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■159 文化祭①

今回から文化祭回がしばらく続くよ。

最近はTwitterでもお知らせしてるよ。

 今日は刀香ちゃんのと大河ちゃんの学校に来ています。

 今日はここ、〈緑峰高校〉の文化祭なのです。

 おまけに毎年祝日に開催という言うことも噛み合って、10月のこの季節ですが、人は多いのでした。

 てなわけでやって来た私と千夏ちゃんにノースはそんな人だかりを見て惚けている次第です。


「凄い人だね」

「うん。こりゃはぐれないようにしないと」

「コミケよりは大分マシだ」


 ノースはそう答えた。

 確かにアレは大変そうだ、と頭の中に詰め込まれた記憶を思い返してみる。

 さてさてこれから如何しますかと、私達は相談した。


「とりあえず刀香ちゃんと大河ちゃんに会いに行こうよ」

「でもクラスを知らない」

「刀香と大河って確か同じクラスのはずだよ。前にそう聞いた」


 確かにそうだ。

 てことは確か大河ちゃんの話だと、二人のクラスは五組のはずだ。出し物は……何だっけ?


「すみません、パンフレット貰えます?」

「はいこちらです」

「どうもー」


 そんな不安を解消するように千夏ちゃんはいち早くパンフレットを係の人っぽい人から貰っていた。

 それによると二人のクラスの出し物は和洋喫茶だった。和洋喫茶とは?


「普通に和服とか洋服とか着て接客するんじゃないの?」

「そうだよね」

「ああ。そんなことより早く行くぞ」


 ノースはそうぶっきらぼうに唱えた。

 まあ彼女はこう言う子だ。それがいつも通りの流れで、私達は安心した。



 中庭は後回しにして私達は校舎の中に入った。

 初めて入る。当たり前だ。

 一年生の教室は二階だ。

 私達は二階に行く前に他のクラスや部活の出し物を幾つか目星をつけておくことにした。


「どこ行く?」

「そうだねー」


 私と千夏ちゃんはパンフレットを見る。

 色々面白そうな出し物が多かった。

 しかしノースはそんな私達の会話には入らず、壁話に張られていたチラシを凝視していた。


「ノースなに見てるの?」

「コレだ」

「これ?」


 私はノースの視線の先にあったチラシを見た。

 チラシと言うよりかはポスターに近い。パソコンの絵が書いてあって、〈ゲーム制作部〉と書かれている。


「なになに、“腕に自信のあるゲーマー、来れ!”だってさ。どうする?」

「どうと言われてもな」

「ノース、ゲーム得意だよね」

「趣味なだけだ」


 ぶきっちょでぶっきらぼう。

 ノースは仲の良い子の前でしか素顔を見せないのだ。

 しかしその足取りは自然と三階に向いていた。多分行くんだろう。

 私と千夏ちゃんは互いに顔を見合わせると、ノースの後を追った。


「待ってよ、ノース!」



 私達はゲーム制作部の部室にやって来た。

 そこにはたくさんのパソコンが置いてあって、ちょっと狭いけど人で賑わっていた。皆んな興味本位でやって来てのだろう。


「凄い人だね」

「うん。うちにはこんな部ないからね」


 私と千夏ちゃんはそう口にした。

 それにしてもここにいるのは男の人が多い。やっぱりゲームが好きなのだろうか?

 それにしても皆んな中心に集まってるのはなんでだろ?


「何で皆んな真ん中に集まってるのかな?」


 私はそう口にした。

 すると誰かが代わりに答えてくれる。


「アレがうちの部が制作した目玉ですからね」


 そう教えてくれたのは〈緑峰高校〉の制服を着た男子生徒だった。

 その口ぶりから部の人間なのだろう。


「あの……」

「あっすいません。俺はこの部の部員で、綿中(わたなか)って言います。この時間帯の店番ってところですかね」

「そうなんですか。それでアレが?」

「はい。うちの部。もとい、部長が企画制作を行ったシューティングゲームですね」

「シューティングだって。ノースの得意分野じゃん」


 千夏ちゃんはそう口にした。

 すると綿中さんは興味深そうに目を見開いた。


「そうなんですか。では挑戦を?」

「私達じゃなくて、この子です」


 と、私はノースの肩に手を置いた。

 しかしノースはピクリともせずに、パソコンのゲーム画面に没頭している。私もチラリと見ると、凄いたくさんの弾が画面の端から端まで飛んでいた。


「うわっ、凄いねアレ」

「弾幕ゲーか。確かに画質はいいな」

「ですよね。流石部長作です」


 綿中さんはそう答えた。

 すると先にゲームをしていた人だからに異変が起きた。ゲームパッドを投げ、机を叩きつけた。


「あちゃーまたですか」

「また?」

「ええ。あの人達、何度もプレイしてくれてはいるんですが一向に帰る様子がなくて。やっぱり難しすぎるんですよね」

「そうなんですか?確かに難しそうですよね。私には絶対できそうにないです」

「はい。初心者の方には厳しい出来でして、特にextraは……」

「無理なんですね」

「はい。でも、easyぐらいでしたらクリアできるかもしれないですね。ちなみにうちの部員は部長を含め、誰もクリアできてないです」

「デバッグは?」

「一応は、したつもりです」

「はぁー。クリアできないものを作るな」


 ノースは今の話を聞いて溜息を吐いた。

 頭を掻き、大きく長い溜息が漏れる。


「クソ、またかよ!」

「ああ無理。やっぱ無理だわ、コレ」


 そう言ってガッカリした様子で出て行ってしまった。

 こうして空いたパソコン。

 そこに座ったのはもちろんノースで、ゲームパッドを手に取った。その様子は迷いがない。


「やるのノース?」

「やるに決まっている。どれぐらいのクソゲー具合か確かめる価値はある」

「クソゲー認定なんだ」

「当たり前だ。ユーザーが誰一人としてクリアできないだけでなく、制作陣が投げ出すような代物がいい出来なわけがない」


 そう口にする。

 流石に言い過ぎな気はするけど、綿中さんも腕組みをして頷いていた。


(この人まで認めちゃ駄目でしょ……)


 私は心の中で思った。

 ノースは息を吐き、そしてゲーム画面に集中する。

 ここからノースの戦いが始まるのだった。


 


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