてますから!」
私は堂々とそう答えた。
すると安心したのか、シズさんは一呼吸置くと、私達に教えてくれる。
「今回作るのは、グローブ型の武器」
「グローブ」
「型?」
私とリオナさんは互いに顔を見合う。
だけどシズさんは自信満々な顔をしていて、私達はそんなシズさんに賭けてみることにするのでした。
でも、グローブ型って何なんだろ。
もしかして、手袋かな?でもシズさんが触ってたのって、右手だけだったよね?変な話だ。そう思う、私でした。




