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■149 清流寺

モチーフはほとんどの人がわかると思います。

「うわぁ、高ーい!」


 私は真下を覗き込むと、立ち眩みがしてしまいそうな程高くてびっくりした。でもまあ立ち眩みなんか【雷歩】で常に高速に耐えてきた私にとっちゃ関係ないけどね。


「ホントだー。こりゃ落ちたら人たまりないかもねー」

「もうやめてよちなっち!」

「いやーごめんごめんって」


 私はたまらずちなっちを怒鳴った。と言うのも今のちなっちの発言でタイガーがこっちに来なくなったからだ。

 本人曰く高いところはそこまで苦手じゃないけど、流石に初見でこの高さは・・・と言うことらしい。でもそうだよね。私もちょっと怖いかも。


「子供だな」


 そんな私達のはしゃぐ様子をスノーはため息混じりにそう評した。対するKatanaも「まあまあ」とまるで保護者のような対応を取る。


 ここ清流寺(せいりゅうじ)は現実で言うところの清水寺がモデルになっているそうだ。懸造りとか言う構造で「清水の舞台」が有名だからきっと知ってる人も多いはず。

 私は現実で京都に行ったことがないからわかんないけど、スノーとKatana曰く、細部は若干違うが大まかな造りは本家と似ているらしい。とは言っても「音羽の滝」があるのかはわかんないけどね。


「はあー、いい加減にしろ。お前達、今日ここに来た目的はなんだか覚えているのか?」

「木乃さんって言う凄い刀鍛冶を探しに来たんだよね?」

「あくまでも噂の域を出ないが、私も少し調べてはみたものの数は少ないが確かに凄まじい技量の持ち主だとわかった。おそらく、現実でその手の心得があると見て間違いない。しかも購入者は皆市場で流れてきた掘り出し物を使っている。要するにだ」

「実際にあって直談判するんでしょー?それで打ってもらえたらマジでいいやつが手に入るってこと。わかってるって」

「いわゆるオリジナルってやつだろ。燃えてくるぜ!」

「燃えなくてもいいよ、タイガー。でもでもその意気込みはいいよね!」


 私は肯定した。そんなやり取りを流し目に見ながらノースは周りを確認する。


「そう言えばさー、その木乃ってどんな感じの人なん?」

「わからん」

「ん?」


 ちなっちがスノーに尋ねると、スノーの返答は曖昧と言うよりも逆にはっきりしていた。

 その理由を聞いてみると妥当なものだった。


「木乃のと言う奴がどんな風貌なのか等の情報はどこにもない。理由は至ってシンプルだ。これまで誰一人としてそいつに武器を作ってもらっていない」

「そっか。会ったことないんだったら、誰もその人の見た目とか知らないもんね」

「そう言うことだ」


 ってことは完全に情報がない状態で、ここから見つけ出すしかないってことになる。それに噂では清流寺にいるって話だけど、噂の信憑性は薄いし確証もないので、骨折り損になっちゃうかも。


「うーん、じゃあどうしよう?」

「一人一人聞いてみる的な?」

「効率が悪いだろ」

「じゃあどうするの?」

「それは……そうだな」


 スノーは必死に考えて頭を悩ませた。コミュ力的な面じゃ流石に武が悪いのかも。

 私達もせっかくここまで来たのにこのまま帰るのもなんかなー、って気持ちでいっぱいになりながら何か良いアイデアはないかと考える。そんな中ーー


「おいおいおーい!マジで景色いいじゃん、それに雰囲気もマッチしてんじゃん!」

「おういいな。じゃあ早速やるか!」

「おうおうギャラリーもわんさかいるしな。早速おっ始めようぜ!」


 何だか騒がしい声が聞こえてきた。

 見れば男の人達が三人、内二人ははしゃぎながら残る一人は傍観者みたいな感じだった。


「んじゃ早速。てやっ!」


 すると突然斬り掛かった。

 するともう一人も武器を取り出すと、それを受ける。何やってるんだろ。周りの迷惑だよ。内心そう思うが、周りの人達は止めるよりも避けるような動きをした。


「いやいいな、これ。こう言う風情のある場所で立ち合いしてんじゃ、構想も浮かぶな」

「だな。なあお前もやろうぜ!」

「俺はスケッチしとくわ。お前ら勝手に動け」


 止めないんだ。ってか、PvP設定してないじゃん。これじゃあ木刀って言っても周りに危害が及ぶかもしれない。

 注意しないと。でもはしゃぎきっててまるで子供のようだった。近づこうにも間合い的に当たっちゃう。如何しよう・・・とあわあわする私とは裏腹に、スノーは訝しげな表情、対してタイガーはビクビクしている。


「あれヤバくない?絶対気づいてないでしょー」

「だろうな」

「どうしよう?言った方がいいよね」

「やめておけ。あれだけ興奮状態に陥っている今、注意をすれば逆にこちらが敵視されかねない」

「じゃあどうするの?」


 私がそう尋ねると、Katanaがボソッと呟く。


「要するにこちらの存在が気づかれないように無力化すればよいのでしょう。私に任せていただけますか?」

「Katana?」

「ご心配には及びません。私には【忍び足】がありますから」


 確かにそうだ。

 そう言えばKatanaのそのスキルって上位互換があるんじゃなかったっけ?今のKatanaなら取れそうだけど如何なんだろ。ちょっとだけ気になったけど、それを書く前には既にKatanaは男達に気づかれぬよう接近していた。


「おりゃあ、そりゃあ!」

「なんの!」


 はしゃぎ倒す男達。

 勢い余って、木刀が床に擦れた瞬間、何をするのかと思いきやKatanaはピタッと背後に付いてそのまま首筋に勢いよく何かした。

 何したんだろ。よく見えなかった。


「手刀だな」

「えっ!?もしかして見えてた?」

「私には見えなかった。ちなっちとタイガーは見えたんだろ」

「まぁねー」

「見えちゃいるけどな、結構速いぜ?」

「私もブレブレだったけど。そっか、二人でもギリなんだ」

「「うん(まあな)」」


 ってことはよっぽど剣の腕に自信がないとKatanaの洗練された剣技を止めることは出来ないってことになるよね。

 あまりの凄さに忘れちゃってたけど、男の人達が全員倒れている。突然のことに何が起きたのか分からない観衆と「これでよいでしょう」とやりきって感を出すKatana。

 いつ見てもKatanaは凄いし頼りになる。

 「お疲れさま」と声をかけようとした時だ。戻って来るKatanaに誰かが話しかけていた。

 着物姿の細身の男性。ちょい背が高く、腰には刀が納められていた。


(誰だろう)


 私がそう思うのに対して、皆んな怪しい目を向ける。

 それもそうで、私も表情には出さないが疑いの眼差しで眺めていました。

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